ぶつ切りにして湯通ししたフグの身、ニンニクの葉、梅干しが基本的な具材。タケノコ、唐辛子などが使われることも多い
調味料の基本は酒、醤油、ミリン。砂糖を合わせることも多い。梅干しの酸味と塩味も味わいを決める要素だ
フグの身を酒で煮込んだ後、調味料を加え、その他の具材とともにほどよく煮付ける。最後に唐辛子がちらされることもある
南島原市に広がる『龍石(たついし)海岸』は、雲仙火山が活動を始めた約50万年前の地層が観察できる地質学的にも貴重な場所。この海岸に臨む場所に立つ食事処が『旬菜鮮たつみ』。目の前に広がる『龍石海岸の海(“たつ”いしかいがんのう“み”)』から『たつみ』という名前がつけられた。2017年12月のオープン以来、新鮮な魚介を食べられる食事処として、多くのファンを集めている。
迎えてくださるのは店主・原田直樹さん・純子さん夫妻と円口貴文さん。3人は同級生ということでチームワークばっちり。元気なおもてなしもお店の魅力だ。店内でまず驚くのが、窓を通して見える巨大な生簀だ。「私の父が仲卸しをしているので島原の魚介はもちろん、各地の新鮮な魚介を仕入れていますよ」と原田さん。さっきまで生簀で泳いでいた魚介をさばいて作る料理は、刺身をはじめ鮮度抜群。その時にしか出会えない魚介を使った料理も食べられる。
『がね炊き』はその日に入荷したフグを使用する。「今日のフグはコモンフグですね。その他、ヒガンフグ、トラフグ、ナシフグなどもいます。フグはだいたい1年中ずっと獲れますね。トラフグは少し値段が高くなりますが」
まな板の上にのせられたフグは包丁で頭を叩かれる。「頭を叩くとおとなしくなるんですよ(笑)。皮をはいで、内臓などをきれいに落とします。
骨つきのぶつ切りにした後、湯通しして氷水で締めます。臭みがとれてより食べやすくなりますし、身がプリプリになりますし、旨味を中にとじこめることができるのです」。
鍋にフグの身のぶつ切りを並べ、レンコン、梅干しを入れる。酒を加えて炊きながら、途中でアクをすくう。「酒で炊いていると泡が出るんですが、この泡がカニが泡をふくのに似ているので『がねだき』と言うんですよ。島原では、がねはカニのことですからね(笑)」。
ほどよく火が通ったところで、砂糖を加え、特製ニンニク醤油を加える。「地元の刺身醤油にニンニクを入れて半年ほど熟成させたものです。このニンニク醤油は『がねだき』だけに使うものですね。
アルミホイルで落し蓋を作って鍋に入れます。ふきこぼれないように調整することで身に照りが出ます。最後にみりんを少し加えて照りの仕上げをしてできあがりです。うちではフグの身とレンコンを具材にしていますが、ニンニクの芽を入れたり、唐辛子を入れることもありますね」。
できあがった『がねだき』は身の表面に味がしっかりとついていて、中はプリプリ。ニンニク醤油の香りと梅干しの酸味が食をすすめる。焼酎がすすむつまみだ。
「『がねだき』は身もうまいけど、骨にも味が入っているで、最後は骨をしゃぶるようにして食べていただくといいですね。行儀よくする必要はありません。かつては春先にはトラフグがいっぱい揚がっていて、元々『がねだき』は、漁師さんが簡単に作っていた料理ですからね。刺身でも食べられる新鮮なフグの身を煮ているのですから、高級な料理ともいえそうですね(笑)」。
『がねだき』とともに、刺身の盛り合わせを作っていただいた。中心に置かれているのはキジハタ。いつでもどこでも食べられる魚ではないが、食感も身の旨味も魚好きならたまらない味わいだ。最後に、みなさんが声をそろえてくれた。 「美味しい魚を食べたい方はぜひおいでください! 」。
フグの身のぶつ切り、レンコン、梅干し。フグの身は湯通しして氷水で締めることで旨味をとじこめ歯ごたえを高める
決め手は、地元の刺身醤油にニンニクを入れて半年ほど熟成させた特製ニンニク醤油。さらに砂糖とミリンで調整する
具材をまず酒で煮込む。砂糖とニンニク醤油を加えて落し蓋をして吹きこぼれないように煮込む。仕上げにミリンを加える
龍石(たついし)海岸に臨む食事処。店内からも見える巨大な生簀で泳いでいる魚をさばいた料理は鮮度抜群。その時にしか出会えない魚介の味わいは格別だ。『がねだき』はフグのぶつ切りを湯通しして氷水で締めることでプリプリ感を高める。味わいの決め手は、地元の刺身醤油にニンニクを入れて半年間熟成させた深みのあるニンニク醤油だ。