皮は小麦粉をこねて切り分け、1つずつ丸くのばしている店が多い。タネに入る具材はタマネギと豚肉が一番基本的なものだ
火力、水加減、仕上げの油を入れるタイミング他、店によって千差万別。共通しているのは、水を入れ蓋をして焼くということ
酢と醤油をベースにしたタレに、柚子こしょうが添えられるのが一般的。ラー油などを置いている店もある
一口餃子のルーツとも言われる宝雲亭。創業から60年以上たった今も3代目・山田隆博さんが先代からの味を守り続けている。「先代が満州にいたので、小ぶりで食べやすい形というのは、満州の流れをくんでいるのかもしれません。当時から形も味付けも完成していたようですね」。
ずっと変わらない餃子のタネは、牛肉3豚肉7という割合の合挽ミンチ、佐賀や淡路や高知などの甘いタマネギ、色付け程度のニラ。味付けは塩と秘密のスパイスだ。
「ニンニクは使いません。うちの餃子の皮には、ニンニクは合わないんですよ」。
あくまでも“皮”ありきの餃子なのだ。
「薄力粉中心の皮の具合いは気候によっても異なるので、扱うのはなかなか大変です。そして、この皮あっての、このタネという感じでしょうか。特に皮とタネを一体化させることがとても重要だと考えています。皮に関してはこれ以上秘密です(笑)」。
タネを包み、一つずつ手で閉じられた餃子は油をひいた鍋に並べられ、水がたっぷりとかけられる。蓋をして“焼き”というより“蒸し焼き”にすること数分、 “ジャーッ”という音がプチプチという音に変わっていくのは、焼き上がっていくサインだ。また、香りも焼き上がりセンサーだ。鍋に接していた餃子の面がいい色合いになったら、焼き色がついた面を下にして皿に盛られる。
福岡の老舗『ジョーキュウ醤油』の醤油を使ったタレに添えられるのは、山田さんのお母様が大分の柚子を使って手作りする柚子こしょう。皮とタネが一体化した餃子は、ほどよい塩味とタネの味わいの中、皮がとろけるよう。そのままでも十分美味しいのだが、まろやかなタレをつければ旨さアップ。そこにピリリとした柚子こしょうの味と爽やかな香りが加わると、一人で3人前くらいはたやすく食べられる。
「私は体格がいいもので、お客さんから「餃子の食べ過ぎやないと?」とよく言われます。もちろん、味見もあるし、毎日食べてますよ(笑)。毎日食べても飽きないですね。けれど、ごはんと合わせるには少し違和感があります。私は、やっぱり晩酌と一緒がいいですね(笑)。うちは餃子専門店。一人で来てくださる方も多いし、小さい頃から来てくださる方もいらっしゃいます。美味しい餃子を作って喜んでもらわんといかんですね」。
1コ9gの餃子の中には、初代から続く餃子への想いも包まれているのだ。
口の中でとろけるような皮は、薄力粉を主な材料としたもの。この皮の味わいを生かすため、タネは合挽ミンチ、タマネギ、ニラで作られる
鍋に並べられた餃子には水がたっぷりとかけられ蓋がされる。"焼き"というより"蒸し焼き"だ。ジャーッ"という音がプチプチという音に変われば完成
福岡の老舗『ジョーキュウ醤油』の醤油を使った特製のタレはまろやかな味わい。『餃子のタレ』1本350円(150ml)として店内でも販売中
焼きというより蒸し焼きのイメージでできあがった餃子の薄めの皮は、口の中でとろけてしまうほど。この皮の風味を最大限に生かすため、タネにはニンニクは入れず、タマネギ、合挽ミンチ、ニラだけでやわらかな味わいを作り出している。2011年より、糸島半島で育つ黒豚を使った黒豚餃子が新たにメニューに加わった。