九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

肉

あか牛の特徴は、赤身肉の美味しさ。『あか牛丼』には、それがより楽しめるモモ肉が使われることが多いようだ

タレ

ごはんだけにかけるタレ、肉にからめるタレと、各店が工夫を凝らしているが、肉の旨味を引き立てることを大事にしている

作り方

水菜などの野菜をのせたごはんの上に、特製タレをからめてレアな状態に焼き上げた肉を並べ、温泉玉子をのせる。ワサビなどを添えできあがり

語り やま康 後藤康之の「あか牛丼」

後藤康之(ごとうやすゆき)さん

根子岳(ねこだけ)をはじめとする雄大な阿蘇の景色を眺めながら、あか牛料理を食べられる南阿蘇の“あか牛料理専門店”。店主・後藤康之さんは、毎日お店の閉店後、熊本市などまで肉を仕入れに行っているとのこと。「新鮮な肉を、少しでも安く提供したいという想いで通っています。あか牛を使ったメニューには2014年くらいから取組んでいて、初めは焼肉からスタートしました。その頃はまだあか牛は今ほど広くは知られていなかったのですが、私も食べて美味しいと思い、まず地元の方に美味しいと言っていただけるものをご提供したいと思ったのです。その後、赤身肉が広く話題にもなりましたし、熊本県もあか牛に力を入れ始め、広く知られるようになりましたね」。

あか牛を使ったメニューは『気まぐれあか牛丼』と『あか牛サーロインステーキ』と『あか牛ロース鉄板焼き』の3種のみ。メニューを絞っているのも“美味しいあか牛を少しでも安く提供したい”という想いからだ。
さて、『気まぐれあか牛丼』の“気まぐれ”にはどんな意味が込められているのだろう。「丼には、イチボ、ランプ、テンマルなどこだわりの部位を使っています。一頭のあか牛から少ししか取れない希少な部位でもありますし、入る量も仕入れの状況によって異なりますので、どの部位をどのくらい使用するかはその日によって違うのです。それで『気まぐれあか牛丼』と呼んでいます」。イチボ、ランプ、テンマルはいずれも牛のおしり周辺のやわらかい肉だ。

『気まぐれあか牛丼』は肉100g、ごはん230gに温泉玉子が1つのったレギュラーサイズと、肉とごはんの量が各1.5倍で温泉玉子が2つのった『気まぐれメガあか牛丼』の2種がある。「量が多いメガのほうがお得ですし、インスタ映えもしますね。若いお客さんはみんなメガです(笑)。あか牛の肉は脂が少なくヘルシーでやわらかい肉です。胃にもたれなくて食べやすいので、女性でもメガをするっと食べてしまう方が多いですね」。休日だと2時間待ち、GWのピークだと4時間待ちになることもあるという『気まぐれあか牛丼』。もちろん下ごしらえは行なっているが、すべて注文が入ってから後藤さんが調理する。「できたてのあたたかい料理を食べていただきたいですから。肉は半頭買いしてかたまりを手切りでさばいておきます。この仕込みをしておけば数分で作ることはできますが、一度にたくさんは作れないのでお待ちいただくこともあります」。

料理の手順は、まず熱したフライパンにイチボなどの肉をいれ、オリーブオイルを塗る。「オリーブオイルを使うのはさっぱりした仕上げにするためですね」。

フライパンに肉をのせる
オリーブオイルを塗り、塩コショウする

塩コショウをして酒を回し入れると大きな炎があがる。「炎によって肉のしまりがよくなるんですよ。表面は焼けていますが中はレアな状態ですね」。

表面を焼く
酒を回し入れて炎の中で焼く

丼にごはんを盛り、ごはんに特製タレをかける。ごはんの上に大葉をのせ、切った肉をのせ、オリジナルの辛味噌を添える。温泉玉子をのせて特製タレを肉に回しかけてできあがりだ。

肉を食べやすい大きさにスライスする
ごはんに特製タレをかけ、大葉をのせる。米は地元産のものだ
切った肉をのせていく
温泉玉子をのせる

「タレは醤油ベースであか牛の脂も使った特製です。タレにニンニクを使うとパンチの効いた味わいになってそれも美味しいのですが、うちは昼食の店。だからニンニクは使っていません。辛味噌は4種類の味噌を使ったピリ辛味ですよ」。

特製辛味噌をのせ、特製タレをかけてできあがり

温泉玉子が2つのった『気まぐれメガあか牛丼』はかなりのボリュームだ。「まず肉だけ。次に肉に辛味噌をつけて。次に温泉玉子をくずしてかき回して。3回楽しめますよ!」。脂の少ない赤身肉なのに口の中でとろけるようにやわらかい。同時に濃厚な肉の味わいが口の中に広がる。温泉玉子の半熟具合もいい。「肉の味を楽しんでいただけるとうれしいですね。タレの味付けもそのことを考えて作りあげたものです」。

もう一つの人気メニュー『あか牛サーロインステーキ』も作っていただいた。「ブロック肉をスライスしますが、脂身の部分は取り除いています。お店としてはもうかりませんが(笑)、やはり脂身が苦手という方も多いですから。美味しいものを食べていただきたいのです」。表面が軽く焼かれた肉は鉄板の上にのせて提供されるので、自分で好みの焼き加減にして食べられる。特製ソースを合わせると、『あか牛丼』とは違うあか牛の味わいを感じることができる。数量限定のためオープン後2時間くらいで品切れになることが多いそうだ。閉店時間は15時だが、肉が売切れたら終了のため15時前の閉店がほとんど。行列ができていることも多いが、それでも訪れるお客さんの7割はリピーターとのこと。あか牛には待ってでも食べたくなる魅力があるのだ。

「阿蘇の大自然の中で放牧されていて、日差しをたっぷり浴びるあか牛はストレスがかかりません。また一般的な和牛よりも若いうちに出荷するのでサシもそれほど入りません。私はA4のあか牛しか使いませんが、同じA4でも黒毛とあか牛ではサシの入り方は違っていて、あか牛には余分な脂が入っていません。地元を盛り上げていきたいという想いもありますし、ぜひ食べに来てください! その土地で食べるのが一番ですから!」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

肉

『あか牛丼』に使う肉は、毎日仕入れるイチボ(写真)、ランプ、テンマル。仕入れによって3種の肉の分量が変わる

タレ

ごはんと肉にかける、あか牛の脂も利用した醤油ベースの特製タレ(左)と4種の味噌をブレンドしたピリ辛の辛味噌(右)

作り方

肉の表面を焼き、酒をふりかけて炎をあげる。ごはんに特製タレをかけて大葉をのせ、切った肉、温泉玉子をのせ、辛味噌、特製タレを合わせる

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やま康(やまやす) 希少部位を食べられるあか牛料理専門店

根子岳をはじめ雄大な阿蘇の景色を望むあか牛料理専門店。『気まぐれあか牛丼』にはイチボ、ランプ、テンマルなど希少部位のやわらかな肉を使用。その日の仕入れによって3種の肉の割合が変わるため“気まぐれ”というわけだ。まずは特製タレがかかった肉をそのまま、次に自家製辛味噌をつけて、さらに添えられる温泉玉子をくずしてと、一杯で3つの味わいが楽しめる。

『気まぐれメガあか牛丼』1900円。肉の量もごはんの量もレギュラーサイズ(1500円)の1.5倍。自家製漬物は食べ放題だ。
あか牛サーロインステーキ180g2700円。ごはん、味噌汁、野菜サラダ付き。米も野菜も地元産だ
窓の外に広がる阿蘇の風景もごちそう
お店は高森町で、国道265号線沿い。春は店頭のしだれ桜が美しい姿を見せる

やま康(やまやす)

住所 阿蘇郡高森町高森3191
電話 0967-62-0888
営業 11:00〜15:00
※あか牛の在庫がなくなったら終了
休み 水曜(冬季に長期休業あり)
50席
カード
駐車場 あり
URL http://www.hanakougen.jp
※記載した内容は2019年3月25日現在のものです。
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