一口で言えば豚足だが、足先、かかとの部分など、部位によっても味わいの違いがある。また、豚の銘柄によっても味わいは異なる
汚れやアクを取り、上品な味わいにするために、下ゆでは必須。下ゆでした後、さらに水洗いをしてきれいにする
煮汁は、昆布出汁、塩、醤油などで作られるシンプルなものが多い。コトコトとじっくり煮込むことでやわらかくなる
沖縄県北部の街・名護市にある山間の大自然の中で山原豚(琉美豚)、やんばるあぐー、やんばる島豚あぐーなどの豚を育てているのが『我那覇(がなは)畜産』。麦を主体に泡盛粕、糖蜜、天然ミネラルやカルシウムが豊富な与那国島の化石サンゴ、海藻など飼料にも気を配って大切に育てた豚は、肉も脂身も甘くなるとのこと。名護に1店舗、那覇市内に3店舗、それぞれタイプの違う直営店を持つ。その1軒が『豚ホルモン 我那覇焼肉店』だ。
メニューには、バラやロースといった一般的な肉の部位だけではなく、豚のホルモンもズラリと並ぶ。ノドブエ(声帯)、ブレンズ(脳)、おっぱい(乳房)など、あまり目にすることがない珍しいものも多い。中には、刺身として食べられるものもある。新鮮であればこそ食べられるものだ。
「豚は沖縄の食文化のシンボルですね。沖縄では、『豚は鳴き声以外は捨てるところがない』などとよく言われます。うちは豚肉を飼育している農場の直営店ですから、まさに豚のほとんどすべての部分を食べられます。お店に通っていただければ、本当に豚一頭を食べることもできますね(笑)」。
農場から届く豚のカットや、調理をしているのは料理長・福地良明さん。そんな中、『テビチ(豚足)』は時間をかけてじっくりと作られる料理だ。
「下処理されて届いた『テビチ』は、下ゆでしてアクを取った後、きれいに洗います。
そして、お店が比較的空いている時に5〜6時間コトコトと煮込んでいきます。味付けはシンプルで、出汁と塩だけですね。
じっくり、ゆっくり煮ないと形が崩れてしまうんですよ。
うちでは3種類の豚を使っていますが、『テビチ』は、『やんばる島豚あぐー』のものです。これは琉球在来種のアグー、デュロック、バークシャの3種類をかけあわせて生まれた品種です。肉も脂も旨い豚ですが、『テビチ』もプリプリっとした食感でジューシーな味わいが美味しいんですよ。他の豚の『テビチ』と比べて、見た目に違いはありませんが、脂ののりも違うし、食べればすぐに違いがわかります」。
そのまま食べても、塩味でさっぱり食べられるが、ポン酢をつけると、よりさっぱりと食べられる。プリプリとトロトロのハーモニーが口の中に広がる。
「『テビチ』を食べられる方は、女性のほうが多いみたいです。なんといってもコラーゲンたっぷりですからね(笑)」。
『テビチ』と言えば、普通は煮込んだテビチ料理を指すが、こちらには焼肉店ならではの食べ方もある。
「下処理されて生で届くテビチを、薄くスライスして、塩こしょうをして焼いて食べるのも美味しいんですよ。すぐ焼けますが、きゅきゅっと縮んでしまわないように、切る時に放射状に包丁を入れておくことが必要ですね。甘ダレや味噌ダレをつけて食べていただいても美味しいですよ」。
『肉屋』=『にくや』=『298』ということで、ほとんどのメニューは一皿298円。お得な食べ放題コースもあるので、日々、若い世代でにぎわっているのかと思ったが…。
「お客様の年齢層は幅広いですね。おじぃおばぁもよく来てくださって、たくさん食べてくださいますよ。沖縄のおじぃおばぁが元気なのは、やはり豚の力かもしれませんね(笑)」。
母体である『我那覇畜産』が飼料にも気を配って育てた『やんばる島豚あぐー』のテビチを使用。プリプリした食感とジューシーさを持つ
ネギやショウガなどの香味野菜と一緒に下ゆでする。その際に出るアクを取り除いた後、一つずつきれいに洗う
味付けはシンプルに出汁と塩だけ。形がくずれないように5〜6時間かけてじっくりと煮込んでいく
沖縄県の北部にある名護市で山原豚(琉美豚)、やんばる島豚あぐーなどを育てている『我那覇畜産』の直営店。新鮮な素材を使っているので、肉だけではなく豚のホルモンや、刺身まで食べられる。『テビチ』は、ゆっくりと時間をかけて煮たものの他、スライスして焼いて食べるものもある。ほとんどのメニューが一皿298円で、量にも値段にも大満足!