うなぎはさばいて下ごしらえをする。塩をしてねかせるなど、下ごしらえのやり方は各店独自の方法で行なっている
熱湯に通しすぎても、通す時間が短か過ぎても美味しい湯引きはできあがらない。各店がもっとも気を使う部分だ。湯の温度も異なる
ポン酢か酢味噌でいただくのが一般的。大分特産のカボスを使ったポン酢も多く使われている。柚子こしょうが添えられることも多い
『千屋』のメインとなるうなぎメニューは『ひつまぶし』ならぬ『日田まぶし』。細切りにした蒲焼きをごはんと混ぜていただき、最後はスープ茶づけで〆るという一品だ。
メニューに大きく書かれているのは『日田まぶし』だが、その中に『湯引き』『骨せんべい』『肝さし』…といったものが書かれた一群が。
「酒の肴です。蒲焼きだけじゃ、お酒飲む人の肴がないけんですね。湯引きも酒の肴に最高やけんですね(笑)」と、店長・井上敏彦さん。早速、湯引きの作り方をうかがった。
「関東風に背中からさばいて開きます。蒲焼きの時はヌメリは取らなくてもいいのですが、湯引きの場合は、熱湯をかけて浮き上がったヌメリを取り除きます。こそぎとるという感覚ですね。それから斜めに切って、塩もみして10分ほどねかせておきます。塩の加減も大切ですね」。
下準備の後は、スピードが大事とのこと。
「余分な塩をおとして、沸騰している湯に入れて煮立て、身が白くなったら冷水で冷やします。素早く作って急いで冷やしてすぐに食べるのがいいですね。お湯に入れすぎると身がちぎれてしまうこともあるし、湯の通りが悪いとエグミがあって食べられないし…。塩加減も湯引きの加減もちょうどいいくらいにするというのが難しいとこですね。ちょうどいいのが美味しいですから(笑)」。
できあがった『うなぎの湯引き』は、タマネギ、大葉などをつけあわせにして、自家製の酢味噌でいただく。やや肉厚の身はプリプリとした歯ごたえでうなぎの旨味が凝縮しているようだ。
「地元の方は湯引きの味をよくご存知ですね。酒の肴にして楽しんでいらっしゃいますよ。まだ味を知らない方にも、焼酎を飲みながら味わっていただきたいですね。湯引き食べてのんびり、骨せんべい食べてゆっくりみたいな感じで(笑)」。
お話をうかがっている間、ずっとにこやかな井上さん。仕事は忙しいが、充実した日々を送っていらっしゃるとのこと。
「いろんな方に食べていただいて、料理の仕事は楽しいしおもしろいですね。湯引きも短い時間でぎゅっと集中して作れるのでおもしろい料理です。注文がもっと増えたら、もっと楽しくなるでしょうね(笑)」。
脂ののったうなぎを関東風に背中からさばき、ヌメリをしっかりと取り除く。やや厚めに切った後、塩をふって塩もみし、10分ほどねかせておく
余分な塩を落とした後、沸騰している湯に入れて煮立て、身が白くなってきたら冷水で冷やす。素早く作って、素早く冷やすスピードが大事とのこと
湯引きは、タマネギ、大葉などをつけあわせにして、自家製の酢味噌でいただく。プリプリとした食感の身には、甘酸っぱい酢味噌がよく合う
名物はひつまぶしならぬ『日田まぶし』。細切りの蒲焼きをごはんに混ぜて食べ、最後はスープ茶漬けのようにしていただく。プリプリした肉厚の身を酢みそと合わせる『うなぎの湯引き』の他、肝さし、かぶと焼き、骨せんべいといったうなぎを使った酒の肴も充実しているので、ゆっくり飲んだ後に『日田まぶし』で〆たい。