九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

唐揚げの下準備

ウロコと内臓を取った頭付きの身に、塩コショウで味付けするのが基本。ポン酢がそえられる場合も多い

唐揚げの揚げ方

頭から油に入れたり、羽根から入れたりと、揚げ方は様々。いずれも、できあがった時にきれいな形にするための各店の工夫だ

自慢の一品

もっとも定番の唐揚げの他、唐揚げとは違うトビウオの美味しさを伝えるため、様々な料理も作られている

語り ご飯や 屋久どん 池田秀作の「トビウオ料理」

池田秀作さん

店内には屋久杉で作られたテーブルや、虎・七福神などをかたどった立派な置物。中央の大きなテーブルは樹齢1500年の屋久杉で作られたものだそうだ。
「先代の趣味なんです(笑)」とは2代目・池田秀作さん。創業は1982年、2002年に海のすぐ横で、窓からは種子島も見えるこの場所に移転したとのこと。
「昔はここから見える海が、トビウオの群れで白くなっていたという話も聞いていますよ。今でも屋久島では一年中、いろんな種類のトビウオが揚がるんです。

体長30cmくらいのチュウトビ

春から秋にかけてはチュウトビという体長30cmくらいのトビウオですが、その後はオオトビで大きいものは体長50cmくらいにもなります。それ以外にも、コトビなんかもいますね。さらに地域で呼び名が違ったりして、ドッビュ、トービ、カクトビ、ガタンコ…呼び名の種類が多くて、全部は覚えきれないですね(笑)。漁師さんも言っていますが、時期によって美味しいトビウオの種類がありますね」。

さらに、トビウオの特徴についておもしろい話も教えてくださった。
「トビウオはくさりにくいと言われています。それは内臓が少ないからなんだそうです。飛ぶために軽量化しているようですね。美味しい身はしっかりついていますが(笑)。尾ビレの下の方が長いのは、時折そこを水につけたりして、舵の役目をしているようですよ」。

そんなトビウオで、いろいろな料理が作られている。
「唐揚げ、刺身、塩焼きなどが一般的な食べ方ですね。うちでは一夜干し、ムニエル、ヅケ丼なんかも作っていますよ。トビウオは、あっさりした味でクセがない魚ですから、いろいろな美味しい食べ方がありますね。ただ、小骨が多いので煮付けにはむかないし、塩焼きにすると食べるのが少しだけ面倒かもしれませんね」。

ウロコと内臓を取ったトビウオに丹念に塩コショウをふりかける

厨房で唐揚げの調理風景を見せていただいた。しめてウロコと内臓をとったトビウオに切れ目を入れ、塩コショウをする。表面にふりかけるだけではなく、ヒレの裏側や、内臓を取ったあとの腹の中や、羽根(胸ビレ)にもきれいに塩コショウをする。

片栗粉をまぶし、片方の羽根を少しひねっておく

全体に片栗粉をまぶして揚げるのだが、揚げる前に片方の羽根を少しひねっておく。
「姿揚げするわけですが、こうしておくと、揚げた時にきれいに羽根が開くんですよ」。

頭から油に入れると羽根が開いていく

頭から油に入れると、ひねった羽根が開いた。
「皿に飛んでいるように見えるよう盛りつけします。豪快に見えるようにですね。だから、羽根がちぎれたらお客さんに出せないので注意が必要です(笑)」。

170〜180度の油で5分ほど揚げる

カリッとした表面の中にある身も旨いが、羽根や頭もパリパリとしていて美味しい。
「姿揚げは羽根までついていて、見た目にインパクトがありますよね(笑)。背骨も食べられますし、頭も食べられますし、羽根もスナック感覚で食べられます。丸ごと全部残さず食べられるんです。ただ、チュウトビの唐揚げは全部食べられるんですが、型の大きいオオトビは硬くなるので、丸ごと食べるのは少し難しいかもしれないですね。塩コショウだけで味付けしていて、そのままでもいけますが、ダイダイで作った特製ポン酢をつけても美味しいですよ」。

その他の料理についてもお話をうかがった。

刺身は三枚におろして作られる

「刺身もプリプリで美味しいです。刺身の時は三枚におろすのですが、骨がやわらかいので、ゆっくり慎重にやらなければなりませんね。刺身を作った後に残った骨や頭はまかないに使ったり、出汁をとったりします。あと、開いた身を塩水につけて干す一夜干しや、それをバターと塩で焼いたムニエルもいいですね。身をヅケにしたものをごはんにのせるヅケ丼も美味しいですよ。うどんにトビウオのつけあげを入れると、いい出汁も出ますね」。
うどんとヅケがセットになったメニューはこちらならではのものだ。

さて、トビウオは地元の方もよく食べているのだろうか?
「地元の方も普通によく食べていると思います。ただ、地元の方はトビウオをよくもらったりするから、少し飽きていて感動が少ないかもしれません(笑)。僕はいただくことがあったら、『新鮮なうちに食べよう!!』と思うんですけどね(笑)」。
店主がトビウオ好きなら、トビウオ料理も美味くないはずはない…。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

唐揚げの下準備

内臓をとったトビウオに切れ目を入れ、羽根の裏側などにまでしっかり塩コショウをする。ダイダイで作った特製ポン酢も添えられる

唐揚げの揚げ方

片栗粉をまぶして揚げる前に片方の羽根を少しひねり、頭から油に入れる。そうすることにより、揚がった時にきれいに羽根が開く

自慢の一品

『屋久島風うどん+トビウオヅケ丼』。うどんにはトビウオのつけあげが入っている。最後はヅケ丼にスープを入れていただく

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ご飯や 屋久どん 屋久杉に囲まれ、海を見ながら食事を

八角形のおもしろい造りの店内には、樹齢千年を超える屋久杉で作られたテーブルや置物が多数。窓からは海と種子島が見えるという絶好のロケーションの中、屋久島の新鮮な魚や素材を使った料理を食べられる。トビウオ料理には、唐揚げや刺身をはじめ、ヅケ丼やムニエルなどこちらならではのメニューも。内装も味わいも、屋久島の雰囲気満点の店だ。

皿の中で飛んでいるように見える『トビウオの姿揚げ』750円(定食は1200円)。
写真は1人前900円の『トビウオの刺身』。新鮮なものが入らない時は食べられない
屋久島風うどんとトビウオヅケ丼がセットになった『Dセット』1050円。〆はスープをヅケ丼にかけていただく
一夜干しをバターでソテーした『トビウオムニエル』750円。
屋久杉をふんだんに使った店内。貴重な屋久杉にふれられるのもこちらの魅力だ

ご飯や 屋久どん

住所 熊毛郡屋久島町安房500-46
電話 0997-46-3210
営業 11:00〜15:00/18:00〜21:00
休み 不定
50席
カード 不可
駐車場 あり
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