うなぎはさばいて下ごしらえをする。塩をしてねかせるなど、下ごしらえのやり方は各店独自の方法で行なっている
熱湯に通しすぎても、通す時間が短か過ぎても美味しい湯引きはできあがらない。各店がもっとも気を使う部分だ。湯の温度も異なる
ポン酢か酢味噌でいただくのが一般的。大分特産のカボスを使ったポン酢も多く使われている。柚子こしょうが添えられることも多い
扉を開けると、正面には横長の窓。窓の向こう側でうなぎを焼いているのは二代目店主の長友隆之さんだ。
「お客さんの顔をよく見なさい」ということが父の教えだったんです。平成20年に改装した時もこの窓は残しました」。長友さんは、この窓からお客さんの“美味しい”という顔を見るのが最高の喜びなのだそう。注文が入ってから活きうなぎをさばき、炭火で丹念に焼くかば焼き。ほとんどのお客さんが食べるかば焼き関連のメニューが並ぶ中、片隅に『うなぎの湯引き』の文字も。一度にたくさん注文されることはないそうだが、これもお客さんの喜ぶ顔を見たいためだ。
「酒に合う湯引の味は、好きな方は好きなんですよ。来るたびに必ず食べてくださる方もいらっしゃますから」。
『うなぎの湯引き(単品の場合)』も、蒲焼きと同じように注文が入ってから作り始める。うなぎは、全体の色が青っぽいものを取り寄せているのだそう。
「炭火で直焼きする時は、全体が黒っぽいものよりも青っぽいものの方が向いているようです。身がやわらかいですからね」。
まず目打ち(頭を固定)し、切り出しナイフのようなうなぎ包丁でさばき、下処理する。
「味をつけるというわけではないんですが、美味しくするための下準備があります。ここは秘密ですが(笑)」。
適当な大きさに切った後、塩を加えた熱湯の中へ。さらに火を強めて軽く煮立てる。身の部分が白くなり、くるっと巻いたような形になったらザルにあげて氷水で冷やす。
皿の上に盛られ、お母様作の酢味噌をふりかけて完成。すりおろしたショウガを醤油に漬け込んで作るショウガ醤油も添えられる。プリプリとした身、コリコリとした皮、身と皮の間にあるうなぎ独特の食感。酢味噌、しょうが醤油と交互にいただくと、焼酎もすすみそうだ。
「父が作ってくれた『うなぎの湯引き』を子どもの頃、一番初めに食べた時のことはよく覚えてますよ。その時は、あんまりいい印象がなかったですね(笑)。けれど、年齢を重ねて“美味しい”と思うようになりました。なんとも言えない食感と味で、焼酎によく合いますから。まだこの味を知らない方にも食べていただきたくて、会席料理などには、『うなぎの湯引き』も少しおつけしていますね」。
定番の蒲焼きに加えて、昔から知る人ぞ知る味わいだった湯引き、さらにはフライ、天ぷらなどの他ではあまり見ないうなぎ料理を提供している長友さん。さらに、店の空間づくりも料理の盛りつけも、『昔ながらのうなぎ屋さん』のイメージとは違う、洗練されたもの。すべては、うなぎ料理の魅力をより多くのやり方で、より多くの人へ伝えようとしているからだ。
身がやわらかい、色味が全体的に青っぽいうなぎを使っている。単品の場合は注文が入ってからさばく。さばいた後、より美味しくするための下処理も行なう
うなぎを切った後、塩を加えた熱湯の中へ入れ、火を強めて軽く煮立てる。身の部分が白くなり、くるっと巻いたような形になったらザルにあげて氷水で冷やす
皿に盛られた湯引きの上には、自家製酢味噌がかけられる。すりおろしたショウガを醤油に漬け込んで作る、自家製のショウガ醤油も添えられる
大分川のほとりに開店して20年。その後に改装したおしゃれな空間でも、二代目・長友隆之さんが先代から引き継ぐ味を楽しめる。蒲焼きは注文が入ってからさばき、秘伝のタレをかけながら炭火でじっくりと焼き上げる一品。『うなぎの湯引き』は自家製酢味噌としょうが醤油でいただく。様々なうなぎ料理を味わえる会席などもある。
住所 | 大分市大石町5-1-1 |
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電話 | 097-549-5765 |
営業 | 11:00〜15:00/16:30〜21:00 |
休み | 月曜(4〜9月の祝日は営業) |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://o-irifune.jp/ |