九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

ゆで方

白根の部分を先にゆで、葉の部分はさっとゆでる。葉の中は空洞なので、その中にある空気を抜くことも必要

巻き方

白根から数cmのところを折り、白根を軸にして葉の部分をくるくるとまきつける。『ひともじのぐるぐる』という名前の由来だ

作り方

味噌をベースに酢、砂糖、塩、ミリン、カラシなどを合わせて作る。味わいの違いは使う味噌の種類によっても異なるようだ

語り 郷土料理 青柳 倉橋恭加の「ひともじのぐるぐる」

倉橋恭加さん

創業1950年。歴史ある郷土料理から、売出中の熊本県産黒毛和牛『和王(わおう)』まで、熊本の味を守り、作り続けている。

2007年、熊本城築城400年を迎えた記念事業として本丸御殿が復元したが、この本丸御殿で食べられる『本丸御膳』を提供しているのも『郷土料理 青柳』だ。
「『本丸御膳』は、江戸時代から伝わる料理指南書『料理方秘』などを基に、熊本の食文化を伝えるお料理です。このお料理を作り、先人たちの知恵にふれることによって、素材を大切にして活かすという日本料理の素晴らしさを改めて感じている次第です。日本料理の基礎、原点がわかりますね」。
と、若女将・倉橋恭加さん。

『ひともじのぐるぐる』も古くから伝わる熊本の味。自らの体験も含め、食に対しての先人たちの想いを感じるのだそう。
「昔は薬も豊富にあったわけではないし、旬の食材をきちんと使い、食べ物から栄養をとり、食べ物で病気を防ぎ、食べ物で病気を治すという考え方だったはずです。私も食べ物で病気を治したり防いだりする暮らしをしていました。母から、風邪をひいたらショウガの入った料理を食べさせられたり、『夏になった時に夏バテしないようにぐるぐるを食べときなさい』と言われてましたから(笑)。ひともじも身体にいい食材ですが、生で刻んでもたくさん食べられるものではありません。けれど、『ひともじのぐるぐる』だと食べられます。普通のネギが苦手だという人でも4〜5株くらいは食べられますからね。食感もよくなるし酢味噌で独特の香りも押さえられているし。たくさん食べられように工夫した先人たちの知恵を感じる料理でもありますね」。

また、食に関しての言葉の美しさにも感嘆していることも教えていただいた。
「例えば『秋山』というお料理があります。これは、豆腐ときのこを寄せたものです。言葉がしゃれていますよね」。

さて、『ひともじのぐるぐる』の起源は何なのだろうか?
「ネギが『ひともじのぐるぐる』のように巻かれた形をしているキムチがあるようです。ひょっとしたら、加藤清正公の朝鮮出兵の折に伝わってきたものが姿を変えて『ひともじのぐるぐる』になったのかもしれません。熊本には朝鮮半島から伝わってきた文化もありますしね。はっきりしたことはわからないのですが、いろいろ調べていくとおもしろいですね(笑)」。

白根の部分をゆでた後、葉の部分をゆでる

厨房におじゃまして作り方を見せていただいた。
根を落とした『ひともじ』を塩を入れた湯で、まず白根の部分を20秒くらいゆでてから、葉の方をさっとゆでる。

まず、白根部分でわっかを作るようにする

冷やした後、白根の部分を折り曲げ、手で丹念に巻いていく。巻き終わった後、手の中できゅっと握って葉の中の空気を抜くと、『プチッ』という音がする。初めに葉の先端を切っておいて空気を逃がす方法もあるそうなのだが、『プチッ』という音が『できあがり』のサインのようでおもしろい。

ぐるぐると巻いていく

盛りつけられた上にかけられる自家製酢味噌は、麦味噌、塩、酢、カラシ、砂糖などを合わせたもの。甘めの味付けが『ひともじ』の食感と独特の辛みにもよく合う。

巻き終わったらぎゅっとにぎって葉の中の水分を取り除く

ネギと比べて白根の部分がぷっくりとしている『ひともじ』。暖かくなると『ひともじ』よりもさらに根元がぷっくりとした野蒜(のびる)でもぐるぐるが作られる。
「野蒜は少しニラっぽくて、味が濃くて、また違った味わいになります。少し苦みがある春の山菜などと一緒にいただくと美味しいですよ」。

きれいに巻き上がった『ひともじのぐるぐる』

『ひともじのぐるぐる』は、県外から訪れる方が必ず食べる熊本の郷土料理。そして、地元の方がよく食べる一品でもある。
「地元の方は、『あてにぐるぐると蓮根もってきて〜』とよく言われますよ(笑)。地元の方にも県外の方にも、食を通して、熊本の素晴らしい文化を伝えていきたいですね」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

ゆで方

根を落とした『ひともじ』を塩を入れた湯で、まず白根の方を20秒くらいゆでてから、葉の方をさっとゆでて冷水で冷やす

巻き方

根元の部分を折り曲げ、手で丹念に巻く。巻き終わった後、手の中できゅっと握って葉の中の空気を抜く

酢味噌

麦味噌、塩、酢、カラシ、砂糖などを合わせた自家製酢味噌。甘めの味付けが『ひともじ』の食感と独特の辛みによく合う

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郷土料理 青柳 “熊本”の歴史と文化をいただく和食店

1950年の創業以来、旬の野菜や魚料理、『ひともじのぐるぐる』『馬刺』といった伝統的な郷土料理から、ブランド牛『和王』などの新しい料理まで、“熊本の味“を伝えている。地下1階から4階までの様々なタイプの部屋でその味を楽しみたい。2007年より、熊本城本丸御殿で食べられる『本丸御膳』も提供。古き良き熊本の食文化を感じることができる。

『ひともじのぐるぐる』一人前525円
『ひともじのぐるぐる』『馬刺』『からし蓮根』や天草の魚介などを食べられる『郷土会席』5250円
お昼の『肥後竹籠ランチ』2100円でも、『ひともじのぐるぐる』『馬刺』『からし蓮根』が食べられる
和王のしゃぶしゃぶ『和王鍋』を中心とした『和王コース』6300円。小鍋1500円もある
カウンターはイチョウの木の一枚ものだ
2階は染色工芸家・高津明美さんの作品を幾つも飾った和モダンなデザイン。毎週水曜には舞妓の舞香さんが訪れ、店を華やかにする

郷土料理 青柳

住所 熊本市下通1-2-10
電話 096-353-0311
営業 平日 11:30〜14:00
17:00〜OS21:30
土日祝 11:30〜OS21:30
300席
休み なし
カード
駐車場 なし
URL http://aoyagi.ne.jp
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