採れたてのものを皮つきのまま下茹でする。普通のたけのこと違いアクが少ないので、茹でる時間も短くすることが多い
下ゆでしたたけのこを皮付きのまま切って焼く。表面が香ばしくなり、『合馬のたけのこ』の甘味をより感じることができる
各店は、「『合馬のたけのこ』をそのまま味わっていただきたい」と、甘味や旨味を引き出す工夫を凝らした料理を提供している
県道から細い道へ入り、小さな案内板に従ってさらに細い道へ。やがて現われるのが、築100年の民家を改装した『夢一輪』だ。
「少しわかりにくかったでしょう?」。
店主・後藤泰子さんが笑顔で出迎えてくださった。
「山の中でお店をやってますので、こだわったお料理をお出ししていますよ!」。
『夢一輪』は完全予約制、後藤さんは四季折々の料理で訪れる人をもてなされている。そして、毎年、春だけに登場するのが『合馬のたけのこ』を使った料理だ。
「主人の転勤の関係で、日本各地でいろんなものを食べました。たけのこは、四国も美味しかったし、沖縄も美味しかったですね。けれど、『合馬のたけのこ』は本当に美味しいです。初めて食べた時、『こんなに美味しいたけのこがあるのだろうか?』と思いましたからね。焼物、煮物、炒め物、揚げ物、様々な料理ができますが、素材がいいのであまり味付けする必要がありません。たけのこの味そのものを楽しんでいただきたいですね」。
『たけのこコース』は刺身、焼きたけのこ、ゆでたけのこ、ヒジキとたけのこの和え物、ツクシとたけのこの酢の物、たけのこ入り煮しめ、たけのこまんじゅう、たけのこごはんなどたけのこ三昧のメニューだ。
「どの料理も、たけのこをお湯で20分ほど下茹でして、ちょっぴりかたい下の部分を切ってから料理しますが、味付けは本当に薄味です。『茹でたけのこ』は茹でただけのそのままですし、刺身は茹でたものを薄く切っただけ、『焼きたけのこ』も、茹でて醤油を軽く塗って焼いただけですね。『焼きたけのこ』だけで、たけのこ1本使いますから、全体ではけっこうな量になりますね」。
それぞれの料理から、『合馬のたけのこ』の甘味が感じられる。
下茹でしたたけのこを粗く刻み、豆腐などと一緒に混ぜて揚げる『たけのこまんじゅう』は、ふわふわの食感の中にたけのこのシャキシャキ感が際立つ。後藤さんオリジナルのたけのこ料理だ。
「たけのこグラタンや、たけのこを厚めに切ってバターでソテーして、梅酒を使った特製ソースをかける、たけのこステーキといった洋風料理もありますよ!」。
後藤さんが『合馬のたけのこ』の中でも、さらに希少な『白子(しらこ)』を見せてくださった。
「白子はとても貴重なものです。すごく高いんですよ(笑)。白子は特に土のいいところで採れるたけのこです。普通のたけのこよりも白っぽくて、皮についている産毛のような毛もとてもやわらかいんです。また、普通のたけのこは根元に赤いイボのようなものがありますが、白子はイボも白色です。
この白子を使ったしゃぶしゃぶが美味しいのですよ!」。
白子は大胆に皮をむかれるので、実際に食べるのは半分くらいの量になる。しゃぶしゃぶは、薄くスライスするだけだ。
「この白子は掘りたてだしエグミも少ないので、生でも食べられるんです。梨のような香りがしますよ」。
切ったものを口の中に入れると梨のような香りと甘味が広がった。
「この香りは白子じゃないとしないんですよ。白子のしゃぶしゃぶはアゴ出汁に軽く通してから、特製のタレで召し上がってくださいね」。
白子の甘味と旨味が、甘酸っぱいタレでさらに引き出されるようだ。
「タレには香りも味も深い合馬産のレモンを使っています。レモンの他にも、合馬で採れるユズや春菊や大根も美味しいんですよ。もちろんお米も。合馬は空気も山からの水も美味しいんです。それでたけのこも美味しくなるのだと思いますよ。美しい自然が、たけのこをはじめ、合馬の野菜を育てているのです。うちで使っている食材も9割以上が合馬産のものですよ」。
しっかりとした味わいを持つ、『合馬のたけのこ』を使った皿が並ぶコース料理はボリュームも満点だが、さらに後藤さんから声がかかる。
「たけのこごはんのおかわりいかがですか? たくさんありますよ(笑)」。
春にしか食べられない『合馬のたけのこ』で満腹になるという、ぜいたくな時間を過ごさせてくれるお店だ。
その日に採れたたけのこを仕入れて、20分ほど下茹でして、根元近くの少しかたい部分は取り除く
下茹でしたたけのこを皮のついたまま焼く。軽く醤油を塗って焼くことで、醤油の香ばしさがたけのこの旨味を引き立てる
『合馬のたけのこ』の中でも希少な『白子』のしゃぶしゃぶ。アゴ出汁にくぐらせ、合馬産レモン他を使った特製タレで食べる
築100年の民家を改装した落ち着きのある料理店。合馬産の四季折々の旬の素材を使った料理が食べられる。『合馬のたけのこ』を使った料理は毎年春だけの限定メニュー。下茹でした後、刺身、茹で、焼き、煮物など最低限の味付けでたけのこの味わいを引出している。『合馬のたけのこ』の中でも希少な『白子』のしゃぶしゃぶも美味。