九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

材料

アジ、シイラなど日向灘近海で獲れる魚のすり身と、豆腐が主な材料。ゴボウなどが加えられることもある

味付け

酒、醤油の他に、味噌、黒砂糖で味付けされる。現在は、黒砂糖の代わりに、より精製した、きび砂糖や白砂糖も使われる

揚げ方

形を整えて油で揚げ、表面がきつね色になったらできあがり。木の葉型が基本だが、ちぎり天にしたりすることもある

語り 手づくり天ぷらのこだま屋 小玉悦子の「飫肥の天ぷら」

小玉悦子さん

創業は昭和50年。城下町・飫肥に伝わる伝統的な天ぷらを守り続けているのが、『手づくり天ぷらのこだま屋』だ。店主・小玉悦子さんは飫肥のご出身。東京にいらっしゃった時もあったが、飫肥に戻ってこられてお店を始められたとのこと。
「故郷・飫肥に帰ってきて、『何をしようかな』と考えていた時に、親戚から『飫肥に昔からある天ぷらを作ってみては?』と言われたんです。『飫肥の天ぷら』は、江戸時代に生まれたもののようですが、私が帰って来た頃は作っている家もあるというくらいで、売っているお店はありませんでした。私も食べたことはなかったんですよ。そこで、街のおばあちゃんたちから習ったりしながら、2年くらい研究したんです。魚の白身をすり鉢ですりつぶすところから教わりましたね」。

そうやって製造・販売が始まったのが、『手づくりおびの天ぷら』と『手づくりおびの天ぷらゴボウ入り』だ。
「作っているのは2種類だけです。どちらも1枚110円ね。材料は、シイラのすり身、木綿豆腐、卵です。味付けは、国産さとうきび100%で作ったきび砂糖、お酒、醤油、味噌です。味噌を入れると、まろやかな味になるんですよ。昔は、甘いということがごちそうだったし、日南は特に甘い味付けなんですよね。醤油も甘いしね。うちで使っているのは薄口醤油だし、薄味で上品な味付けにしていますが、やっぱり他の地域の方だと、甘いと思われるかもしれませんね。まあ、食べてみて!」。

ふわりとした食感の中に甘味が広がり、口の中でとろけるよう。いわゆる練り物の天ぷらとはまったく違う味わいだ。ゴボウ入りは、ふわふわの中にシャキッとした歯応えと、ゴボウの風味が広がる。このふわふわ感の秘密はどこにあるのだろうか?
「魚のすり身と豆腐の量が半々くらいなので、フワフワになるんですよ。そのタネを味付けして、丸めて揚げるのですが、タネはとてもやわらかいんです。

両手で1つずつ木の葉型に丸めたタネを揚げていく

だから、たくさん丸めておいて一度に揚げることはできなくて、丸めては揚げるを繰り返すんですよ。タネをヘラにとって手で丸めて油に入れてね。完全な手作業ですね」。

ふっくらとした木の葉型のような形も手づくりならではだ。
「これは私が両手で丸めた形なんです。だから、大体は同じくらいにはなるけど、形も大きさも微妙に違いますね。1コの重さも決めてないし、計りも使っていません。私の手のサイズです(笑)。慣れない人は、手にタネがくっつくし、きれいな形にできないんですよ。私は手に水をつけながら、素早く丸めて油の中に入れていきます。機械を使ってみた事もあるけど、手のほうが早いので、今は手づくりです」。

『手づくりおびの天ぷら』。食べ歩きしやすいように串に刺さっている

さて、こちらの天ぷらは、観光で訪れた方が食べ歩きしやすいように串に刺さっているが、地元ではどのような食べ方をされているのだろうか?
「地元の方もたくさん買いに来てくださいますが、地元の方は、おやつにも、ごはんのおかずにもしていますね。煮しめに入れたり、切り干し大根と一緒に炊いたりね。わさび醤油をつけると、焼酎のつまみにもいいですね。お豆腐も入っていてヘルシーだし、甘いし、お年寄りからお子様まで美味しく食べていただけます」。

毎朝6時頃から準備を始め、8時頃から天ぷらを揚げ始めるという小玉さん。年中無休で元旦も営業されているのだそうだ。
「飫肥は、いつも静かでのんびりしているところがいいですね」。

そして、小玉さんは天ぷらのタネだけも販売されている。
「みなさん、好きな材料を混ぜて揚げたり、一口大にして揚げたりされています。500g600円で販売していますが、計ってないから、少し多めに入っているんじゃないかしら?(笑)」。

小玉さんの、そんなおおらかさから、ふわふわでやさしい味わいの天ぷらが生まれるに違いない。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

材料

シイラのすり身、木綿豆腐、卵。シイラのすり身と木綿豆腐の割合は半々、できあがりがふっくらとする理由だ

味付け

国産さとうきび100%で作ったきび砂糖、酒、薄口醤油、味噌で味付けをする。味噌を入れることで、まろやかな味わいになる

揚げ方

揚げるタネがとてもやわらかいので、1つずつ手で丸めては揚げることを繰り返す。表面がいい色合いになったらできあがり

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手づくり天ぷらのこだま屋 一つ一つが手づくりの無添加天ぷら

昭和50年創業。飫肥の家庭に伝わっていた天ぷらの味を守り続けている。油で揚げるのは、シイラのすり身と豆腐を混ぜたものに、きび砂糖、味噌、醤油などで味付けしたもの。ふっくらとした木の葉型は、店主・小玉さんが両手でやさしく丸めた形だ。ふわりとした食感の中に甘味が広がる。シャキシャキとした歯応えのゴボウが入ったものも美味しい。

木の葉型の『手づくりおびの天ぷら』1枚110円。ゴボウ入りも1枚110円
樹齢200年以上の松の木を使った梁のある店内。飾られている小物はお客さんが持ってきてくれたものだそうだ
お店は国道222号線沿いにある

手づくり天ぷらのこだま屋

住所 日南市飫肥6-7-1
電話 0987-25-1222
営業 8:00位〜18:00位
定休日 なし
3席
カード 不可
駐車場 なし
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