生きた『とびんにゃ』や砂抜き済みの『とびんにゃ』を購入することもできるが、店主自ら獲り、時間をかけて砂抜きする店も多い
塩ゆでが基本だが、海水でゆでることが多い。ゆですぎると身がかたくなるため、ゆで加減が重要だ
奄美大島では味噌汁に入れたり、味噌漬けにすることも多い。工夫を凝らした料理を提供している店もある
『今日ぬほこらしや いつもよりも勝り いつも今日のごとに あらちたぼれ』(今日の喜びはいつもよりもすばらしい。いつも今日のようでありますように)。
店名の由来でもあり、箸袋に書かれている奄美のシマ唄(民謡)『朝花節(あさばなぶし)』の一節だ。
奄美ご出身の前島克朗さんが地元でお店を開いたのは1982年。瀬戸内町(奄美大島南端の町)の古仁屋港から直送される新鮮な魚介を使った料理をはじめ、奄美ならではの食材を使った料理を楽しめる。
一人でもお願いできる『奄美満喫コース』は、8〜9皿で16種類ほどの島の料理が楽しめ、県外客にも喜ばれている。このコースの初めに付きだしとして出されるのが『モズク酢』、『豚味噌』、『とびんにゃ』だ。
「『とびんにゃ』はしっかり砂抜きをしないとジャリジャリ感が残ってしまいます。お店に砂抜きまでお願いしているので、注文して届くまで1週間くらいかかりますね。砂抜きの後は塩水でゆでるだけです。ゆですぎると身がかたくなってしまいますからほどよくゆでないといけませんね。
殻から出した身とワタを食べますが、焼酎によく合いますよ。食べ始めるとついついクセになってずっと食べ続けてしまうみたいです(笑)。1皿に7コほど入れている単品メニューでもお出ししていますが、みなさん1人ですぐに食べてしまわれます。私も一番好きな貝ですね」。
濃厚だが食べ飽きしない『とびんにゃ』の味わい。島の方に愛され続けている理由がわかる気がする。
「小さい頃は海に行って、砂を吐かせてゆでて食べてましたよ。おやつかな(笑)。その他のおやつは、野いちごやタコかな(笑)。潮が引く大潮の時によく獲れました。砂地に『とびんにゃ』のとがった部分が見えているんです。必ずツガイでいて、そのまわりにも家族なのかはわからないですがいっぱいいるんですよ。冬の終わりから春先がよく獲れる時期ですね。夏は深いところにいるので獲りにくいんですよ」。
いつもメニューにあるわけではないそうだが、『とびんにゃの味噌漬け』も出していただいた。
「味噌に砂糖を加えて炒め、そこにゆでて身を取り出した『とびんにゃ』を合わせます。これも焼酎のつまみにぴったりですよ。元々は、冷蔵庫のない時代に食べられていた保存食です。『とびんにゃ』以外の貝も昔は味噌漬けにして食べていましたね。」
いつでも食べられる『とびんにゃ』を使ったメニューがある。『海鮮茶碗蒸し』だ。
「ふたを開けると磯の香りとともに『とびんにゃ』が見えます。アオサや奄美の魚もいれた人気メニューなんですよ。私はオーソドックスな島料理だけではなく、奄美の食材を使って一工夫した料理をつくっています。例えば、奄美では、しぶり(冬瓜)を鶏肉との煮込み料理で食べることが多いのですが、煮て味付けしたものをベーコンで巻いて揚げる『しぶりの唐揚げ』をつくっています。こちらも人気ですよ!」
大阪などで仕事をされたのち、地元に帰ってきた前島さん。開店以来、奄美に対する想いは変わらない。
「島の地産地消はもちろんですが、島の様々な素材のおいしさを伝えること、食を通じて島の魅力を伝えるのが私の使命だと思っています。毎日、愛情こめて料理してますよ!(笑)」
ジャリジャリ感が残らないように、しっかりと砂抜きをした『とびんにゃ』を取り寄せている
海水からつくられる島の塩を使った塩水でゆでる。ゆですぎると身がかたくなるので、ほどよくゆでなければならない
『とびんにゃ』と奄美の海鮮を使った茶碗蒸しが食べられる。『とびんにゃ』の身を、炒めた味噌と合わせた味噌和えが食べられる時もある
瀬戸内町(奄美大島南端の町)の古仁屋港から直送される新鮮な魚介を使った料理をはじめ、奄美ならではの食材を使った料理を楽しめる。『とびんにゃ』の塩ゆでといったオーソドックスな島料理だけではなく、『とびんにゃ』や地元の魚介が入った『海鮮茶碗蒸し』など、奄美の食材を使い一工夫された料理も美味。島の味わいを一通り楽しめる『奄美満喫コース』は一人前からでもOK。
住所 | 鹿児島県奄美市名瀬入舟町13-6 |
---|---|
電話 | 0997-52-1158 |
営業 | 17:30〜24:00 |
休み | 日曜(祝日の時は営業で翌日休み) |
席 | 120席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://www.hokorashiya-amami.com/ |