九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

肉と下ごしらえ

各店が吟味した黒豚の肉を使っている。とんかつに適しているのはロース肉とヒレ肉だ。肉をやわらかくする工夫がされることも

揚げ方

小麦粉・卵・パン粉・油の選び方と揚げ方は、料理人の腕の見せ所。油から取り出した後、余熱で仕上げるのもポイントだ

ソース

肉の旨味を引き出すために甘味と酸味のバランスを考えたソースは、各店のオリジナル。塩だけで食べることを勧める店もある

語り 黒福多 田中烈の「黒豚とんかつ」

田中烈さん

『黒福多』。縁起のいい文字で“黒豚”を表した店名のこちらは、2013年に25周年を迎えた。開店当初から“黒豚一筋”。とんかつや、しゃぶしゃぶを初めとした『かごしま黒豚』を使った料理を求め、県内外から多くの方が訪れている。

「お客様が『今までで一番美味しいとんかつでした』などと言ってくださると、とても嬉しくなりますね。鹿児島に観光に来られた方がとんかつを食べるのは、ほとんどの場合1回だけ。その味イコール“鹿児島のとんかつの味”になってしまいます。『黒福多』が鹿児島代表の役割を担うこともあるわけです。『黒豚とんかつ』は鹿児島の文化でもありますし、責任重大だと肝に銘じております。毎回毎回が1回きりの勝負ということで、うちの職人たちも、いつも全力を尽くしております」。

厨房で職人さんたちの手際の良い仕事を見ながら、店長・田中烈さんからお話をいただいた。

「『かごしま黒豚』です。いい肉を仕入れていますから、後は、どうやってきちんと料理するかということですね。下ごしらえは筋を少し切る程度で、肉には何の味付けもしません。

小麦粉をまぶし溶き卵に入れる

形をきれいに整えるためと、仕事がしやすいように、肉に串を刺しておきますね。

肉に刺した串をもって溶き卵をつけ、パン粉をまぶす

小麦粉をまぶし、溶き卵に通してパン粉をつけます。パン粉は粗めの生パン粉。

肉にパン粉をしっかりと付ける

揚げた時に、はがれ落ちないように、肉に付けたらぎゅうぎゅうと締めつけるようにして、しっかりと付けておかないといけません。180度に熱した菜種油がベースの植物油に入れて、5分ほど揚げます。揚げる時間が数秒違うだけで状態が変わってしまいますので、一番いい状態で油から引き上げないといけません。揚げ方はとんかつの命です。泡の出方や音なども目安になりますが、最後は勘になりますから、一瞬の集中力が必要となりますね。カリカリに揚がったパン粉の一粒一粒が立っているのがいい状態です」。

揚げた後、すばやく切る
断面には肉汁があふれる

絶妙のタイミングで油から取り出されたとんかつは、しばらく置いて油を切った後、サクッという音とともに数cm幅に切られる。
「断面から肉汁が滲んでいるでしょう?これが残るように揚げるのがポイントなんです。揚げ過ぎると肉汁は出ませんし、かたくなってしまいます」。

特製のソースをつけて食べれば、ソースの甘味や酸味の中に、衣のサクサク感や肉の旨味が広がる。
「ご要望があれば塩もお出ししていますが、ぜひオリジナルのソースで召し上がっていただきたいですね。酸味と甘味があり、フルーティーなソースなのでジューシーな『黒豚とんかつ』とよく合うと思います」。

オリジナルの『クロカツ』は黒いパン粉を使ったとんかつで、より香ばしい衣に包まれている。
「黒いパン粉の作り方は秘密です(笑)。初めから黒いので、揚がり具合を色では判断できないし、揚げた時の音もまったく違うんです。ですから、職人も苦労しまして、うまく揚げられるようになるまでに3年もかかったんですよ。そして、やっと4年前からメニューに載せることができました」。

『黒豚とんかつ』は、鹿児島にある黒豚という素晴らしい素材、それに料理人の技が重なってこその料理なのだ。
「小麦粉の付けかた、卵の付けかた、パン粉の付けかたと、職人の技術があってこそ、美味しいとんかつができあがります。使っている素材もレシピも同じだとしても、職人によって味が変わることのないように、常に同じ味になるように努力させていただいています。また、東京にも支店があるのですが、鹿児島でも東京でも同じ味を提供できるように頑張っています。ただ、黒豚の産地である鹿児島で食べると、より美味しく感じるという気分的な部分はあるのかもしれませんね(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

肉と下ごしらえ

『かごしま黒豚』を使い、下ごしらえは少し筋を切る程度。形をきれいに整えるためと仕事がしやすいように肉に串を刺しておく

揚げ方

小麦粉をまぶし、溶き卵に通し、粗めのパン粉をしっかりと付ける。180度に熱した、菜種油がベースの植物油に入れて5分ほど揚げる

ソース

酸味や甘味が『黒豚とんかつ』のジューシーさや旨味によく合うフルーティーなオリジナルソース。塩だけで味わうのも旨い

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黒福多 オリジナルの黒豚料理も食べられる店

とんかつや、しゃぶしゃぶはもちろん、かごしま黒豚を使った様々な料理が食べられる。フルーティーなソースで味わう定番のとんかつに加えて、黒いパン粉を使って、より香ばしく仕上げた、オリジナルの『黒カツ』もある。西郷隆盛も食べていたと言われる味をアレンジした『極上黒豚味噌すき焼き』(1人前2,500円)も食べてみたい一品。

『黒豚ロースカツ定食』1,570円。単品は1,500円
『黒カツヒレ』1,700円。一番いい状態は、中央が、ほんのりピンク色に揚がっているものだそう
写真はカウンター席。座敷では宴会も可能
鹿児島一の繁華街・天文館近くにある

黒福多

住所 鹿児島市千日町3-2 かまつきビル1階
電話 099-224-8729
営業 11:30〜OS14:30/17:30〜OS22:00
定休日 月曜(祝日の場合は翌日の火曜休み)
36席
カード
駐車場 なし
URL http://kurobuta.fc2web.com/
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