スープのベースとなる材料は鶏ガラ、豚骨が基本的。スープはその日に作ったものはその日のうちに使う。サッパリした味の所以だ
肉、魚介類、野菜類、中国野菜など、各店がバランスを考え工夫を凝らす。ゆで卵を揚げる『揚げ卵』は太平燕には欠かせない一品
初めに肉類や魚介類、次に野菜類を炒める。大きな火力で短時間に炒めるて作るのが美味しさの秘訣のようだ
「味付けは塩のみ。その他に入れる調味料は黒胡椒とゴマ油だけです。スープの状態や野菜の味というものは日々同じということはありません。調味料をたくさん使えば比較的簡単に調節することもできるのですが、うちの太平燕はいたってシンプルなもの。シンプルだからごまかしができません。だから作るのがとても難しいですね」。
創業昭和9年。長く続く紅蘭亭の太平燕の味を守る木庭智雄さんにお話をうかがった。
太平燕の具材はエビ、イカ、豚バラ、キャベツ、キクラゲ、タマネギ、青ネギ、乾燥金針菜、タケノコ、揚げ卵、そして春雨。乾燥金針菜は、鉄分やビタミンが豊富な百合科の植物のつぼみでシャキシャキの歯応えが特徴だ。ゆで卵を高温で揚げた揚げ卵は、表面に虎のような縞模様がつくことから虎皮蛋(フーピータン)とも呼ばれている。
春雨は独特の歯応えを持つ長さ20cmほどの中国の緑豆春雨。料理に使う前に水で戻した状態に準備しておくとのこと。
「乾燥したままスープに入れると、スープが染み込みすぎて春雨の味が濃くなってしまうのです。ある程度水で戻しておくことで、いい感じでスープを吸ってくれて、味もよくなります」。
毎日作るスープは鶏ガラと豚骨から作り上げる。太平燕の基本の味は鶏ガラ、豚骨はスープにコクを与えるために使うのだそう。
塩は2000年前から作り方の変わらない、露天干しの福建天然塩。ミネラル分が多く、甘味も持つやわらかい味わいの塩だ。
厨房で待機する木庭さん。太平燕のオーダーが入ると、一杯を作る3分間に集中する。
中華鍋の鍋肌に油をまわし、まず肉と魚介類を炒める。臭みを取るための酒を入れ、その他の食材を炒め、スープを入れ、塩を入れて一度沸騰させる。柄の付いたザルに春雨を入れて鍋につけて煮込み、春雨がスープをある程度吸ったら、ザルを鍋から外して春雨の汁気を切って丼へ。ゴマ油と黒胡椒を入れて具材を形よくのせてスープも器の中へ。揚げ卵をのせて完成だ。
「塩で味付けするというのではなくて、スープと野菜の旨味で味を作り、最後に塩をいれて整えるという感じですね。塩に頼ると単なる塩味のスープになってしまうんです。だから、きちんとスープを作り、具材を短時間で素早く炒めることも重要になってきます」。
緑豆春雨はのびにくいので、食べるのは作るのほど急がずにゆっくりといただく。各々の食材の旨味が、クセのないスープの中でよくわかる。具材の歯応えも旨さの秘密、特に金針菜のシャキシャキ感は格別だ。
「太平燕は、中国の太平燕とは異なる、熊本独自の味わいになりました。日本で生まれた中国料理と言えるのでしょうね」。
その味を多い時で1日に300杯も作ることもあるのだそうだ。それは地元の方に愛されていればこそ。
「熊本の人は給食にも出るし、太平燕を小さい頃から食べています。その味が身体にすりこまれているから、たまに食べたくなるのもしれませんね(笑)。」
鶏ガラと豚骨をペースにしたスープは毎日作る。太平燕の基本は鶏ガラから引き出されるあっさりしたスープで、豚骨はスープにコクを与えるために使う
エビ、イカ、豚バラ、キャベツ、キクラゲ、タマネギ、青ネギ、乾燥金針菜、タケノコ、揚げ卵、春雨。乾燥金針菜は食感を楽しめる上、栄養価も高い
肉と魚介類を炒めた後、その他を一気に炒める。鍋にスープを入れた後の味付けは塩、ゴマ油、黒胡椒のみ。春雨はスープの旨味を吸収させた後、先に取り出す
1934年創業、福建料理をベースにした味をいただける老舗中華料理店。『太平燕』は、鶏ガラと豚骨をベースにしたスープに10種類の具材が入る。塩、ゴマ油、黒胡椒だけで味付けしたシンプルな味わいで、具材の風味が引き立つ。気軽に楽しめるレストランスペースと合わせて、個室でゆっくりできるスペースもある。
住所 | 熊本市安政町5-26-2階 |
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電話 | 096-352-7177 |
営業 | 11:30(日祝日11:00)~L.O.21:00 |
休み | なし |
席 | 130席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://www.kourantei.com/ |