皮は小麦粉をこねて切り分け、1つずつ丸くのばしている店が多い。タネに入る具材はタマネギと豚肉が一番基本的なものだ
火力、水加減、仕上げの油を入れるタイミング他、店によって千差万別。共通しているのは、水を入れ蓋をして焼くということ
酢と醤油をベースにしたタレに、柚子こしょうが添えられるのが一般的。ラー油などを置いている店もある
「料理は科学だと思うんですよ」というのは1963年に博多駅前の屋台としてスタートした『鉄なべ』の二代目・林由起雄さん。語ってくれる美味しさの理由は、とても明確だ。
「豚ミンチは鹿児島の茶美豚(ちゃーみーとん)か長崎の大西海のどちらかを使います。赤身が多いこと、くせがないこと、脂がとけやすいことがポイントですね。市販のものより荒目です。野菜はキャベツ、タマネギ、ニラ、ネギ、ニンニクなど。基本的に九州産で、旬を逃したものは使いません」。
野菜はそれぞれ違った下処理がなされる。タマネギは荒みじん切りに、ニラやネギは小口切りに。キャベツはみじん切りにして脱水し、サラサラの状態にする。
「そうすることによって、キャベツが他の食材の旨味を吸い込み、単なるキャベツの味じゃなくなるんです」。すべての具材を混ぜ合わせた後、醤油、塩、砂糖などを入れて一日ねかせる。キャベツの青臭さは完全になくなるのだそう。
「小麦粉を荒練りした後、手でこねあげます。太いひものようにして、ネギを切るようにトントンと同じ重さに切っていきますが、これができるようになるのに3年はかかります。そして、1こずつ麺棒で薄く丸くのばして、タネをのせて閉じます。皮がごく薄いので閉じる時に水は必要ありません。皮をのばす人と包む人の2人組でやっています」。
鉄鍋を長持ちさせるため、皮には塩を入れないのだそう。
「鉄鍋を煙が出るまで焼き、油をひいて餃子を並べて水を入れます。水を餃子にかかるように入れて、餃子の表面の粉をおとすことで、天然の羽根つき餃子となるんです」。
蓋をして水気がなくなるまで水分をとばしたら、蓋を開けて仕上げのゴマ油をぬり、餃子をひっくり返す。そして、鉄鍋のままテーブルに運ばれる。
「味だけではなく、音や香りをお客様に伝えるため、昭和30〜40年代の喫茶店のメニューにあった『(スパゲティ)ナポリタン』」をヒントにして、先代が鉄鍋で出すことを始めました」。
さて、ゴマ油をぬるために蓋を開けるタイミングは、どこでわかるのだろう?
「最初はジャー、次にパチパチパチパチ、そしてツツツという音になったらできあがりです。水分を適当に逃がす木の蓋も大事なものですね」。
「タレは酢、醤油にプラスアルファのものを入れて作ります。薬味として置いているのは『赤こしょう』。ゴマ油と一味唐辛子と辛味噌を混ぜて作ります。餃子に合いますよ」。
これが変わらない鉄なべの餃子の作り方、味の秘密。黒い鉄鍋のままジュウッという音とともに運ばれてくる餃子はアツアツ。カリッと香ばしい皮の中にあるタネはしっとりジューシーだ。
この数年内でも、福岡市で餃子を出す店はかなり増えた。老舗の味を守る林さんはどう考えているのだろうか?
「横のつながりがもっとできるといいですね。お互いに切磋琢磨して…。博多の餃子が、ラーメンやもつ鍋に並ぶ、もっとメジャーな博多のご当地グルメになれるといいですね。ポテンシャルは高いと思うし、宇都宮や浜松には負けませんよ(笑)」。
材料はすべて国内産。基本的には九州産の材料を使用している。豚肉や脱水してサラサラにしたキャベツなどが入るタネを、1枚ずつ手でのばす皮で包む
注文毎に鉄鍋で焼き上げる。自然の羽根ができるように、鍋に並べた餃子に水を回しかけることと、仕上げのゴマ油を入れるタイミングがポイント
特製タレは、酢と醤油をベースにプラスアルファの材料も。薬味として置いているのは。ゴマ油、一味唐辛子、辛味噌を混ぜて作る『赤こしょう』だ
1963年に屋台として創業。黒い鉄鍋で焼かれた餃子が、鍋ごと運ばれてくるのはその時からのスタイルだ。皮についている粉が溶け出して自然にできた“羽根”にも食欲がそそられる。外はカリカリ、中はしっとりジューシーな餃子を、特製タレと、自家製の薬味『赤こしょう』でいただく。皮もタネも材料はすべて国産だ。
住所 | 福岡市博多区中洲4-5-9 |
---|---|
電話 | 092-262-0488 |
営業 | 17:00~24:00 |
休み | 日祝日 |
席 | 60席 |
カード | 不可 |
駐車場 | なし |
URL | http://www.tetsunabe.jp/ |