材料はトビウオをメインにした地元産の魚のすり身。絶妙な配合で麺の状態にし、やわらかな食感になる
カツオ出汁とイリコ出汁をベースに醤油などを加えた特製のツユ。澄んだ黄金色で旨味の深いツユだ
麺をゆで、湯切りをして丼へ。とろろ昆布と天かすをのせて特製のツユを注ぎ、ネギをちらしてできあがり
『魚料理 びびんや』は日本有数のカツオやマグロの水揚高を誇る油津港(あぶらつこう)の目の前にある。「“びび”とは日南の方言で、魚のことなんですよ。子どもたちは“びびしゃん”と呼んだりもします。店の入口に生け簀を置いているので、それを見た子どもたちの「びびがおる!」という元気な声もよく聞こえてきますね」。店主・間瀬田尚己(ませだなおき)さんは、油津の美味しい魚を多くの方に知ってもらいたい、食べてもらいたいという願いを込めて『びびんや』と名付けた。『マグロのステーキ』、『かつおめし』などが人気メニューだ。
『魚うどん』は1998年のオープン当初から提供していたメニューの一つ。初めはそれほど注目される料理ではなかったそうだ。「初めはそんなにたくさん注文されるメニューではなかったので、すべて自分たちで手作りしていました。徐々に知られるようになりましたが、2015年に、あるテレビ番組で『身体にいい食べ物』と紹介された時は大変なことになりましたね。日南のすべての魚うどんがなくなってしまいました(笑)。今は落ち着いていますが、全国からたくさん食べに来てくださいます。冷凍したものは持ち帰りできますが、発送はしていないので、定期的に大量に買いに来られる方もいらっしゃいますよ」。
『魚うどん』作りを見せていただいた。「材料はトビウオをメインにした地元産の魚のすり身ですね。麺状にするために切れるとだめですし、切れないようにしても食感がかたくなってはだめですから作るのはなかなか難しいんですよ」。
麺をゆでてふっくらとさせ、丼に移し、とろろ昆布と天かすをのせる。
カツオ出汁とイリコ出汁をベースにした特製ツユを注ぎ、ネギをちらせばできあがりだ。
やや褐色の麺には魚の旨味がたっぷり。食べ進めていくうちにツユの旨味が増していくようだ。
「麺にも味があるし、麺から出汁が出ますからね。『魚うどん』は『美味しい!』というよりも、『しみじみ旨い』という感じかもしれませんね。時間が経ってものびないのも特徴です。パスタ風にしたり、チャンポン風にしたり、鍋料理に入れても美味しいですね」。
低カロリーで高タンパク、DHAも豊富なことから“健康食”として一躍有名になった『魚うどん』。しかし、その発祥は“健康のため”というものではなかった。
「『魚うどん』は米や小麦粉がない(戦中・戦後の)食糧難の時に生まれた料理です。豊富にある魚を主食のようにして食べようとしたんですね。それが結果的にはヘルシーな料理だったということです。カロリーは低いし、高タンパクだし、主食として食べれば身体にいいものだと思います。『魚うどん』を食べて調子がよくなったと言ってくださる方も多いですよ」。
間瀬田さんもまかないなどで『魚うどん』をたくさん食べられているのだろうか?
「今は魚が昔ほど獲れなくなって、魚が高級品になりつつあります。『魚うどん』はほぼ魚ですからもはや高級品と言えるかも知れません。だから、自分たちはあまり食べられないですね(笑)」。しかし、お客様に提供する『魚うどん』の値段は一杯648円。間瀬田さんは地元の味を多くの方に気軽に楽しんでいただき、その美味しさを伝えようとしているのだ。
材料はトビウオをメインにした地元産の魚のすり身。絶妙な配合で麺の状態にし、やわらかな食感になる
カツオ出汁とイリコ出汁をベースに醤油などを加えた特製のツユ。澄んだ黄金色で旨味の深いツユだ
麺をゆで、湯切りをして丼へ。とろろ昆布と天かすをのせて特製のツユを注ぎ、ネギをちらしてできあがり
店名の“びび”とは“魚”を意味する方言。カツオやマグロなど目の前の油津港に揚がる新鮮な魚を中心に、九州各地の新鮮な魚介を食べられる店だ。『魚うどん』は、トビウオをメインに地元で獲れる魚のすり身だけを使った麺に、カツオ出汁とイリコ出汁をベースにしたツユを注いでできあがり。元がすり身とは思えない喉越しのいい食感、麺自体の味わいを楽しめる。