米どころ・白石町の米がベース。もちもちした食感を出すため1割ほどもち米も加える。炊きたてに寿司酢を加え酢飯をつくる
奈良漬け、錦糸卵、むつごろうの甘露煮、紅しょうが、椎茸、ゴボウ、カマボコなどが基本的な具材。作り手によって違う具材も入る
錦糸卵を一番上から丸い形にしてのせるところは共通しているが、細かい盛りつけ方は作り手によって微妙に異なるようだ
棚には年季が入った大きさの異なる『もろぶた』が置かれている。
「洗って外に干しても反らないような組み方で、木でかしめた(固く止める)ような作りになってます。大きさが大・中・小とあって、大は一升、中は7合、小は5合のお米を使います」と藤松紅木(ふじまつこうき)さん。
まずは酢飯作りから。
「使うお米は白石のお米。それにもち米を1割ほど入れてちょっとかために炊き上げます。いい味になるように昆布も一緒に炊きますね。炊きたてのごはんに寿司酢を入れて、『混ぜしゃもじ』で混ぜていきます。寿司酢は、酢、塩、砂糖などで作り、半日ほどねかせたものです。
自家製の“混ぜしゃもじ”は、元々はもっと角張っていたが、8年くらい使って丸くなった部分もあるのだそう。
「このほうが力が入りやすくて使いやすいですね」。
寿司酢の甘い香りが漂う中、もろぶたにごはんを敷き詰めていく。寿司酢を表面にまいて卓球のラケットのような自家製“切りしゃもじ”で表面をなぞると、ツヤが出てくる。ごはんをきれいに敷き詰めたら、木製の特製ものさしを目安にして、再び “切りしゃもじ”を使い等分する。そして、具材を順番にのせていく。
ここまででも彩りは随分ときれいなのだが、「まだきれいになるよ〜」と藤松さん。
具材は9種類あるが、むつごろうとエビはどちらか1つなので、等分された須古寿司にのる具材は8種類というわけだ。できあがった須古寿司は、黄、ピンク、緑…色とりどりで鮮やかだ。
「1つずつの須古寿司は田んぼを表していると言われています。錦糸卵は丸い形にしていますが、これは満月を表しているとも言われています。山の上から見た田毎の月(たごとのつき)ということなのでしょうね」。
もちもちとした酢飯はほどよい甘酸っぱさ。その中にあるピリッ、コリッとした紅しょうがの食感や奈良漬けの塩味が際立つ。ゴボウ、シイタケ、デンブ、香ばしくもあるむつごろうは、酢飯より甘く食感もそれぞれに異なるところがおもしろい。酢飯のやわらかい甘味の上に、塩味やより甘いものが合わさっているバランスが絶妙だ。
小さい頃にも家で須古寿司作りの手伝いをしていた藤松さんは、当時、紅しょうがをかける役目だったのだそうだ。
「ちょっとしか手伝えなかったので、もっといろいろできるようになりたいなぁと、いつも思ってました。今ではいやというほど作っていますが(笑)」。
そんな藤松さんは、現在、子どもたちに作り方を教えることも多いのだそうだ。
「自分でもいつも思っていることなのですが、子どもたちにも『きれいで美味しくつくれるようにがんばろう!!』と言っています。大切な伝統を伝えていきたいですね」。
白石のお米にもち米を1割ほど入れ、昆布と一緒にしてかために炊く。炊きたてのごはんを、酢、塩、砂糖を入れ半日ねかせた寿司酢と一緒にまぜる
自家製奈良漬け、ささがきゴボウ、椎茸、錦糸卵、カマボコ、エビかむつごろうの甘露煮、紅しょうが、デンブ。全体的に甘い味付けの中、奈良漬けの塩味が光る
全体的に真ん中が高くなるように盛りつけ、紅しょうがやデンブなどは外側に置く。そして、盛り上がった中心部分には、錦糸卵を丸い形に置いて満月を象る
『もろぶた』で作られる須古寿司は、小(15コ)、中(21コ)、大(32コ)の3種類。また、2コ入りのパックもある。須古寿司が店頭に並んでいることもあるが、数が少ないのでまずは電話で予約・確認を。店主・藤松さんは、自らも目指してきた『きれいで美味しい須古寿司』を地元の多くの子どもたちにも伝えている。