九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

ホルモン

牛や豚のホルモンが使われる。基本的には様々な部位がミックスされており、それぞれの味わいと歯ごたえを楽しめる

タレ

大きく分けると味噌ベースか醤油ベース。焼肉店では焼肉用のタレを使うことも多いが、特製のタレが使われることもある

作り方

タレで下味を付けたホルモンを、中央がくぼんだ独特の鉄鍋で炒める。たっぷりの野菜をのせ、野菜がしんなりしたら完成

語り 筑豊極ホルモン しんかい 松岡伸之の「田川ホルモン鍋」

松岡伸之(まつおかのぶゆき)さん

飯塚市と直方市の間に位置する田川郡糸田町(いとだまち)で1997年(平成9年)にオープンした『筑豊極ホルモン しんかい』。自慢のホルモン料理に加え、魚介類や一品料理などの居酒屋メニューがそろう。食肉の小売・卸売業を10年経験した店主・松岡伸之さんが仕入れるホルモンは、九州産黒毛和牛の小腸のみだ。「以前からのつながりで仕入れることができるのですが、すべて『産地証明書』と『製造記録証明書』がある安心・安全なものです。臭みがなく、やわらかくて甘みを感じられます。元々田川では牛や豚のいろいろな部位を使ったミックスホルモンが食べられていたのですが、女性や子どもさんでも食べやすいようにと、クセのない牛小腸だけを使っています。私もホルモンが大好きで、特に牛小腸が好きですね(笑)」。見せていただいたホルモンはきれいなピンク色だ。「ピンク色なのは新鮮な証拠です。仕入れたホルモンは一度洗われたものではあるのですが、お店でも手できれいに洗っていますよ」。

ホルモンを使った二大人気メニューは『ホルモン鉄板』と『旨塩もつ鍋』。「『ホルモン鍋』はもつ鍋のようにスープで煮込む料理ではありませんから、わかりやすいように『ホルモン鉄板』という名前にしています。“煮る”というより“焼き煮”という感じですしね」。注文すると、山盛りの具材が盛り付けられた特製鉄板が運ばれてくる。「みなさん、まず写真を撮られます(笑)。初めての方は『こんなに量があるんですか?』という感じの顔をされることもあります。この山は、ボタ山(石炭の発掘に伴い発生する捨て石の集積場)のイメージなんですよ(笑)。鉄板は、鉄鋼関係の仕事をしている友人がつくってくれたもので厚さが9mm。プレスして中央がくぼんだ独特の形ですね。火をつけて10分ほど待つだけです」。

注文すると、特製鉄板にホルモンと野菜が盛り付けられた状態で運ばれる。特製タレも適量がかけられている

待つ間にタレや具材のお話をうかがった。「鉄板の一番下にはホルモンを入れ、その上にタマネギ、キャベツ、モヤシ、ニラをのせています。一番上にのっている薬味は、ゴマ、ニンニク、鷹の爪、糸唐辛子です。味付けに特製のタレをかけていますが、ベストな味わいになるようなタレの量にしていますよ。筑豊の『ホルモン鍋』のタレには醤油ベースと味噌ベースがありますが、うちのタレは味噌ベース。赤味噌、醤油、果実などを合わせたものです。いわゆる焼肉のタレよりも濃厚だと思います。野菜からも水分が出てきますから食べる時にはいい具合になるんですよ」。

火をつけると全体の高さが徐々に低くなってくる。高さが半分くらいになったら少し混ぜる

その間に、徐々に山の高さは低くなっていく。「焦げそうな気がして途中で様子を見たくなったりさわったりしたくなると思いますが、箸でつついたりしないことがポイントです。キャベツがしんなりとして、半分くらいの高さになったらちょっと混ぜ、もう少し待って平たくなったら食べごろです。ほぐすような感じで食べてください。初めは少し味が薄く感じられるかもしれませんが、だんだんと濃厚になっていきますよ。初めと終わりで味が変わるので、それも楽しんでいただけるといいですね」。だんだんと味が深くなっていくので、焼酎も進む。ホルモン、タレ、野菜が一体化した味わいは甘辛く濃厚。唐辛子のピリ辛も効いている。「ごはんにも合いますし、焼酎にも合いますね。キムチを入れても美味しいですよ。メニューにはありませんが、家で作るときはチーズを入れてもおいしいですよ!」。

平たくなったらできあがり

鍋に汁だけが残ったら、〆はおじや、うどん、ちゃんぽんなどから好みで選ぶ。おじやをお願いすると、一度鍋が厨房に下げられ、おじやが作られた鍋が再び運ばれてきた。ごはんへの汁の染み込み具合といい、卵の半熟さ加減といい、ベストなおじや。鍋のへりに付いたお焦げもうまい。「どの〆も、ホルモンの旨味、タレの味わい、野菜の旨味が一つになった汁があってのものです。『ホルモン鉄板』を食べずに、〆だけを食べることはできません(笑)」。すべてが染み込んだおじやをつまみにしても焼酎が楽しめそうだ。「焼酎が好きな人は最後まで飲んでますね(笑)」。

具材を食べて〆のおじやをお願いすると、厨房で調理して持ってきてもらえる

美味しくいただいた『ホルモン鉄板』は、松岡さんも子どもの頃からよく食べていたとのこと。「昔は『とんちゃん』と呼んでましたね。子どもの頃はごちそうというよりも日常のものでした。昔はホルモンは安いものでしたから」。そして、筑豊エリアとホルモン料理の関係についても話してくれた。「筑豊はホルモン料理に関する食文化の発祥の地なのではないでしょうか。日本最大の産炭地であった筑豊で、命をかけて働いていた炭鉱マンたちが活力源として食べていたのが『ホルモン鍋』。閉山とともに故郷に帰ったり、他の産炭地に行ったりしたことでホルモン料理がさらに広まっていったのかもしれません。鉱山のあるところではホルモン料理があったりしますものね。歴史のある食べ物ですし、『ホルモン鍋』はホルモン料理のルーツだと思うのです。博多名物の『もつ鍋』のルーツでもあるのでは!?と思っています」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

ホルモン

『産地証明書』と『製造記録証明書』がある九州産黒毛和牛の小腸のみを使用。新鮮で臭みがなく、甘みをもつのが特徴だ

タレ

赤味噌、醤油、果実などを合わせた味噌ベースの特製タレ。濃厚だが、野菜から出る水分などが加わることでちょうどいい味わいに

作り方

特製の鉄板にホルモン、山盛りの野菜が盛り付けられた状態で運ばれる。火をつけて全体の高さが低くなったら混ぜて食べる

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筑豊極ホルモン しんかい 九州産黒毛和牛の小腸のみを使う味わい

自慢のホルモン料理に加え、魚介類や一品料理といった居酒屋メニューがそろう食事処。使われているホルモンは『産地証明書』と『製造記録証明書』がある九州産黒毛和牛の小腸のみ。『ホルモン鉄板(ホルモン鍋)』で、臭みがなくやわらかいホルモンの甘味、たっぷりの野菜の旨味、特製味噌ダレが一体となった濃厚な味わいを楽しめる。

『ホルモン鉄板』2310円(2〜3人前)、キムチ入りは2750円。〆は『卵とじおじや』1人前550円、うどん麺330円など
奥行きのある店の一番奥は、金色に彩られ特別感のある座敷
糸田町役場の近くにあり、スタイリッシュな外観

筑豊極ホルモン しんかい

住所 田川郡糸田町南糸田813-3
電話 0947-26-5577
営業 16:30~OS22:00
休み 水曜
110席
カード
駐車場 あり
URL http://horumon-shinkai.com/
※記載した内容は2020年5月29日現在のものです。
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