阿蘇たかな、塩、赤唐辛子が基本的な材料。春先から漬け込み、半年ほどでできあがる。作り手は、塩の加減などに工夫をこらしている
細かく刻んだ高菜漬けと白ごはんをいかに素早く混ぜるのかが重要。桶やボールの使い方、しゃもじでの混ぜ方などが異なるようだ
高菜めしの元祖と言われる『あそ路』のスタイルを踏襲し、ゴマと錦糸卵をのせるところが多いが、独自のトッピングを添える店も
「よく来てくださいましたね~」。
いつも半袖姿の女将・永野さんをはじめ、スタッフのみなさんの元気な声も響いて、店内はいつもにぎやかだ。
信頼できる農家の方が届けてくれる阿蘇たかなを使って作る高菜漬けは、春の始まりから作り始める。
「生の阿蘇たかなと塩、コショウを四角いタンクに入れて蓋をしておもしをして漬け込むとよ。少し味をピリッとさせるためにコショウは大切よ」。
そういう永野さんだが、材料の分量を尋ねてみると…「あら、塩はちゃんと量って入れよるけど、唐辛子は適当やね(笑)」。
案外、そんなおおらかなところがないと、美味しい高菜漬けにはならないのかもしれない。
漬け込んだ後に何度か行なう、蓋の上にあがってくる“強烈な匂い”の汁をきれいに取り除く作業は一仕事だ。
「すごい匂いやけん、服についたら取れんし、体についたらお風呂に入るまで取れんよ(笑)。それをきれいにしとかんとたかなが食べられんくなるけん、丁寧にやらんとね。赤ちゃんの子守りと一緒。愛情もってやらんといかんのよ」。
梅雨から夏にかけてだんだんと色が変わっていき夏の終わりには、高菜漬けはできあがる。それをきれいに洗って余分な塩を落として、高菜めしに使う。
「まず5mmくらいに小さく切って油で炒めて塩やらで味つけします。切るのはいっぺん機械で試してみたけど、やっぱ包丁で切らんとだめみたい。そうせんとコリコリ感が出らんみたいね。何日かに一回たくさん切らんといかんけど、みんなでワイワイ話ながらやってます。うちには無口な人はおらんしね(笑)」。
味付けされた高菜漬けをボールの中のアツアツのごはんに入れ、ごまも加えて切るように一気にまぜる。それをお汁茶碗に入れて形をととのえ皿に盛る。添えられる卵焼きの千切りと紅しょうがで彩りもいい。
さっそく一口。コリコリピリ辛の高菜漬けが甘味を強く感じるごはんとよく合っている。
「お米にもこだわりがあるとよ。すぐ下に田んぼがあるけど、自分たちで有機栽培で育てよります。油かすを使った堆肥などで土づくりからやりよるよ。ひとめぼれ、ミルキークィーン、こしひかりという3種の米をブレンドして、甘くてもちもちしたごはんにしよると。冷蔵した状態で保管して、毎日その日に使う米だけゆっくり時間をかけて精米しよるしね」。
そんな高菜めしを、永野さんたちスタッフもよく食べるのだそう。
「朝10時くらいから仕事しよるけど11時くらいにおにぎりにして食べます。私たちは、海苔を巻いて焼いて食べよるけど、これがまた美味しいとよ!!」。
皿に盛られた高菜めしは確かに美味しい。しかし、なかなか皿の上からなくならない。だご汁と一緒だと、よりボリューム満点…。
「米は自家製だし、たっぷりついでます(笑)。たべきれんかった人にはおにぎりにして持って帰ってもらいよるよ。ちなみに、大盛りだと皿の外側にはみだすごとしとるよ。うちは盛りで勝負やけん!!(笑)」
素朴な味に加え、量が多めだということも、高菜めしを語る時に外せない特徴なのだ。
自家製高菜漬けの材料は阿蘇たかなと塩と赤唐辛子のみ。2〜3月に漬け込み夏の終わりにできあがる。茎のシャキシャキとした歯応えもごはんに合う
高菜漬けを5mmほどに刻んで油で炒め、塩などで味付け。3種類の銘柄をブレンドした自家製米を炊いたアツアツのごはんと合わせ、すばやく混ぜる
ゴマは、高菜漬けとごはんが混ぜられる時、高菜漬けと一緒に投入される。丸く盛られたごはんの上には彩りもいい卵焼きの千切りと紅しょうがのる
国道57号線沿いにあり、『高菜めし』と『だご汁』を中心に、食べるとほっとする素朴な料理を提供し続けているお店。女将・永野慶子さんを先頭に女性スタッフたちの元気な応対も心地いい。3種の銘柄をブレンドした自家製米は炊き上げると甘くてもちもち。同じく自家製の高菜漬けと合わせた『高菜めし』は評判の一品。