ベースは小麦粉、出汁、卵、塩。そこにネギ・ニラなどを加えるが特にきまりはなく、ツナ・コンビーフなど様々な具材が使われる
小麦粉、出汁、卵、塩を混ぜ合わせ、そこに具材を入れる。熱したフライパンに流し入れ、何度か裏返して焼き上げる
そのまま食べたり、お好み焼きソースをかけたりすることもあるが、ウスターソースをつけて食べるのが沖縄の定番だ
大通りから少し入った場所で2003年にオープン。かつて洋食を手がけていた店主・山城康成さんが作る料理は洋食が中心だが、食材は沖縄産のものだ。
「農家の方から直接野菜を買って、いろいろな島野菜を使っています。バジル、ミントなどは店の前のプランターで育てていますよ。沖縄の野菜は美味しいので、今まで使ったことがない野菜も試していますね」。
島らっきょうなど島野菜をピクルスにしたり、島豚をソテーしてバルサミコと醤油を合わせたりと、沖縄の食材の味を引き出している。さらに、伝統的な料理法にも一工夫。
「魚のマース煮(塩煮)もアクアパッツァのような洋風のアレンジをしています。味付けはマースだけで、それにハーブとトマトを入れただけなんです」。
グランドメニューには書かれていないが、お願いすれば作っていただける『ヒラヤーチー』も山城さんのアレンジが加わっている。
「僕がつくるのは普通の『ヒラヤーチー』とは少し違いますね。コンビーフハッシュ(コンビーフと茹でてさいころ型に切ったジャガイモを合わせたもの)が個人的にも好きなもので(笑)、『ヒラヤーチー』にも入れているんです」。
『ヒラヤーチー』の材料は、小麦粉、塩、卵、カツオ出汁、島ネギ、コンビーフハッシュだ。
「卵を溶いて出汁を加え、小麦粉を入れて混ぜます」。
「塩を少し入れてコンビーフハッシュをつぶしながら入れ、ネギを加えれば“タネ”はできあがりです」。
「天ぷらの衣くらいにゆるい感じですね。油をひいて熱したフライパンにタネを流し込み、強火で焼きます」。
「何度か裏返して表面がいい色合いに焼き上がったらできあがり。とてもシンプルな料理ですね(笑)。厚めにつくる人もいるけど、僕は薄めに焼いています。ウスターソースをつけて食べる人もいるし、醤油だという人もいます(笑)。うちではウスターソースを添えますが、注文していただければ、島とうがらしを泡盛に漬け込んだコーレーグースと醤油をあわせたものも添えます。これにつけても美味しいですよ」。
もっちりとした生地の食感の中、コンビーフハッシュの味わいが広がる。ウスターソースをつければ沖縄定番の味を楽しめる。コーレーグースのピリ辛の味わいが『ヒラヤーチー』とよく合う。
『ヒラヤーチー』にまつわる山城さんの思い出も教えていただいた。
「『ヒラヤーチー』は主食じゃなくて、おやつ的な感覚でした。母親が作ってくれていた土曜と日曜のおやつですね。何もない時とか、台風の時もよく作ってくれましたね。1つのフライパンでできる簡単な料理ですから。戦後の物がない時代にアメリカから小麦粉が配給されたので、それを使った簡単な料理だったのかもしれませんね。僕の親の世代はみんな作っていたけど、今はあまり作られていないような気もします。何を入れてもいいのですが、小さい頃食べていたものは小麦粉と卵とニラだけを使ったもの。具はニラしか入ってなかったです。庭に生えているニラを切って(笑)。ごくたまにツナが入っている時もありましたけど。まあ、いろいろ入れるとお好み焼きになってしまいますね(笑)。母親が『ヒラヤーチー』を作ってくれるとテンションがあがっていました。そして兄弟でとりあいになる(笑)。そんな風景も思い出されるおふくろの味ですね。妻が作ってくれることもあるのですが、やっぱり違う。勝手なこだわりなんでしょうね(笑)」。
隠れ家的な場所にお店があることもあり、地元のお客さんが大半。それでも『ヒラヤーチー』を頼む方が多いのは、『ヒラヤーチー』が“なつかしさ”を感じる料理だからなのだろう。
材料は小麦粉、塩、卵、カツオ出汁、島ネギ、コンビーフハッシュ(コンビーフと茹でてさいころ型に切ったジャガイモを合わせたもの)
卵を溶いて出汁、小麦粉を入れて混ぜる。塩を少し入れてコンビーフハッシュをつぶしながら入れ、ネギを加えたタネを強火で焼く
ウスターソースをつければ沖縄定番の味に。ピリ辛のコーレーグース(泡盛に島とうがらしを漬け込んだ調味料)と醤油をあわせてつけても美味
かつて洋食を手がけていた店主・山城康成さんが作る料理は洋食が中心だが、食材は沖縄産のもの。さらに、魚のマース煮(塩煮)にはハーブとトマトを入れるなど伝統的な料理も一工夫されている。『ヒラヤーチー』は具材に島ネギとコンビーフハッシュを使い、ウスターソースの他に、醤油にコーレーグースを合わせたタレでいただくのも美味。