九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

殻をむいた落花生を水に浸けておくのが一般的。薄皮までむいたものを使うことが多い

作り方

水に浸けておいた落花生をミキサーにかけ、布袋に入れて“落花生の豆乳”を絞りとる。水で溶いたタピオカ粉を入れて火にかけ、木ベラ等で練る

タレ

醤油と砂糖を煮詰めたタレがたっぷりとかけられることが多い。薬味としてすりおろしたショウガが添えられることもある

語り じーまーみ豆腐専門店 花商 花城つうこの「じーまーみ豆腐」

花城つうこ(はなしろつうこ)さん

観光客でにぎわう国際通りに入口があり、公設市場をはじめ様々な商店が並ぶアーケードの市場本通りと市場中央通り。この通りを進んださらに奥にある『新天地市場本通り』に、『じーまーみ豆腐専門店 花商(はなしょう)』がある。販売されている商品は『じーまーみ豆腐』のみ。持ち帰りのお客さんに加え、店舗前にいくつか置かれたテーブルで食べているお客さんも多く、お店はいつもにぎわっている。「商品が売切れになったら閉店です。日曜はお昼過ぎに売切れてしまうことも多いんですよ」と言う女将・花城つうこさんを訪ねた。

案内していただいたのは、お店から徒歩数分、『新天地市場本通り』に面した場所にある工房。製造工程をのぞくことができる工房では、職人長の前原美奈子さんを中心に5名の女性が『じーまーみ豆腐』を作っている。下ごしらえした落花生に水を加えてミキサーにかける。それをさらしに入れて手絞りし、“落花生の豆乳”を絞り出し、羽釜に入れる。「落花生は生き物なので、取り寄せるものがその日によって品質が違うんです。手で絞り、目で見て、香りを感じることから油分などその時その時の状況がわかります。それに合わせて、絞り方、その後の工程での熱の加え方や練り方を変えていくんですよ」。

下ごしらえした落花生を水と一緒にミキサーにかけ、ミキサーに入れたものを袋に入れて手絞りし、“落花生の豆乳”を絞り出す

絞り出された“落花生の豆乳”が入った羽釜を火にかけ、タピオカ粉を入れ、専用のヘラでしっかりと混ぜる。「琉球料理の本流ではくず粉を使用しますが、私たちが使うのはタピオカ粉。タピオカ粉を使うと落花生の風味が引き立ちますし、もっちりプルプルとした食感がより出ますね。しっかり混ぜるのは全体を均一にするためです」。

水溶きタピオカ粉を入れてヘラで混ぜる

タピオカ粉を混ぜた後は強火で一気に仕上げる。混ぜていくうちに、全体が固まり始め、粘りが出てくる。「固まる前までを混ぜるのはそれほど難しいことはではないのですが、粘りが出始めてからは熟練の技が必要になります」。初めは片手で混ぜているが、粘りが出始めると両手で混ぜる動きになる。手の動かし方もヘラを回すだけではなく練り込むような動きに変わる。この技は“返し”と呼ばれ、習得するには数年の経験が必要になるそうだ。さらに、粘りが強くなると、今度は腰を入れて身体全体で練るような動きになる。

徐々に固まってくるので、力を入れて練る

「粘りが出てくると力作業になっていきますね。どこまで練るか、どこで止めるかも職人にしかわからない感覚なんです。練ればいいというものではなくて、ヘラですくった時に、固まった“豆乳”がヘラの上にとどまるくらいがほどよいもの。その時、ヘラは鍋の中で立てることができるんですよ」。釜の真ん中にヘラを刺すようにして手を離すと、前原さんがいうようにヘラはそのままの状態で倒れなかった。このように練り上がったら、器に入れて冷やす。職人の技術が『花商』の『じーまーみ豆腐』を作り上げているのだ。

中でヘラが立つほどまでに練り上げる
型に入れて冷やす

店頭で『じーまーみ豆腐』をいただいた。スプーンですくおうとしてももっちりとしてなかなかすくえない。まずはそのまま口に運ぶと、もちもち、トロトロの食感とともに、落花生の風味と甘みを感じる。次に添えられる特製のタレをかけて食べてみる。醤油ベースで甘めのタレがからんでも美味しい。女将の説明によると「醤油、砂糖、ショウガから作ります。みたらしに似ているけど、ちょっと違いますね。醤油と砂糖を合わせ、沸騰させることなく弱火でゆっくりと煮詰めます。最後にショウガ汁を少しだけ入れるんです」。さらに、添えられるワサビをつけると清涼感のある辛味が落花生の風味を引き立てる。「ワサビをつけるとつまみにいいですよね。つまみとしてはハーブ塩をかけてもいいですし、塩とオリーブオイルもいいですよ。刻みのり、アボカドと一緒にしてもいいつまみになります。私もいつもつまみにしてます(笑)。場所によっては、カツオ出汁をかけて食べたりするところもあるようですよ。味噌汁に入れて食べる方もいますね。私の知り合いの料理人はお雑煮に餅の代わりに使っています。のどにつまる心配もないですからね」。

その他にも揚げ出し豆腐のようにしたり、黒蜜、きな粉、あんこなどを合わせてデザートとして食べたりと、様々な食べ方があり、幅広い世代に愛されている『じーまーみ豆腐』。しかし、沖縄生まれの花城さんは幼い頃はあまり食べることはなかったのだそうだ。「琉球王国が解体され、明治時代以降には一般でも作られるようになりましたが、その頃は石臼を使ったものすごく手間のかかる料理だったので、沖縄では高価なごちそうだったんです。家庭用のミキサーの普及に伴い、徐々に家庭料理として作る方が増えてきました」。沖縄で古い歴史をもつ『じーまーみ豆腐』。その歴史に想いを馳せながら食べるのもおもしろい。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

下ごしらえした落花生を水と合わせる。『じーまーみ豆腐専門店 花商』ならではの味わいを生み出す重要な部分で詳細は秘密とのこと

作り方

落花生と水をミキサーにかけ、袋に入れて“落花生の豆乳”を絞り出す。水溶きタピオカ粉を入れて火にかけ、練り上げる

タレ

醤油と砂糖を合わせ、弱火でゆっくりと煮詰める。最後にショウガ汁を少しだけ加える。店頭で食べるときはワサビが添えられる

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じーまーみ豆腐専門店 花商 職人が心を込めて作る専門店

国際通りに交わるアーケード街の奥にあり、販売しているのは『じーまーみ豆腐』のみ。持ち帰り客とともに、店頭に並ぶテーブルでイートインする客でいつもにぎわう。すぐ近くにある工房はガラス張りで、職人が手作りする姿を見ることもできる。プルプルモチモチの食感に落花生の香りと甘みがふわり。甘めの特製タレがさらにその風味を引き立てる。

『じーまーみ豆腐』220円。店頭で食べると、特製タレとワサビが添えられるのでお好みで。冷蔵で1週間保存可能、取寄せもできる
店は風情のあるアーケード街の一角にある

じーまーみ豆腐専門店 花商

住所 那覇市牧志3-4-1
電話 098-863-8720
営業 9:00(日曜10:00)〜19:00
※売切れ次第終了
休み 不定
カード
駐車場 なし
URL https://www.ji-ma-mi-hanasyo.com
※記載した内容は2019年4月25日現在のものです。
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