採れたてのものを皮つきのまま下茹でする。普通のたけのこと違いアクが少ないので、茹でる時間も短くすることが多い
下ゆでしたたけのこを皮付きのまま切って焼く。表面が香ばしくなり、『合馬のたけのこ』の甘味をより感じることができる
各店は、「『合馬のたけのこ』をそのまま味わっていただきたい」と、甘味や旨味を引き出す工夫を凝らした料理を提供している
風格ある門構え、部屋から見える美しい日本庭園。『観山荘別館』は伝統的な数寄屋造りの純和風料亭だ。その原点は、1954年に北九州市小倉に創業した割烹旅館『観山荘本館』に由来する。1982年に独立し、地元の旬の味を提供し続けている。お昼も夜も基本は懐石料理。例年、1月から4月にかけて、その中に『合馬のたけのこ』を使った料理も加わる。
料理長・久木野和大さんにお話をうかがった。
「『合馬のたけのこ』の旬は、3月中旬〜4月下旬くらいです。その前のものは、寒竹(かんたけ)と呼ばれていて値段も高いのですが、1、2月などに懐石の一品として出すこともあります。3月になると値段も落ち着きますし、ご予約いただければ“たけのこづくし”の懐石もお作りできますよ。たけのこは、刺身、煮物、天ぷら、焼きもの、たけのこごはんなど、どんな料理にもできます。洋風にソテーしたり、若いたけのことわかめをミルフィーユのように重ねる料理もありますね。たけのこと小倉牛のしゃぶしゃぶも美味しいですよ」。
今回は、代表的な『焼きたけのこ』と天ぷらを作っていただいた。
まず見せていただいたのは、朝に採れたばかりの、とても瑞々しい生のたけのこ。
「切ったところから水分が出ているのが、良いたけのこです。まだ生きているのですね。たけのこは極端に言うと、竹があればどこからでも出てくるものですが、竹林をきれいにして、土壌を改良することで『合馬のたけのこ』の品質は向上していったようです」。
料理は、たけのこの下茹でから始まる。
「たけのこが店に届いたらすぐに仕込みます。皮のまま米ぬか、タカのツメ、塩を加えた湯で3時間ほど煮て、そして自然に冷まします。しっかり冷めたら水にさらし、もう一度茹でます。これは“ぬか抜き”のためです。『合馬のたけのこ』は収穫してすぐに切って食べれば生でも食べられるほどですが、やはり時間が経つと少しエグミが出てきます。もともとがやわらかいので、普通のたけのこと違って炊く時間は短くていいですが、やはり下ごしらえは大事ですね」。
まず、『たけのこの天ぷら』を作っていただいた。
「下ごしらえが終わったたけのこをタワシで洗ってきれいにして、皮をむいたら、表面を包丁でこさぐようにしてきれいにします。
さらに、根元のイボイボした部分をかつら剥きで取ります。このイボイボにはエグミがあるんです。さらに、先端は皮に近くて甘味が少ないので切り落とします。食べる部分は生の状態の6割くらいになりますね。
切り方は、タテに8等分するのが基本です。やわらかいたけのこですから、全体の食感を楽しんでいただけるように、輪切りにはしないのですよ。あとは衣をつけて揚げればできあがり。塩と天ツユをおつけしています」。
『焼きたけのこ』は、下ごしらえしてタワシできれいに洗ったものをやはりタテに8等分して焼く。テーブルに炭火が運ばれ、好きなように焼いて食べられる。
「そのままでも食べられますから、焼き色がついたら召し上がってください。皮が焼けていい香りが出ますね。皮は5枚ほどむいて、中のほうだけを食べてください。北九州の方はどうやって食べると美味しいか、こだわりを持った方もいらっしゃいますね。『焼きたけのこ』に関しても、「切ってしまわないで、下に包丁の切れ目だけを入れといてください」という注文もあるんですよ。焼きたけのこは、ゆずみそ、木の葉みそ、甘味があるアラスカのピンクソルトをお付けしていますのでお好みでどうぞ」。
『たけのこの天ぷら』も、『焼きたけのこ』も、丁寧な下ごしらえから生まれる旨味や甘味を強く感じる。薬味はほんの少しだけでよさそうだ。
「『合馬のたけのこ』は、やわらかさや甘さを持つすばらしいたけのこです。野菜ですが、とても高級な食材です。茹でただけのものでも美味しいですから、料理する時に濃い味付けはもったいないですね。煮物にする時も、煮汁はお吸い物くらいの味付けにしていますよ。甘みのあるたけのこそのものの味を生かす料理じゃないといけませんね。私はお部屋まで行って、お客様とお料理のお話しをすることもありますが、『合馬のたけのこ』には、私の説明は要らないと思います(笑)」。
朝採れの『合馬のたけのこ』を、米ぬか、タカのツメ、塩を入れた湯で茹でて自然に冷ます。水にさらした後、さらにもう一度茹でる
下茹でしたたけのこをタテに切って8等分にし、炭火で焼く。ゆずみそ、木の葉みそ、甘味があるアラスカのピンクソルトで食べる
『たけのこの天ぷら』。下茹でしたたけのこをタテに切って8等分にし、衣をつけて揚げる。塩か天ツユで食べる
伝統的な数寄屋造りの純和風料亭。美しい日本庭園を見ながら、懐石料理(昼2,500円〜、夜5,000円〜)で地元の旬の味わいを楽しめる。『合馬のたけのこ』を使った料理は、例年、1〜4月に懐石料理の一品として加えられる。旬の時期には、“たけのこづくし”の懐石をお願いすることも可能だ。丁寧な下ごしらえから引き出される甘味と旨味を味わいたい。
住所 | 北九州市小倉北区三郎丸3-10-41 |
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電話 | 093-941-2151 |
営業 | 11:30〜OS13:30/17:30〜OS21:30 ※完全予約制 |
休み | 12月29日〜1月1日 |
席 | 350席 |
カード | 可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.kanzan.net |