下処理をした後、強い火で一気に焼きあげるが、カツオは火を通し過ぎると身が固くなってしまうので、どのくらい炙るかは重要
日南で好まれている甘口醤油が欠かせない。その他、酢や柑橘類の絞り汁など酸味がある材料も加えられる
タマネギ、ネギ、ニンニク、ショウガなどが一般的。刺身風に盛ったり、豪快に大皿に盛ったりされるが、総じて量はたっぷり
目の前は油津港。海風も心地いい場所に立つ店の名前は『びびんや』。聞き慣れない響きだが、どんな意味なのだろう?
「“びび”とは日南の方言で、魚のことなんですよ。子どもたちは“びびしゃん”と呼んだりもします。店の入口に生け簀を置いているので、それを見た子どもたちの「びびがおる!!」という元気な声もよく聞こえてきますね」。店主の間瀬田尚己さんは、美味しい魚介類を気軽に食べてほしいという願いを込めて『びびんや』と名付けたのだ。
「日南はカツオやマグロをはじめ、魚が本当に美味しい場所です。みなさん、カツオが大好きです。漁師さんが市場には出せないちょっと小ぶりの魚をくれたりもするので、地元の方にとっては、魚はあまりにもふつうの食材なのかもしれません。だから、魚のメニューを食べる方は郊外から来てくださる方が多いようです。地元の方に一番の人気メニューは『チキン南蛮』ですね(笑)」。
一年を通して食べることができるカツオだが、4月から5月くらいにかけてのカツオは特に美味しいのだそう。「冬場の戻りカツオも美味しいですが、日向灘で獲れる上りカツオは格別ですね」。
その新鮮なカツオで、タタキを作っていただく。
「目の色も違いますし、新鮮なカツオはさわると固いですね。でも身はやわらかくて、おろすのはなかなか難しいんです」。
3枚におろした後、身を4つに分けて血合いを取る。皮と身の間に串を刺して、皮を下にして焼く。
「焼くと皮が縮んで“く”の字型になってしまうので串を刺して焼くのです」。
ガスコンロの直火で、皮には焦げ目がつくように、反対側は色目がつくくらいに焼き、氷水に投入。『ジュウッ』という音ともにいい香りも漂う。5分ほど冷やして水分を取り、切って薬味とともに皿に盛る。
薬味はタマネギ、ネギ、ニンニク、すりおろしたショウガ、もみじおろし。刺身のように大根のツマと大葉も添えられる。これをポン酢、ダイダイ酢と日南の甘口の醤油などを使ったタレでいただく。ダイダイは手絞りしたもので、冬の間にタレは作っておくとのこと。
「日南の方々は甘めの醤油が好きですね。刺身に使う醤油もやっぱり甘口なんですよ。私も、よそで食べた時、やっぱり日南の醤油の味じゃないと物足りないなぁと思ったりします。小さい頃から慣れ親しんでいる味が一番なのでしょうね」。
やわらかくて弾力のあるカツオの身と焼き目の香ばしさ。薬味の風味。それを甘酸っぱいタレが包み込む…。
4つに切り分けたカツオの身の大きさに合わせて、皮と身の間に串を刺し、ガスの炎で皮の部分に焦げ目を。全体的に表面だけに火を通し、氷水でしめる
ポン酢、手絞りしたダイダイ酢と日南の甘口の醤油などを材料にして作る。ダイダイが収穫される冬の間に作っておき、味がまろやかになってから使う
薬味は、タマネギ、ネギ、ニンニク、すりおろしたショウガ、もみじおろし。これに、刺身と同じように大根で作られたツマと大葉も添えられる
油津港に揚がる魚を中心に、九州各地の新鮮な魚を味わうことができる。刺身でも食べられるカツオを使った『カツオのタタキ』は、たっぷりの薬味と合わせて、甘口の醤油とダイダイなどの酸味が調和したタレでいただく。マグロ料理や、ヅケにしたカツオをごはんの上にのせ出汁をかけて食べる郷土料理『カツオめし』も味わいたい。