九州の味とともに 春

この料理の"味のキーワード"

下ごしらえ

殻をむいた落花生を水に浸けておくのが一般的。薄皮までむいたものを使うことが多い

作り方

水に浸けておいた落花生をミキサーにかけ、布袋に入れて“落花生の豆乳”を絞りとる。水で溶いたタピオカ粉を入れて火にかけ、木ベラ等で練る

タレ

醤油と砂糖を煮詰めたタレがたっぷりとかけられることが多い。薬味としてすりおろしたショウガが添えられることもある

語り 居酒屋 くめや 田場千弘の「じーまーみ豆腐」

田場千弘(たばちひろ)さん

多くの飲食店が集まる那覇市にある『居酒屋 くめや』は開店して20年以上。昔ながらの沖縄の雰囲気を感じさせる古民家風の店内で、島豆腐を使った料理、ラフテー、もずくの天ぷらなど沖縄ならではの味を楽しめる。「全メニューがおすすめです(笑)」と言う料理長 田場千弘さんは、以前はお客さんとしてよく利用していたという。東京や鹿児島で飲食業の経験を積んだのち、沖縄に帰ってこられたそうだ。自慢の品の一つでもある『じーまーみ豆腐』作りを見せていただいた。

「昔ながらの材料としては落花生、水、くず粉を使うのが基本的ですが、私はタピオカ粉を使っています。タピオカ粉で作ると、仕上がりがなめらかできれいなものになるんですよ」。前日からの準備として落花生を一晩水に浸けておく。「豆はいろんな豆を売っている公設市場の豆屋さんから仕入れています。薄皮をむいたものだけを使うことも多いですが、私は、薄皮をむいたものと、薄皮が付いたものをブレンドしていますね。薄皮付きは香りがしっかりしていて、味に深みが出るんですよ」。水に浸けておいた落花生は水とともにミキサーにかけられる。

一晩水に浸けておいた落花生をミキサーで砕く

それを漉し袋に入れて、“落花生の豆乳”を絞る。その作業を何度か繰り返すことで、ボウルは “落花生の豆乳”で満たされていく。「この漉し袋も豆屋さんが作っているんです。絞っている時、見た目よりもかなり力が入ってますよ。これだけ飲んでもあまり美味しくないかもしれません(笑)。『じーまーみ豆腐』になり、さらにタレとのバランスで美味しくなるのだと思います」。

漉し袋に入れ、“落花生の豆乳”を絞り出す

さらに、“豆乳”はもう一度漉してから鍋に入れる。

もう一度漉してから鍋を火にかけ混ぜる

この後、鍋を弱火にかけ、くず粉を入れて木ベラでゆっくりと混ぜ、時間をかけて練り上げていくのが昔ながらのやり方。だが、田場さんは少し違う方法で作り上げている。「前に修行していた所では、昔ながらの製法で、鍋の中で木ベラをずっと回し続けなければいけませんでした。しかも途中で回転方向を変えてはいけないと言われてました。疲れた記憶しかないですね(笑)。いろいろ試してみて、今は泡立て器で混ぜています。そして、沸騰してきたら水で溶いたタピオカ粉を入れて一気に混ぜるんです」。ここまで一人で作業していた田場さんだが、混ぜることに専念するため、水溶きタピオカ粉は別のスタッフが入れるとのこと。

水溶きタピオカ粉を入れて混ぜる

鍋の中が沸騰すると、田場さんの泡立て器を回す動きが早くなり、そこに水溶きタピオカ粉が加えられると、さらに回転は激しく速くなる。“豆乳”は徐々に固まり、粘りが出てくる。「このようにして混ぜないと、だまができてしまって食感が悪くなってしまうんです。木ベラよりも泡立て器のほうが混ざりやすいのではないでしょうか」。

力を込めて練る

火を止めて、さらにもう少し混ぜる。「手に感じる感覚と、泡立て器を引き上げた時の粘りで判断していますね。後は、容器に入れ、冷やしてできあがりです」。

容器に入れて冷やす

注文すると器に盛り付け、上から特製のタレを回しかける。タレは黒砂糖、醤油、日本酒を合わせて煮詰めたものだ。プルプルでなめらかな喉越しが心地いい『じーまーみ豆腐』。深みのある甘みと香りをもつ黒糖の風味広がるタレが、さらに味を引き立てる。「時間をかけずに作れ、お手頃な価格で提供できるのがうちの『じーまーみ豆腐』。昔ながらの製法にも負けない美味しさだと思いますよ(笑)。『じーまーみ豆腐』はもともと宮廷料理で庶民は食べることができなかったものですが、安くて美味しいものを提供するのが居酒屋ですから!」。

さて、『じーまーみ豆腐』はメニューのデザートの欄に書かれているが、つまみにもぴったりの一品だ。「甘いタレをかけているので、一応、デザート欄に書いています。デザートにもなりますが、焼酎にすごく合いますよ。自分も『じーまーみ豆腐』を一番初めにつまみにした時、『あれっ?こんなに合うもの?』とびっくりしましたから(笑)。ぜひ試してみていただきたいですね。『じーまーみ豆腐』はプルプルして取り分けるのがむずかしいので、人数分のスプーンをお出しするようにしていますよ」。焼酎と一緒に楽しんだ後は、『じーまーみ豆腐』に黒蜜ときな粉をかけ横に抹茶アイスが添えられた『黒蜜きな粉じーまーみアイス』で〆れば、『じーまーみ豆腐』を2度楽しめる。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

下ごしらえ

落花生を一晩水に浸けておく。薄皮をむいたものと、香りがしっかりしていて味に深みが出る薄皮付きのものをブレンドしている

作り方

ミキサーにかけて“落花生の豆乳”を絞る。もう一度漉した後、水溶きタピオカ粉を入れて加熱しながら泡立て器で練る

タレ

黒砂糖、醤油、日本酒を合わせて煮詰めたもの。深みのある甘みと香りをもつ黒糖の風味が広がる

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居酒屋 くめや 昔ながらの沖縄の雰囲気が漂う居酒屋

古き良き沖縄の雰囲気を感じさせる古民家風の店内で、島豆腐を使った料理、ラフテーなど沖縄ならではの味を楽しめる。『じーまーみ豆腐』には、薄皮をむいた落花生と、香りが濃く味に深みが出る薄皮つきの落花生をブレンドして使用。特製タレをかけると独特の食感にすっきりした甘味がからまり、つまみでもデザート感覚でも楽しめる。

『じーまーみ豆腐』453円
豚の三枚肉をとろとろに煮込んだ『ラフテー角煮』1058円
塩とハチミツが添えられる『紅芋チーズ春巻』648円
1階はすべて掘りごたつ席、2階はテーブル席だ
15時オープンなので、早い時間の夕食に利用するのにも便利

居酒屋 くめや

住所 那覇市久米2-11-26
電話 098-866-9433
営業 15:00〜24:00
休み なし
60席
カード
駐車場 なし
※記載した内容は2019年4月25日現在のものです。
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