もずくだけのシンプルなものの他、かき揚げのようにするためタマネギやニンジンなど千切りの野菜を合わせて使うこともある
基本的には塩だけというシンプルな味付けが多い。天つゆやソースなどが添えられることもある
材料に塩を加えて混ぜ、衣となる卵と小麦粉を入れてさらに混ぜる。全体に火が通りやすくなるため平たく形を整えて揚げていく
那覇市の繁華街・国際通り近くにある牧志(まきし)公設市場は、野菜、豚、色鮮やかな魚など、沖縄の食材が一堂に集まる場所としてよく知られている。そして、牧志公設市場から北東に約700m、ゆいレール『安里駅』近くにも、新鮮な食材が集まる栄町(さかえまち)市場がある。この市場内にあるのが、2011年7月で20周年を迎えた『ぱやお』だ。
お店に入ると、カウンターの一部には氷が置かれ、カラフルな魚たちが並んでいる。出迎えてくれたのは、板長・山城勳さん。
「『ぱやお』とは“魚礁とか魚が集まる場所”といった意味なんです。いろいろな沖縄の味をご用意していますが、魚介を使った料理が中心、沖縄の海の幸を食べていただきたいと始まったお店なんです」。
人気メニューベスト3は、『どぅる天』『もずく酢』『刺身の盛り合せ』。『どぅる天』は、田芋(サトイモ)を煮たものに豚肉、カマボコ、シイタケを入れて練り合わせ、揚げた料理。そして、やはり魚介類を使ったメニューは人気で、もずくもよく食べられているようだ。
「『もずく酢』以外では、『もずく雑炊』とか、『もずくそば』もありますが、『もずくの天ぷら』が人気ですね。今から30年くらい前に、沖縄のどこかの居酒屋の人が始めたという話もあるようです。それが美味しかったから広まったのでしょうね。今ではかまぼこ屋さんとか、お惣菜屋さんでも売っていて、よく食べられていますね。天ぷらは、いろいろなものを揚げますが、もずくは水分も多くて揚げにくい素材なので、ちょっと難しいと思います。家で作るには大変かもしれませんね(笑)」。
その作り方を見せていただいた。
「まず、もずくの水気をよく切ります。ざるに入れて両手に体重をかけてしぼるようにして水気を取るんです。生のもずくを使うこともありますし、塩漬けのもずくを使う場合もあります。保存食である塩漬けのもずくを使う時は水で洗って塩分を取り除いた後で水気を取ります」。
もずく以外の材料は白身の魚と、タマネギ、ニンジン、ニラなどの野菜類。
「うちは魚料理の店ですから、白身魚も加えています。すべての材料を千切りにして、ボールに入れて沖縄の自然塩を加えます。
味付けは塩だけで、少ししか入れないので薄味ですね。それは、素材そのものの味を楽しんでいただけるようにです。
全体に塩がなじむようにもみこんだら、卵の黄身だけと小麦粉を入れて混ぜます。卵は全部入れると水分が多くて衣がゆるくなりすぎてしまいますね。
材料がまとまったら、さらに小麦粉と卵の黄身と水を合わせたものを適量加えて再び混ぜて、形を整えてから揚げます。衣はすこし固めのほうがいいですね」。
中までちゃんと火が通るように、平たい形に整えてから油に入れていく。
「油の温度は170〜180度。油の中に入れるといったん沈んでから浮かびあがってきます。しばらくしたらひっくり返してもう数分、音と色でできあがりを判断します。盛りつける時は、もう一度ひっくり返します。つまり油に入れた時と同じような状態で盛りつけるのです。色味が薄いほうを上にするというわけです」。
より美味しく作るため、より美味しく見せるため、細かな心配りがなされているのだ。
1皿に3コ盛りつけられた『もずくの天ぷら』は、さっくり&しっとり。白身魚の風味も伝わってくる。
「地味な色味ですが美味しいですよ(笑)。熱いうちに食べてくださいね。早く食べないと油を吸ってしまいますからね。お皿には一緒に塩もおつけしていますのでお好みでどうぞ」。
取材を終えた後、取材班より先に、山城さんにこう言われてしまった。
「いっぺーありがとー(たくさんありがとう)」。
いつもお客さんに感謝しつつ料理を作っている山城さんの想いが、料理の味をより高めているのかもしれない。
もずく(塩漬けされたものを使う時は塩抜きしたもの)、ニンジン、タマネギ、ニラ、白身魚。もずく以外は千切りにしている
沖縄の自然塩のみを使い、「素材そのものを楽しんでもらいたい」と薄味仕上げ。料理と一緒に塩が添えられるので、あとは好みで
衣は卵の黄身だけ、小麦粉、水。かための衣をつけて平たく形を整えて、色もきれいに揚がるように調理する
カウンターの一角には魚屋さんのように色とりどりの魚がずらりと並ぶ。沖縄の新鮮な食材が集まる栄町市場内にある居酒屋さんで、魚介を使った料理(刺身の盛り合せ2人前2100円〜など)を中心に沖縄ならではの味を楽しめる。『もずくの天ぷら』にも、タマネギ、ニラなどの野菜に加えて、白身魚の切り身もプラス。塩だけ使う薄味で、素材の味がよくわかる。
住所 | 那覇市安里379-11 |
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電話 | 098-885-6446 |
営業 | 17:00〜24:00 |
席 | 50席 |
休み | 水曜 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://payao.okinawa/ |