阿蘇たかな、塩、赤唐辛子が基本的な材料。春先から漬け込み、半年ほどでできあがる。作り手は、塩の加減などに工夫をこらしている
細かく刻んだ高菜漬けと白ごはんをいかに素早く混ぜるのかが重要。桶やボールの使い方、しゃもじでの混ぜ方などが異なるようだ
高菜めしの元祖と言われる『あそ路』のスタイルを踏襲し、ゴマと錦糸卵をのせるところが多いが、独自のトッピングを添える店も
熊本から阿蘇を通り大分へと続く国道57号線沿いには『高菜めし』と『だご汁』の看板が多く見られるが、その中で一番初めにメニューとして『高菜めし』を提供した元祖が『あそ路』だ。現在、『高菜めし』を担当しているのは井芹正吾さん。「店は私の祖父母が昭和43年に始めましたが、『高菜めし』と『だご汁』は、私の曾祖母の『サキばあちゃん』の作り方と味をずっと受け継いでいます。手間はかかりますが美味しい高菜めしのためにはそのやり方じゃないとだめなんです」。
井芹さんの高菜めし作りの仕事は、厨房だけでなく、畑で阿蘇たかなを育てることから始まる。
「秋口に種を蒔き、3月に入ってから収穫が始まります。収穫に適した時期は、それぞれの株で1週間ほどなので、その時期は親戚一同でやってますね。太い茎だけを手で折って収穫します。残った株はおしりでつぶしながら前に進んで行くんですよ(笑)」。
収穫したたかなは、その場である程度葉を落とし、10kgの束にする。「強くしばりすぎると『うむれる』と言いまして、だめになってしまうこともあります。ひもでやさしくしばります」。
たかなを収穫した日、あるいは遅くても次の日には漬ける作業へと進む。「四斗樽にビニールをひいて、たかなを洗わずにそのまま入れます。そこに塩と赤唐辛子を入れてふたをして重しをのせます。最初はたかなを40kgほど入れるのですが、何日かたつと重しで下がってくるのでまた追加します。そうやって最終的には1樽に100kgほどのたかなが入ることになります。蓋の上にあがってくる水分を取ったりしながら、やがてブクブクと発酵が始まります。これは乳酸菌の力や畑で生きている細菌の力です。だから、たかなは洗わずに入れるのです。梅雨時くらいに蓋の上にどろりとしたものが出てきますがそれをきれいにふきとって、あとは安置します。11月くらいには、きれいな飴色になった高菜漬けができあがるのです。
そして、ついに種まきから1年かかってできあがった高菜漬けで高菜めしを作る時がやってくる。
よく水洗いして、茎の部分を細かく刻む。刻んだ茎を油炒めにして、塩と薄口醤油で味付けし、さらにタケノコを入れて炒める。これがあそ路の『高菜めし』の素だ。注文が入ったら、保温しておいたこの素をアツアツのごはんの中に入れてしゃもじで切るように混ぜ込んでいく。
「まぜすぎると粘り気が強くなってしまうので、いかに少ない回数で均等にまぜるかが大事です。それから、ごはんが炊きたてで温度が高くないと美味しくできません。だからごはんを炊くタイミングがすごく難しいんです。予想通りだった時はすごくうれしいですね。地味な喜びですが(笑)」
最後に紅しょうが、ごま、錦糸卵を添えてできあがり。口に運べばごはんの甘味の中に高菜漬けの辛みとシャキシャキの食感が広がる。美味しくいただくものの、その量は…なかなか多くて手強い。 「量が多めなのは、サキばあちゃんが大家族のために作っていたものだからかもしれないですね(笑)」。
2〜3月にかけて店のスタッフ一同でたかなを収穫し、四斗樽で漬けこむ自家製。材料はたかなと塩と赤唐辛子だけだ。持帰りの高菜漬けは315円
茎の部分を細かく切って油で炒め塩と薄口醤油で味付けした高菜漬けを、炊きたてのアツアツごはんの中に入れて混ぜる。素早く均一に混ぜることが旨さの秘訣
ごま、紅しょうが、毎日作っている錦糸卵が添えられる。たかなと一緒に油で炒められるタケノコも、コリコリした食感でアクセントになっている
昭和43年に開店し、『高菜めし』の元祖として知られる店。創業者の母である『サキばあちゃん』が家庭で作っていた素朴な作り方と味を守り続けている。『高菜めし』に入れる高菜漬けは、阿蘇たかなの栽培から行なっている自家製。小麦粉でつくった『だご』を米味噌が溶かれた出汁でいただく『だご汁』も一緒に味わいたい
住所 | 熊本県阿蘇市的石1476-1 |
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電話 | 0967-35-0924 |
営業 | 11:00~17:00(土曜・日祝日~18:00) |
休み | 月曜(祝日の場合は火曜休み) |
席 | 120席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.asoji.com/ |