毎年2月から3月にかけて仕込む自家製。高菜と塩だけで作り1年3カ月ほど漬け込むことで、独特の匂いはしない
開発に5年をかけて決定したという具材は、山芋、ネギ、納豆。納豆にはカツオブシを炒ったものを合わせるなど一手間をかけている
押さえつけるようにしっかりと巻かなければならないが、空気をふくませるようにしながらしっかりやさしく巻くのがコツ
入口の上にある看板には、『
店主・
現在、本庄町店では三隅さんと三代目となる長男・靖祥さんがカウンターに並んで腕をふるっている。
“元祖”としての美味しさの秘密を教えていただいた。
まず案内していただいたのは店の裏側。置かれている樽に入っているのは自家製無添加の高菜漬けだ。
「毎年、2月から3月にかけての時期、年に1回まとめて漬けるんです。1500〜2000把くらいですね。1把でも両手でかかえるくらいの大きさがありますよ(笑)。日田の高菜は美味しいのですが小ぶりなので、『たか菜巻』には向かないですね。それから根元の茎の部分がごわっとしている(厚い)と、漬け物としてはいいのですが、塩抜きする時に塩が抜けにくく塩辛くなるので使いづらいんです。そんな理由から私たちは福岡の瀬高産の高菜を使っています。材料は高菜と塩だけ。塩の加減とおもしの乗せ方などがうまくいかなくて、昔は10樽漬けたら2樽は失敗していましたが、今は大丈夫です。1年3カ月ほど漬けると独特の匂いもしなくなりますよ」。
三隅さんが樽の中から取り出した高菜漬けに顔を近づけても、高菜漬けと聞いて想像する独特の匂いはしなかった。
店内に戻り、高菜漬けを洗って塩抜きして通常の巻き寿司用の海苔の大きさにカットする。
「高菜漬けを広げると大きさがそれぞれ違うので、海苔と同じくらいの大きさに切るのです。根元の茎の特に太い部分は『たか菜巻』には使えないので、切り落とします。ある程度の量ができたらまとめて、『たか菜巻』を食べてくださったお客さんに、差し上げることもありますよ(笑)」。運がよければもらえるうれしいおみやげだ。
高菜漬けの上にすし飯を広げ、山芋、納豆、ネギをのせる。納豆はひきわり納豆のように見えるが、実は一手間を加えている 「納豆は包丁でたたいて細かくしています。そうすると混ぜなくても粘りが出るんですよ。さらに、納豆にはかつお節を炒ったものや秘密のもの(笑)を加えて軽く味付けしています」。
海苔の代わりに高菜漬けで巻く『たか菜巻』。巻くのが一番難しい部分とのこと。
「海苔だと巻いて時間が経つと締まっていくのですが、高菜漬けは水分が多いのでうまく巻けないし、締まらないのです。だから、巻き寿司と違って押さえつけるようにしっかりと巻かないといけません。ただ、押さえ過ぎると、『こんなの巻き物じゃない』という寿司職人がいるので(笑)、空気をふくませるようにしながらしっかりやさしくほどよくですね。納豆が飛び出ないようにもしないといけないし、なかなか難しいんですよ」。
両端を高菜でふさぎ、切り分けてできあがり。
高菜漬けの歯応えと塩味、山芋の歯応え、納豆とネギの風味などが重なり合い、そのまま食べても美味だ。
「『たか菜巻』はそのままでもいいですが、醤油を少しつけても美味しいですよ。寿司と同じように、ネタとしゃりと醤油の一体感を楽しんでいただけるといいですね。とは言うものの、好きなように美味しく食べてくださればいいんです(笑)」。
『たか菜巻』は食べたいが納豆が苦手だという方のために、納豆が入っていない『梅たか菜巻』、『しいたけ入りたか菜巻』『トマト入りたか菜巻』など、アレンジされたものもある。また、『たか菜巻』以外にも、『運気上々巻』や『幸せの黄金巻』など巻き物メニューが豊富。お願いすれば断面に花や文字、アニメキャラクターなどが現れる巻き寿司を巻いていただくこともできる。三代目・靖祥さんは"飾り巻き寿司インストラクター"なのだ。
『たか菜巻』とともに日田ならではの寿司を食べられるのが『ひたん寿し』。『たか菜巻』2貫に加えて、日田産の新鮮な野菜や果物を使った野菜寿司10貫などが食べられるお得なセットだ。
「あぶり鮎、ドライ梨、パプリカ、トマト、シイタケ、イチジク、チンゲン菜、イチゴ(イチジクの時もある)、干しタケノコ、白菜巻き、ヤマメのイクラとカブの軍艦など、いろいろ食べられますよ。でも、メインは『たか菜巻』です(笑)」。
取材中も笑顔の絶えない三隅さん。寿司屋というと高級で格式高く、近寄りがたい印象を感じてしまいがちだが、飾らない雰囲気も《彌助すし》の魅力だ。
「寿司屋では、初めにちょっとつまんで一杯とか言う人もいますが、そんなの気にしなくていいです。お寿司を食べながら飲んでいただいていいし、そのほうが経済的です(笑)。好きなように、いっぱい飲んで食べていただけるといいですね。私たちのキャラクターでかっこつけてもしかたないですしね(笑)」。
三隅さんの楽しい会話とともに、美しい仕事ぶりを間近で見られるカウンター席が、《彌助すし》の特等席だ。
毎年2月から3月にかけて仕込む自家製。高菜と塩だけで漬ける。1年3カ月ほど漬け込むと、独特の匂いはしない
開発に5年をかけて決定したという具材は、山芋、ネギ、納豆。納豆にはカツオブシを炒ったものを合わせるなど一手間かけている
押さえつけるようにしっかりと巻かなければならないが、空気をふくませるようにしながらしっかりやさしく巻くのがコツ
昭和29年創業。昭和40年頃に『たか菜巻』を作り上げた店として広く知られている寿司店だ。無添加の自家製高菜漬けを使うなど、元祖の味を守り続けている。地元の野菜や果物を使った華やかで独創的な『ひたん寿し』、ユニークな飾り巻き寿司も人気。カウンターに立つ二代目・三隅勝祥さんと三代目・靖祥さんはいつも飾らずあたたかで、肩肘はらずに利用できる。
住所 | 日田市本庄町3-9 |
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電話 | 0973-22-2216 |
営業 | 10:00~22:00 |
休み | 不定 |
席 | 100席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.b-net.kcv.jp/~yasuke/index.html |
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