ベースは小麦粉、出汁、卵、塩。そこにネギ・ニラなどを加えるが特にきまりはなく、ツナ・コンビーフなど様々な具材が使われる
小麦粉、出汁、卵、塩を混ぜ合わせ、そこに具材を入れる。熱したフライパンに流し入れ、何度か裏返して焼き上げる
そのまま食べたり、お好み焼きソースをかけたりすることもあるが、ウスターソースをつけて食べるのが沖縄の定番だ
「お店は、もともとおふくろが始めたのです」。大阪や京都で修行を積んだ後、沖縄に帰ってこられた代表・知念司(ちねんつかさ)さんが腕をふるうお店だ。チャンプルーなどの沖縄料理に加え、本格的な日本料理も気軽に食べられる。
「たとえば魚料理でブリの代わりにグルクンを使うなど、沖縄の素材で日本料理を極めたいと思っています。居酒屋は料亭や割烹より少しランクが下というイメージもありますが、居酒屋でも日本料理ができる、居酒屋でも懐石料理が食べられるということを訴えていきたいですね」。
店内には『全国料理コンクール 郷土料理部門 厚生労働大臣賞』など多くのコンテストで受賞した賞状がずらりと並ぶ。知念さんの腕前はすべての料理で感じることができるが、味付けも盛付けも洗練された懐石料理(要予約)でより花開く。
家庭料理と言われる『ヒラヤーチー』について、丁寧にお話いただいた。
「小さい頃からおやつとして食べていました。1週間に1度は食べていましたね。季節は関係なくて、日々のおやつ。サーターアンダギーや蒸しパンと同じでした。けれど、今の沖縄の子たちは、おやつじゃなくて、料理の一品という感覚かもしれないですね。私は母が作ってくれる『ヒラヤーチー』に甘味噌を塗ってみたりして食べ方を工夫していました(笑)。ラフテーに巻いて食べたり焼いた野菜に巻いて食べたりもしていました。『ヒラヤーチー』の具材を変えたりして、食べ方を変えてみるのもおもしろいですね」。
その想いは店のメニューにも現れている。グランドメニューには『ヒラヤーチー』『アーサーヒラヤーチー』『もずくヒラヤーチー』『キムチヒラヤーチー』と4種類が並んでいるのだ。
「モズクを入れるとふわふわになりますし、キムチも合うんです。日替わりメニューでチーズをのせた『ヒラヤーチーピザ』などを出すこともありますし、全部で10種類くらいあるんですよ。サバの代わりに『ヒラヤーチー』を使った『ヒラヤーチーの押し寿司』といった料理もあります(笑)」。
『もずくヒラヤーチー』を作っていただいた。
「出汁に塩と溶き卵を入れ、小麦粉を入れます」。
「天ぷらの衣よりもやわらかい感じですね。そこにニラ、ガリ、生モズクを加えて混ぜます」。
「油をひいたフライパンに流し込み、強火で表面をカリッと焼きます」。
「弱火で何度か裏返した後、最後は指でさわって焼き加減(生地のかたさ)を確認して焼き上がり」。
「食べやすくカットした後、特製ソースをかけ、カツオ節をふりかけてできあがりです」。
「『ヒラヤーチー』のベースはやはり小麦粉。具材について特にきまりはないですし、加えると美味しい具材もいろいろありますが、欠かせない基本の具材はニラではないでしょうか?」。
モズク入りなのでもちもちふわふわとした食感で、その中にニラとガリの風味が広がる。甘味と酸味を持つ特製ソースでさらに箸がすすむ。
「うちの店は8割が地元の方ですが、『ヒラヤーチー』はよく食べられますね。初めに注文される方が多いようです。県外の方は、『今までに食べたことがない料理です』と言ってくださいますね。ただ、『ヒラヤーチー』は身近すぎる料理なのか、若い料理人に『作ってみて』と言うと、『どんなふうに作るんですか』と言われることも多いのです。大切な沖縄の味ですから、作り方をしっかりと伝えることも必要だと感じています」。
『味心 ゆうづき』の他、那覇市の『夕月久米店』、浦添市の『幸福(ハピネス)』と全3店を切り盛りする知念さん。しかし、いまだコンテストへの出場は続けられているとのこと。
「コンテストに出ると、まわりはずっと年上の方ばかりで自分なんかはまだ若い方なんですよ。とても刺激を受けますね。ですから、ずっと挑戦を続けていきたいと思っています。そして、これからの料理人たちにも挑戦する気持ちを持ってもらいたいと思っています」。
ベースは小麦粉で、出汁、塩、卵、ニラが基本的な材料だ。※今回取材した『もずくヒラヤーチー』には生モズクが加わる
出汁に塩、溶き卵、小麦粉を合わせる。ニラ、ガリ、生モズクを加えて混ぜ、フライパンで強火で焼く。裏返したら弱火で焼く
表面に甘味と酸味がある特製ソースがかけられる。特製ソースとふりかけられたカツオ節が生地の味わいを引き立てる
日本料理店で修行し、数々の料理コンテストで受賞歴を持つ店主・知念司さん。チャンプルーなどの沖縄料理に加え、「沖縄の素材で日本料理を極めたいと思っています」と、味付けも盛付けも洗練された懐石料理(要予約)も食べられる。基本的な『ヒラヤーチー』の他、モズク入り、キムチ入りといった『ヒラヤーチー』もメニューに並ぶ。