スープのベースとなる材料は鶏ガラ、豚骨が基本的。スープはその日に作ったものはその日のうちに使う。サッパリした味の所以だ
肉、魚介類、野菜類、中国野菜など、各店がバランスを考え工夫を凝らす。ゆで卵を揚げる『揚げ卵』は太平燕には欠かせない一品
初めに肉類や魚介類、次に野菜類を炒める。大きな火力で短時間に炒めるて作るのが美味しさの秘訣のようだ
「手が二本には見えないくらいの早さで料理してると思いますよ(笑)」。
それを教えていただいた上で横にいたのだが、すべてを正確に把握するのは難しい。
タケノコ、豆腐干絲(とうふがんすー/豆腐の加工品で水分を切ってほしたもの)、エビ、イカ、キクラゲ、ニラ、金針菜、白菜、タマネギ…といった具材がどのような順番で鍋に入るのかが1度では確認できなかった。そして、あっという間に揚げ玉子がのせられて完成。厨房に立つ薛博之さんの動きはそれほど早かった。
ではもう一度順をおって…。
中華鍋でまず炒められるのはタマネギ、白菜。次に酒、スープが入りエビ、イカ、キクラゲなどの細切り野菜が入る。そこに春雨を入れて塩と薄口醤油で味付け。先に春雨を器にあげてニラとキクラゲを投入。器にスープを入れ、具材を高く盛りつけ揚げ卵をのせて完成。
「とにかく調理のスピードを早く。遅いとスープが煮詰まってしまいますし、火が弱いと全体がべちゃべちゃになってしまいます。野菜を素早く炒めることによって水っぽくならないように水分をとばすんです。水っぽいのとあっさりというのは違いますからね。春雨にはスープの旨味をしみ込ませて下味をつけますが、あまり煮込むとのびるので、先に出して器に盛ります」。
これが昭和8年の創業以来変わらない、わずか数分で完成する太平燕の手順だ。
もちろん、調理以前の下準備も変わらない。
「大事なのはスープですね。寸胴鍋に水と鶏ガラを入れてネギ、ショウガ、タマネギなどをいれ沸騰したらきれいにアクをとり、圧力をかけて空気が中に入らないようにして煮込みます。3~4時間かけて毎朝作っていますが、もし余れば処分するしかありません。スープは生き物ですから。食べる時に全体が一体化して食べやすいようにするため、すべての食材は細切りです。白菜はスープの味をしみこみやすくするめためにも細切りにしていますが、スープにまろやかさを与えますね。それから太平燕に欠かせない揚げ卵は、ゆでてから200度以上の高温で素早く揚げます。薄く衣をつけているのですが…秘密です(笑)」。
こちらの春雨はサツマイモでんぷんとジャガイモでんぷんを使って作られたもので、独特のコシと喉越しを持つ。長さ30cmほどに切りそろえることで食べやすくしてあり、ほどよくスープの旨味が染み込んでいて旨い。
「太平燕は、あっさりしたうどん・そばと、濃厚なラーメン・チャンポンの中間くらいに位置するのでしょうか。おなかが重くならないので飲んだ後でも美味しいですよ」。
開業以来、日本人の口に合うやさしい味わいを提供している『会楽園』。
「うちの料理は、ベースで近いのは広東、上海ですが、地元の食材を生かしつつ、中国料理の技法を使っているだけ。だから、言うなれば“熊本風”なのです」。
毎朝約4時間をかけて作るスープは、鶏ガラをショウガ、ネギなどの香味野菜とともに煮込んだもの。アクをしっかりと取り除くことで、スッキリとした味わいにしている
タケノコ、豆腐干絲(とうふがんすー)エビ、イカ、キクラゲ、ニラ、金針菜、白菜、タマネギ。これに揚げ卵がのる。キャベツを使う店も多い中、白菜を使うのが特徴的だ
具材は強い炎で一気に炒める。スープを入れ、春雨を入れて一煮立ち。春雨はやわらかくなりすぎないように、先に鍋から出して器に入れられる
昭和8年の開店以来、日本人の口に合うやさしい味わいを作り続ける中国料理店。『太平燕』に入る具材は10種類。サツマイモとジャガイモのデンプンを使った春雨は、独特のコシを持つ。毎日その日に使う分だけ作る鶏ガラスープは深い風味がありつつもあっさり。具材に白菜が加わることによって、よりまるくやわらかに