阿蘇の草原が育てたあか牛
濃厚な赤身肉の旨味を丼で
緑の草原が広がる阿蘇で、放牧されている褐色の牛を目にすることがある。この牛は正式には褐毛和種(あかげわしゅ)という種類の和牛で、熊本では『あか牛』と呼ばれることが多い。あか牛の放牧は、春に行なわれる野焼きとともに阿蘇の草原を守る役目も担っているそうだ。古くは農耕牛だったが、品種改良も進み、今では食肉用として飼育されるようになった。あか牛の肉質は脂肪分が少なく赤身が多いことが特徴。やわらかく、肉本来の旨味を楽しむことができる。あか牛の美味しさを伝えようと生まれた料理が『あか牛丼』だ。
丼にごはんを盛り(この後、タレをかけることもある)、水菜などの野菜をのせる。そこに、醤油ベースの特製タレをからめてレアな状態に焼き上げた肉(モモ肉が使われることが多い)をスライスして円を描くように並べる。温泉玉子をのせ、ワサビや肉味噌などを添えればできあがりだ。当初、肉ののせ方と温泉玉子は阿蘇山を上から見た様子、わさびは米塚(こめづか/草千里の近くにある円錐形の山)をイメージしていたのだそうだ。肉を口にすると濃厚な旨味が広がるが、やわらかくさっぱりしているのでスルリとお腹におさまっていく。肉だけ、肉にわさびをつけて、温泉玉子を割って…一杯で様々な味が楽しめる。
褐毛和種には熊本系と高知系があり、その起源は韓牛(朝鮮半島で飼育される牛)といわれている。熊本県では阿蘇地方を中心に飼養されており、全国のあか牛の95%以上は熊本産。暑さにも寒さにも強く、性格もおとなしいため、放牧に適した牛だ。余分な脂肪分が少なくやわらかい肉は、必須アミノ酸をバランスよく含み、ヘルシーな肉として注目されている。
あか牛の特徴は、赤身肉の美味しさ。『あか牛丼』には、それがより楽しめるモモ肉が使われることが多いようだ
ごはんだけにかけるタレ、肉にからめるタレと、各店が工夫を凝らしているが、肉の旨味を引き立てることを大事にしている
水菜などの野菜をのせたごはんの上に、特製タレをからめてレアな状態に焼き上げた肉を並べ、温泉玉子をのせる。ワサビなどを添えできあがり
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