九州の味とともに 春

長崎 ゴーレン

少し甘めの下味をつけて揚げる
唐揚げの原型となった鷄肉料理

『ゴーレン』は唐揚げの原型になったと言われる料理。不思議な響きの名前の由来は、ポルトガル語で鶏を意味する“ガリーニャ”からという説、インドネシア語で焼く・揚げるを意味する“ゴーレン”からという説(かつてインドネシアはオランダの植民地であったため、オランダ経由でインドネシア語が長崎に伝わったという説)があるが定かではない。 鶏肉を使ったものがよく知られているが、魚を使った『ゴーレン』もあるようだ。家庭で作られることはあまりないようだが、予約すれば作ってくれる店、卓袱しっぽく料理の一品として食べられる店がある。

鶏の『ゴーレン』は、鶏モモ肉を酒、醤油、砂糖、ショウガ、ネギなどを合わせたタレに漬け、片栗粉や薄力粉をまぶして揚げる。鶏モモ肉に味が染み込むことで焦げやすくなるので、天ぷらや唐揚げを作る時よりも低い温度の油でじっくりと揚げる。これが唐揚げの調理法とは異なる、『ゴーレン』の特徴だ。鶏モモ肉をあらかじめブツ切りにして料理するのではなく、1枚のままでタレに漬け込み、揚げた後に食べやすい大きさに切って盛りつける料理法も伝わっている。

表面はサクッと軽く、鶏モモ肉はしっとり。ショウガやネギの香りや醤油の味わいとともに甘味が感じられ、一般的な鶏の唐揚げとはひと味違う味わいだ。

卓袱(しっぽく)料理について

鎖国時代、海外と交易のあった長崎で生まれた。オランダ、ポルトガル、中国の料理をベースに、材料や味を和風にアレンジした料理で、朱塗りの円卓を数人で囲んで食べる。『お鰭(ひれ)』と呼ばれる鯛の吸い物から始まり、その後は大皿に盛られた料理を直箸(じかばし)で取り分けて食べるのがそのスタイル。『豚の角煮』をはじめ、『ハトシ』、『ヒカド』など独特な料理も多い。揚げ物料理の一品として『ゴーレン』が提供されることもある。

「ゴーレン」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
タレ

酒、醤油、砂糖、おろしショウガ、ネギなどを合わせる。昔は今よりも砂糖の分量が多く、より甘めの味わいだったようだ

鶏肉と下ごしらえ

やわらかな鶏モモ肉を使い、タレに漬け込んでおく。鶏モモ肉一枚を漬け込む方法と、漬け込む前に肉を切っておく料理法がある

揚げ方

片栗粉や小麦粉をまぶし油で揚げる。やや低めの温度にした油で時間をかけて揚げるのが唐揚げとは異なるところだ

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