粘土質の赤土と清らかな水が育てる
エグミが少なく甘味のあるたけのこ
九州自動車道小倉南ICから車で5分ほど西へ走り、福岡県の合馬(おうま)地区に入ると、竹林が広がっている。この竹林に育つたけのこが、全国的にも知られる『合馬のたけのこ』だ。合馬地区の竹林の土壌は、粘土質の赤土。たけのこの種類は、食用としてよく知られている『孟宗竹』だが、この土で濾過される清らかな水が、やわらかくてエグミ(アク)の少ない、良質なたけのこを育てる。掘り立ての新鮮なたけのこは、そのまま生でも食べられると言われているほどだ。特に良い土壌で育ち、品質の高い『白子(しらこ)』と呼ばれるものもある。
軽く下茹でした後、刺身、煮物、焼き物、天ぷら、しゃぶしゃぶ、たけのこ御飯など、様々な料理にして楽しむことができる。どの料理でも、ふくよかな香り、やわらかだが歯応えのある食感、独特の甘味を感じることができる。中でも、下茹でして皮ごと焼いた『焼きたけのこ』は香ばしさも加わり、たけのこの旨味がより引き立つ。
『合馬のたけのこ』の収穫が始まるのは毎年12月からだが、とれはじめの頃は、とても高価な食材だ。2月下旬からゴールデンウィークくらいまでの旬の時期には、比較的手に入りやすくなるので、この時期には、たけのこづくしのコース料理を食べられる店もある。
『合馬のたけのこ』生産者の立石望(たていしのぞむ)さんに、たけのこが育つ山に案内していただき、お話をうかがった。
●合馬のたけのこの種類
「合馬で育っているたけのこは、『孟宗竹』という種類です。海を渡って鹿児島に伝わり、そこから日本中に広まったと言われていますね」。
●竹林の管理
「竹は長さも太さも1年で成長が止まります。その後は内部の繊維が変化していくのです。年数が経つと硬くなっていきますね。たけのこは、地中に伸びる竹の根から生えてくるのですが、2年目、4年目というのはたけのこがあまりできません。3年目、5年目がよく採れるわけです。しかし、5年を過ぎると生えてくるたけのこは減ってしまうのです。ですから、5年目にたけのこの収穫をしたら、その竹は根元から切って間引きします。切った竹の葉は、地面に撒くことで肥料になりますね。そして、竹は乾燥に弱く、また、水が多すぎても良くないのです。毎年8月のお盆過ぎから9月中旬にかけて根が伸び、たけのこの元となる『芽子(がし)』が生えます。この時には水が必要です。私は、雨水を貯める仕組みを作っていまして、雨が少ない時は水やりをしていますね」。
●合馬の土壌
「合馬の土は粘土質の赤土です。この土壌で良いたけのこが育ちます。通常の土壌だと土の中に空気があるのですが、粘土質だとあまり空気が含まれていません。そのため、たけのこの皮の表面にあるうぶ毛も薄く、エグミが少なくてやわらかいたけのこができるんです。同じ合馬の赤土でもいろいろな性質の土があって、それによってたけのこにも個性が生じます。もっともきめの細かい粘土質で育ったたけのこは『白子』と呼ばれ、貴重なものです。名前のとおり、色も白いですね。女性の方がされる美容のための泥パックみたいなものかもしれませんね(笑)」。
●掘り方
「たけのこの一番先端はトンボと呼んでいますが、それが土の表面から出たものはB級品扱いになってしまうのです。先端が土の中にあるうちに見つけて、掘り出さないといけません。
見つけ方ですが、土の表面が少しだけ盛り上がっている部分を探したり、『ひわれ』と呼ぶひび割れを探したりするのです。私は幼稚園の頃から掘っていますが、一般の方には簡単にはわからないでしょうね。見つけたら、両サイドの土を取り除きます。
掘る道具は細いクワのような『ツルバシ』という道具を使います。柄の部分は自分で作りますし、鍛冶屋さんに注文した特製ですね。
トンボが見えたら、その方向でたけのこが根からどう生えているのかがわかるので、ツルバシで根元の部分を切るんです。
収穫したら色が変わらないように、光にも風にも当てないようにしておきます。掘り立てのイメージで出荷するのを心がけていますよ。たけのこ掘りは、はしりのものを12月に2〜3回掘り、年が明けた後は5月の初めまで掘ります。『合馬のたけのこ』はとてもやわらかくて美味しいたけのこ。いのししもそれをよく知っているので、先にとられることもあって、困ってますね(笑)」。
採れたてのものを皮つきのまま下茹でする。普通のたけのこと違いアクが少ないので、茹でる時間も短くすることが多い
下ゆでしたたけのこを皮付きのまま切って焼く。表面が香ばしくなり、『合馬のたけのこ』の甘味をより感じることができる
各店は、「『合馬のたけのこ』をそのまま味わっていただきたい」と、甘味や旨味を引き出す工夫を凝らした料理を提供している
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