九州の味とともに 春

長崎 地獄炊き

鉄鍋の中で輝く熱々の五島うどんを
コクがあるアゴ出汁ベースのつゆで

触れると火傷しそうな熱い鉄鍋の中で輝く、細く白いうどん。『地獄炊き』は乾麺の『五島うどん』をゆで、アゴ(トビウオ)出汁をベースにしたつゆにつけたり、卵と生醤油を合わせて食べる五島の郷土料理。讃岐うどん、稲庭(いなにわ)うどんと並び、日本三大うどんとも言われる『五島うどん』の味わいが一番よくわかる食べ方だ。名前の由来には、ぐつぐつ煮立っている様が地獄のようだからとか、“至極美味しい”の“至極”が訛ったからといった諸説がある。

遣唐使の寄港地であった五島列島。『五島うどん』は、大陸から伝わってきた麺文化に端を発したものと言われている。その中心は上五島で、今も大小30軒以上の製麺所が存在する。うどん作りに欠かせないきれいな水、麺の乾燥に必要な風、打ち粉の代わりに使う特産の椿油…五島の自然から生まれ、古来から伝わる手延べうどんは、独特の風味を持つ。また、細くてコシが強く、煮くずれしにくい。『地獄炊き』を最後まで美味しくいただくことができる所以だ。

熱々にゆでられた麺をつゆの中にくぐらせて口の中へ。モチモチとした食感と、喉越しの良さに箸もすすむ。飲んだ後の締めにもぴったりの一品だ。

五島うどん

■五島うどんの歴史

小麦粉を使った麺文化は、3世紀頃には中国に存在していたと言われている。

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それが遣唐使の時代(630年〜894年)に日本に伝わったようだ。当時、五島は中国大陸と日本の中継地であった。五島に伝わったうどんは、特産品である椿油などを使い、独特のうどんへと進化していった。現在、上五島だけで今も30軒以上の製麺所がある

■五島うどんの作り方

昔ながらの製法は以下のようなものだ。
01)小麦粉、五島の塩、水を混ぜてこねる
02)生地を足踏みして練りあげ熟成させる
03)円盤状の生地の外側から渦巻きのように包丁で切り、1本の長いロープのようにする。桶の中に渦巻き状に置いていく
04)椿油を塗りながら、ロープ状の生地を細く均一にする。これを繰り返して、始めは直径約4cmだったものを直径約1cmにする
05)ひも状の生地を2本の竹筒に八の字にかけていく
06)少し寝かせたあと、片方の竹筒を踏んで固定し、もう一方の竹筒を引き上げて長さを40〜50cmまで伸ばす
07)熟成させた後、さらに伸ばして長さ約1.5mにして、『ハタ』と呼ばれるものに竹筒をかけて固定する
08)外で乾燥させる。季節や風向きによって微妙な調整が必要
09)麺を均等な長さに切る
10)束ねる

現在は生地づくりなど、機械化されている部分もあるが、水分量の調整、乾燥の時間調整など、昔と変わらない“技”も必要だ。

うどんは段階を踏んでより長く細くなっていく。『ますだ製麺』にて撮影
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「地獄炊き」、三様。

三人の料理人が語る、それぞれのこだわりとは

この料理の"味のキーワード"
五島うどん

上五島には30軒以上の『五島うどん』製麺所があり、素材や製法が少しずつ異なる。各店がセレクトした『五島うどん』を使っている

炊き方

『五島うどん』を熱湯を張った鉄鍋に入れて炊く。鉄鍋のまま提供され、さらに炊きながら食べるスタイルの店もある

つゆ

アゴ(トビウオ)出汁をベースにしたつゆにつける食べ方と、卵と生醤油を合わせたものをからめる食べ方がよく知られている

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