奄美で人々が集まる時に欠かせない
油と出汁が融和したそうめん料理
『油ぞうめん』は奄美大島をはじめ、奄美諸島に伝わる郷土料理。幾つかの具材とゆでたそうめんを炒めるという素朴な料理だ。一見、沖縄の『ソーメンチャンプルー』に似ているが、違うのは、ただ油で炒めるだけではなく、そこに出汁も加え炒め和えるということ。出汁と油が乳化(※)して一体化しているので、そうめんの食感もよくなるのだ。徳之島では『アンバーソーメン』、沖永良部島では『アゲソーメン』とも呼ばれている。
フライパンに水をはってイリコで出汁をとり、そこに油を入れてそうめんとニラを加え炒め和えるというのが最もシンプルな形。イリコもそのまま具材になるというわけだ。その他、キャベツやニンジンを入れたり、フル(茎ニンニク)、マコモ(朝鮮タケノコ)といった奄美大島ならではの野菜もよく使われているようだ。また、イリコ以外でもキビナゴや鶏スープを使った出汁で作ることもある。
『油ぞうめん』は、かつては明治時代に農作業時の間食として食べられていたという。今は、毎年旧暦の8月に行なわれる収穫祭『八月踊り』をはじめ、祝い事、屋根の葺き替え、田植え、稲刈りなど奄美大島で人が集まる時には欠かせない。奄美の人々の語らいとにぎわいがある場所に寄り添う料理だ。
※乳化/水と油が混ざりあっている状態。乳化していない状態だと、
麺がぱさついたり、油っぽくなることもある。ペペロンチーノを作る時に
パスタのゆで汁を入れるのも乳化させるため。
奄美では、9月中旬〜旧暦の8月〜を新年としている暦があり、この時期に神に豊作を感謝、祈願している。そこで唄われ踊られるのが『八月踊り』だ。集落ごとに10〜40の唄があり、振り付けには、神迎え(かみむかえ)、感謝、農耕などが表現されている。
『八月踊り』の時にも大量に作られるのが『油ぞうめん』。大皿に山盛りに盛られた『油ぞうめん』を、箸で器用に巻いて、人々の口めがけて投げ込むようにして食べさせる風景を見ることができるのだそうだ。
尚、沖永良部島と与論島は沖縄の影響が強く『八月踊り』の習慣はないとのこと。
イリコとニラが最も基本的な具材。キャベツやニンジンを入れたりもするし、奄美ならではの野菜を使うこともある
具材の一つにもなるイリコで出汁をとることが多いが、キビナゴを使うことも。鶏スープなどを使う店もある
フライパンに水をはってイリコで出汁をとり、そこに油を入れてそうめんとニラを加え、炒め和えるのが最もシンプルな作り方
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