新鮮なカツオと甘口醤油から生まれる
日南で親しまれているカツオ料理
油津港をはじめ自然の地形を生かした天然の港が点在する宮崎南東部の日南海岸。古くは平安時代から栄えていたと言われており、地元の方々はずっと昔からカツオやマグロをはじめ、新鮮な魚介の味に親しんでいる。カツオと言えばすぐに高知県が頭に浮かぶが、実は宮崎県日南市は一本釣りカツオの水揚げ高が日本一の街でもある。刺身はもちろんのこと、一手間加えた『鰹のタタキ』は代表的なカツオ料理。他にも、元々は地元の漁師たちが食べていた『カツオめし』という郷土料理もあるほどだ。
新鮮なカツオをさばき、4つに分けた身を皮のほうから炙る。皮に焦げ目がついたところで全体を焼き、氷水でしめた後に切る。タマネギ、ニンニク、ネギなどの薬味と一緒に醤油や柑橘類の絞り汁などを合わせたタレでいただく。香ばしさの中でカツオの身がとろけるようだ。タレには、日南で好まれる甘口の醤油が欠かせない。
獲れたての新鮮なカツオと、日南独特の甘口醤油があってこそできあがる“日南の”鰹のタタキ。この街に来なければ食べられない味だ。そして、春は上りカツオが日向灘を北上する季節。より脂がのったカツオが食べられる季節…。
日南市の中心的な港。日向灘(ひゅうがなだ)で一本釣りされたカツオの多くもこの港に水揚げされる。上りカツオが日向灘を北上するピークが4~5月。この時期のカツオが最も脂がのって美味しいと言われている
日南の漁師料理。ヅケにしたカツオの刺身をアツアツのごはんにのせ、大葉、きざみ海苔などの薬味を加える。そこに熱い出汁をかけてお茶漬け風にいただく
日南市には7軒の醤油蔵があり、中でも大堂津(おおどうつ)エリアには5軒の醤油蔵が集中している。
大堂津で80年ほど前から『マルタニしょうゆ』を作り続けている谷口醸造の谷口忠彦さんにお話をうかがった。
「九州の南、さらに海岸線は甘口の醤油が好まれているようです。漁師が刺身を海水で洗って食べるから、醤油が甘口になったとも言われていますね。南九州は焼酎文化圏だから焼酎に合う味わいということで甘口になったのかもしれません」。
南九州の中でも、日南界隈はさらに甘口の醤油が好まれるのだそうだ。「50年ほど前に私の親父が作ったのが『太陽』という名前の醤油。これも甘口だったのですが、お客さんの『もっと甘く』という要望に合わせて、だんだん甘くなっていきました。初めが『太陽』だったので、『水星』『金星』『土星』ときて、『宇宙』まで作ったのですが、“もっと”ということで、宇宙から飛び出して『新世界』まで作ってしまいました。私たちが作っている中で、一番甘くて濃厚な醤油です。もっと甘いものもできるようにがんばります(笑)」。
下処理をした後、強い火で一気に焼きあげるが、カツオは火を通し過ぎると身が固くなってしまうので、どのくらい炙るかは重要
日南で好まれている甘口醤油が欠かせない。その他、酢や柑橘類の絞り汁など酸味がある材料も加えられる
タマネギ、ネギ、ニンニク、ショウガなどが一般的。刺身風に盛ったり、豪快に大皿に盛ったりされるが、総じて量はたっぷり
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