滋味満点のスープと喉越しのいい春雨
熊本で生まれ根付いた“中国料理”
語源は中国福健省福州の料理『太平燕』から。明治時代に九州に渡ってきた福建華僑が熊本にも訪れて作り始めたのが最初だと考えられている。福州の『太平燕』は、アヒルの卵が入ったスープワンタンのようなものなのだが、熊本県で作られ始められたものは、素材の都合もあったのか、本来のものとはずい分と違う形となった。
鶏ガラ、豚骨などをベースにしたスープを使い、野菜や魚介類などの具材がたっぷりと入るところはチャンポンに似ているが、揚げ卵(ゆで卵を揚げたもの)が上にのっているのが特徴。そして何より、中華麺の代わりに春雨が使われているのだ。コシがあってツルツルとした喉越しのいい春雨には、具材の旨味が凝縮したスープがほどよく染み込んでいる。栄養満点でカロリーが低いことでも注目されている一品だ。
中国福健省などでは、『天下太平な宴』という意味も持ち、お祝いの席などでよく食べられている『太平燕』。熊本の『太平燕』は味も形も異なるものに変化したが、皆で一緒に食べられるのは“天下太平”であればこそ。熊本県では、給食に出されるほど親しまれており、誰もが知っている郷土料理だ。
緑豆、サツマイモ、ジャガイモなどのデンプンを熱湯で練ったものに、デンプンと湯を入れつつ練り上げ、細い穴を通して熱湯の中へ。凍結させ、さらに乾燥させて作る。デンプンの素となる材料を何にするかで、春雨の味わいは異なる。太平燕には緑豆春雨を使うことが多いようだ。
『太平燕』は熊本市、宇土市、宇城市などの地域で小学校・中学校の学校給食の定番メニューでもある。野菜がたっぷり入っていること、春雨を使うことで低カロリーであることが給食にも出される理由であろう。
スープのベースとなる材料は鶏ガラ、豚骨が基本的。スープはその日に作ったものはその日のうちに使う。サッパリした味の所以だ
肉、魚介類、野菜類、中国野菜など、各店がバランスを考え工夫を凝らす。ゆで卵を揚げる『揚げ卵』は太平燕には欠かせない一品
初めに肉類や魚介類、次に野菜類を炒める。大きな火力で短時間に炒めるて作るのが美味しさの秘訣のようだ