一口で食す小さな包みの中にあるのは歴史、技、工夫、店主の想い…
博多の餃子の歴史は、1940年代後半あたりから屋台などが餃子を出すところから始まったと言われている。その大きさが一口サイズだったことから、餃子を愛する客たちの間で、いつの頃からか『一口餃子』と呼ばれるようになった。やがてメニューに『一口餃子』と掲げる店も現れた。
『一口餃子』の定義は“一口で食べられるサイズ”という大きさのみ。ただ、皮が薄いものが多いこと、薬味として柚子こしょうを置いている店が多いことは、特徴としてあげられるだろう。
現在、福岡に『一口餃子』を出す店は新旧含めて多数あるが、各店、材料も作り方も焼き方も味もタレも千差万別。老舗は昔から続く味を守り、新顔はその味を研究して負けないように工夫を凝らす。小さな一包みには各店の想いも包み込まれている。
一口で食べることにより、皮と包まれているタネが一体となった味わいを楽しむことができる。パリっと香ばしく口の中でとろけてしまうような皮と、肉と野菜の旨味がつまったタネのハーモニーに食もすすむ。『博多一口餃子』のもう一つの特徴…それは、その旨さから、軽く3人前ほどは食べてしまえること。
博多での屋台の始まりは1941年と言われている。戦後、庶民の気軽な飲処&食事処として増え、昭和40年代の最盛期には400軒以上の屋台が軒をつらねていた。間口3m、奥行き2.5mの空間は10人ほどで満席になる。ラーメン、焼鳥、おでんなどに加えて、フレンチや沖縄料理などの屋台も。一口餃子を出す屋台も多く、中には餃子専門屋台もある。福岡市中心部では、中洲の那珂川沿い、天神渡辺通り沿いなど幾つかの屋台エリアが点在。
かつては九州の山間部の家庭で作られていた調味料。華やかな柚子の香りとピリリと舌を刺激する辛さが料理をより味わい深くする。柚子の皮、こしょう(唐辛子)、塩をすり混ぜて作られる。柚子や唐辛子の収穫の時期、分量、すり混ぜ方などで味わいが異なる。餃子の薬味の他、みそ汁、だご汁などに入れてよく食べられている。
皮は小麦粉をこねて切り分け、1つずつ丸くのばしている店が多い。タネに入る具材はタマネギと豚肉が一番基本的なものだ
火力、水加減、仕上げの油を入れるタイミング他、店によって千差万別。共通しているのは、水を入れ蓋をして焼くということ
酢と醤油をベースにしたタレに、柚子こしょうが添えられるのが一般的。ラー油などを置いている店もある