材料は牛挽肉が基本だが、豚挽肉や鷄挽肉が使われることや、タマネギなどが加わることもある。炒めて各店独自の味付けを行なう
タコミート以外でよく使われる具材はレタス、トマト、チェダーチーズ。キャベツを使ったり特製チーズを使う店もある
トマトベースでピリッと辛いサルサソースは各店が工夫を凝らしている。ケチャップが添えられることもある
かつてコザと呼ばれていた沖縄市のパークアベニューの一角。1956年、嘉手納基地に近く異国情緒あふれるこの街で『チャーリー多幸寿(たこす)』は創業した。街の中で何度か移転を行ない、1975年から現在の店舗で営業。入口にあるネオン管『沖縄の味 チャーリー多幸寿』の光も、レトロ感を感じる店内の雰囲気も味わい深い。
「かつて私の父親はAサインレストラン(沖縄がアメリカ軍統治下だった時代のアメリカ軍公認の飲食店)を営んでいましたが、その時からオリジナルのタコスを提供して、人気だったのです。初めはステーキなど様々なメニューがありましたが、段々とタコスに特化していきました」と語るのは二代目となる店主・勝田祥徳(かつた よしのり)さん。今も手作りでその味を守り続けている。
自慢のタコスはビーフ、チキン、ツナの3種類。レタス、トマト、チーズとともにシェル(皮)ではさむのだが、このシェルが特徴的だ。
「沖縄に伝わったのはメキシコのタコスがアメリカ風になったもの。それをさらに日本人が食べやすいようにアレンジしたのが私たちのタコスですね。シェルは小麦粉だけでなく大麦も使い食物繊維が豊富。表面はパリッと香ばしく中はしっとりと仕上げています。チーズはチェダーチーズとナチュラルチーズの2種類ですね。タコスの基本となるタコミートは牛肉100%。タマネギを少し加えて、塩コショウとスパイスで炒めたものです。チキンとツナがあるのは、この街で暮らす方は多国籍なため、宗教上の理由で食べられないものもあるからです。タコスは手軽に穀物、乳製品、肉類が食べられるので、身体にもいい料理だと思いますよ」。
1個あたりのボリュームもあるタコスはもっちりとしたシェルが他にはない味わい。沖縄の島とうがらしを使ったスパイシーソースとともに食べると刺激的な味わいも楽しめる。
60年以上に渡って愛されるタコスを勝田さんも小さい頃から食べていたのだろうか?
「子どもの頃はタコスはあまり食べられなかったんですよ。先にシェルが売切れてしまって。それでごはんの上にタコミートをのせて食べたりしていたんです。1965年頃からスタッフのまかないとしても食べられていたようです。『チャーリーライス』としてメニューにのせるようになったのは1985年くらいからですね」。
『チャーリーライス』を注文する時はソースとサイズを選択する。
「ソースはタコスにも添えるスパイシーソースと、パプリカをつかったマイルドソース、その2つをミックスしたものの3種です。サイズはスモール・レギュラー・ビッグですね」。
ソースはミックスでサイズはレギュラーを注文。作り方を見せていただいた。お皿にごはんをついで形を整え、スパイシーソースとマイルドソースをたっぷりとかける。タコミートをのせ、その上に2種類のチーズをのせる。レタスとトマトを横に添えてドレッシングをかけてできあがり。
一般的にイメージするタコライスとは少し違うようだ。勝田さん曰く、「『チャーリーライス』ですから(笑)」。
メニューには『タコライス』とは書かれていない。『チャーリーライス(チャーリーズタコライス)』なのだ。
ソースたっぷりでカレーにも似た雰囲気。スパイシーなタコミート、ごはん、チーズにマイルドソースの甘みとスパイシーソースの刺激がよく合う。
「混ぜて食べていただくのもいいですが、肉とごはんとか肉とチーズとごはんとか、1皿の中でもいろんな組み合わせで食べられるので、混ぜずに食べていただくと、一口ごとに味が変わって美味しいですよ。そうそう、コーラを飲みながら食べる方も多いですね。コーラと合う不思議なごはんメニューですね(笑)」。
『チャーリー多幸寿』の味は、那覇市中心部の国際通りにある支店でも食べられる。
お店の天井にあるステンドグラスには、“創業昭和31年 味あり ボリュームあり”の文字が書かれている。勝田さん親子のずっと変わらない想いだ。
「これからも美味しくて安心して食べられるものを提供していきたいと思っています。タコスも『チャーリーライス』もしっかりと作っていけるようがんばります!」。
タコミートは牛肉100%。タマネギを少し加えて、さらに塩コショウとスパイスを加え、炒めて作り上げる
ナチュラルチーズとチェダーチーズの2種類のチーズ、レタス、トマトが使われる。レタスとトマトは横に添えられるスタイルだ
タコスにも添える島とうがらしを使ったスパイシーソース、パプリカを使ったマイルドソース、2つをミックスしたものの3種から選べる
表面はパリッと香ばしく中はしっとりした特製のシェル(皮)を使ったタコスは半世紀以上愛され続けている。1985年頃にスタートした『チャーリーライス(タコライス)』は、ビーフ100%のタコミート、チェダーとナチュラル2種のチーズ、島とうがらしを使うスパイシーソースやパプリカを使ったマイルドソースをたっぷりかけるなど独特のスタイル。