ちゃんぽんや太麺皿うどんにも使う、鶏ガラスープとトンコツスープをブレンドしたスープを使う店が多い
キャベツ、モヤシなどの野菜に豚肉と魚介類が入る。夏場はアサリ、冬場はカキを入れる店が多い。タマネギは好みが分かれる具材だ
具材を炒め、スープを入れ、味を整えて最後にとろみをつけるが、スープを入れるタイミングなどは各店で異なる
昭和2年創業の『会楽園』。2代目で現代表の林照雄さんに皿うどん(細麺)の話をうかがった。
「長崎の皿うどんは、麺が独特です。麺は小麦粉、水、唐灰汁(とうあく)でできています。これは長崎のちゃんぽんの麺も同じです。唐灰汁は、炭酸カルシウム90%、炭酸カリウム10%で、通常の麺に入れられるかんすいとは逆の比率になってますね。色付けと風味付けのために入れるものです。唐灰汁を使った麺が作れるのは長崎だけなんですよ。材料をこね、細くして蒸したものが皿うどん用の生麺です。その日に使う分だけ、180度くらいの油で一気に揚げます。揚げてから少し時間を置いたほうがパリパリになるようですね」。
皿うどんのベースとなるスープと具材は、皿うどんもちゃんぽんも同じものだ。
「具材は、はんぺん、ちくわ、豚肉、イカ、アサリ(冬場はカキ)、キクラゲ、ネギ、モヤシ、キャベツですね。はんぺんといってもおでんに入れるようなものではなくて、カマボコのことです。長崎だけの言い方ですね。スープはトンコツスープ30%と鶏ガラスープ70%をブレンドさせたものです。他の料理には、鶏ガラ100%のスープを使うので、このスープはちゃんぽんと皿うどん専用です」。
厨房にもおじゃまして、一気にできあがるところを見せていただいた。
「初めに皿の上で、揚げた麺の形を整えておきます。鍋に油をひき、キャベツとモヤシを入れた後、スープを入れ、味付けの砂糖と醤油を入れます。その他の具材を一気に入れて混ぜた後、先に野菜をあげます。ゆですぎるとしなっとなってしまうので野菜の食感を残すためです。ここで味見をして調整し、水溶き片栗粉を入れてとろみが出たあんを麺にかければできあがりです」。
強火で行なわれる調理はあっという間だ。
とろとろのあんとパリパリの麺。これぞ皿うどんならではの食感だ。砂糖も入っているのであんは甘い。
「うちのあんは甘口ですよ。トンポーローなどにもたくさん砂糖を使います。中華では隠し味に砂糖を使うものも多いですが、隠し味どころではないですね(笑)。ですが、これでも以前に比べれば砂糖の量は減ってます。かつておやじの代には、今の3倍の砂糖を入れていたんですよ。江戸時代、江戸では砂糖を金銭のかわりにもしていたし。長崎では砂糖を使う料理ができないとお嫁にいけないとも言われていました。砂糖はひとつのステイタスだったんですね。ですから、長崎の料理には砂糖をたくさん使います。和食も甘口ですね。ただ、時代によって味の好みは変わりますから、私たちの料理に入れる砂糖の量も減らしています。基本はしっかりとやりつつ、味は時代に合わせていかなければなりません。私は甘い皿うどんに、ソースをたっぷりかけて食べるのが好きなんですが(笑)」。
林さんも好きだというソース。あんが甘い味だからこそ、ソースは欠かせない。
「うちの好みの味を特注して作ってもらっている少し甘口のウスターソースです。よく合うでしょう?皿うどん専用です。20歳の頃、出前をしていたのですが、ソースはリポビタンDの空き瓶に入れて持っていってたんですよ(笑)。当時、皿うどんには1人前というのはなくて、2人前以上のものをみんなで分けて食べていました。いつの頃からか1人前のものを出すようになりました。しかし、皿うどんにかけるのが醤油じゃなくて、なぜソースだったのかは不思議ですね」。
そんな話をうかがいながら皿うどんを食べていると、麺はふにゃふにゃに…。
「あんをかけて数分すると麺はやわらかくなってしまいます。早めに食べないとパリパリ感はなくなりますね。ですが、年配の人はわざとやわらかくして食べたりもしています。家庭で作った時、その日に食べきれなかったものは次の日にフライパンで温めなおして食べても美味しいんですよ」。
ちゃんぽんと皿うどんがだんとつの人気だという会楽園のメニュー。林さんはこの2つのメニューをとても大切にしている。
「ちゃんぽんと皿うどんは私の命、一番大事な商品です。この2つが美味しくないと、会楽園ではなくなってしまうんです。ちゃんぽんと皿うどんが美味しいから、地元の方々も利用してくれている。だから料理人には、『心をこめて作れ』と毎日言っています。行列ができることもありますが、あわてずじっくり作れと、お客さんには私があやまりにいくからと、言ってます。お客さんから『会楽園のちゃんぽんと皿うどんは美味しい』と言われるのが一番うれしいことですから」。
トンコツスープ30%と鶏ガラスープ70%をブレンドさせたもの。他の料理には使わない、ちゃんぽんと皿うどん専用のスープだ
はんぺん(カマボコ)、ちくわ、豚肉、イカ、アサリ(冬場はカキ)、キクラゲ、ネギ、モヤシ、キャベツが使われる
初めにキャベツとモヤシ炒め、スープを入れた後、その他の具材を入れて煮込む。食感を残すため先に野菜を取り出し。最後にとろみをつける
長崎新地中華街の北門入口で赤い柱がひと際目をひく昭和2年創業の老舗中華料理店。ルーツは中国・福建省にあるが、中華と長崎の風土が融合した“長崎中華”を提供している。ちゃんぽん、皿うどん、トンポーローが地元の方にも愛され続けている看板メニュー。日祝日を除く14時までは、酢豚定食(800円)などの定食類も食べられる。
住所 | 長崎市新地町10-16 |
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電話 | 095-822-4261 |
営業 | 11:00〜OS15:15/17:00〜OS20:15 |
休み | 月2回不定 |
席 | 350席 |
カード | 可 |
駐車場 | なし |
URL | http://www.kairakuen.tv |