クチナシの実を割って水に浸けておき、黄色に染まった水を作る。煎じるという方法もあるようだ
研いだ米を黄色に染めた水に浸けて炊く。浸水時間が長すぎたり炊き方によっては緑色に炊きあがってしまうとのこと
大根、ゴボウなどの根菜類、豆腐、魚(エソがよく使われる)のすり身や焼いた身を炒め、醤油などの調味料と水を加えて炒め煮する
1995年に国宝となった『臼杵石仏』の入口に位置する、『石仏観光センター 郷膳うさ味』。石仏が広く知られるようになるずっと前からこの場所で、臼杵の産物と味覚の店として営業している。『黄飯』、『きらすまめし』、『茶台寿司』など、臼杵ならではの郷土料理を求めて、県外から訪れる観光客も多い。4代目の宇佐美裕之さんは、お母様の宇佐美朝代さん、スタッフのみなさんとともに、臼杵の味を守り、伝えている。
「『黄飯』を初めてご覧になるお客さんは、ごはんに黄色い色がついていることにびっくりされますし、喜んでくださいますね」と宇佐美さん。あざやかな黄色にするためには、米を浸けておく“黄色の水”の作り方にも炊き方にも細かな技があるとのこと。「うちではまずクチナシの実を煎じた液を作ります。それに水を足していい色味にしてから研いだ米を浸けておくのです。クチナシは自然のものですから、煎じた液の色合いは毎回違うので、いつも同じ量の水を加えるわけではないんですよ。目で見ていい感じになるように… “やまぶき色”になるようにしていますね。
米の浸水時間もいい感じになるように調整しています。炊き方も、炊飯器を使うのですが、急速炊飯で炊き上げています。そして、炊き上がったらすぐに全体を混ぜます。炊き方を間違えたり、すぐに混ぜなかったりすると、黄色ではなくて緑色になってしまいます。黄色は華やかで、食欲が増す色だと思うのですが、緑色になると食欲のわかない色になってしまうんですよ(笑)」。
続けて『かやく』の作り方も教えていただいた。「材料は大根、ゴボウ、ニンジン、豆腐、ネギ、カマガリを焼いてほぐしたものです。カマガリは臼杵でよく獲れる、鯛に似た上品な味わいの白身魚です。寒い時期にはやはり臼杵でよく獲れるエソを使っていますね。まずカマガリの身を炒め、次に豆腐、野菜を加えて炒めます。薄口醤油、酒、ミリンと水を加えて炒め煮すればできあがりです」。
できあがった『黄飯』と『かやく』をいただいた。クチナシの香りがほのかにする『黄飯』に、素朴な味わいの『かやく』がよく合う。臼杵で長く続く味わいだ。「クチナシは香りは少しありますが、味はあまりしません。『黄飯』はものすごく美味しいから食べるというものではないものですね。江戸時代に質素倹約の精神から生まれたとも、江戸時代より前の大友宗麟の時代にパエリアを真似して生まれたともいわれていますが、はっきりしたことはわかりません。しかし、臼杵では昔から食べられていた大切な料理。小豆が貴重な時代にお赤飯の代わりに食べられていて、以前は各家庭で作っていたんです。“やまぶき色”は華やかでめでたい色ですから。どこの家にもクチナシの木が1本はあって、その木になる実で『黄飯』を作っていたんですよ。うちの母屋の横にもありましたね。花がきれいで香りもいいんです。臼杵では成人式の時に新成人にクチナシの苗木を渡していたこともあったんですよ。そうそう、クチナシは漢方薬としても使われていて、二日酔いに効くと言われていますから、飲み過ぎた次の日に食べるといいかもしれません(笑)」。
お話をうかがいながら食べると、『黄飯』には臼杵の歴史が詰まっていることがわかり、より興味深くなる。『かやく』も同じだ。「『かやく』は『けんちん』とも言いますね。根菜を使っていますし『けんちん汁』に似ている部分もありますからね。『けんちん』は家庭料理で、臼杵では年末年始によく食べる料理でした。温めては食べるを繰り返すと、味が染みてどんどん美味しくなっていくんですよ。元々は『黄飯』の上に『かやく』をのせて食べるのですが、今では別々に食べる人もいますね(笑)。『黄飯』も『かやく』も臼杵の文化を継承している料理です。うちは郷土料理のお店ですから、ずっと作り続けていきたいですね」。こちらでは『だんご汁定食』、『とり天定食』などでも『黄飯』を食べることができる。予約すれば『だんご汁』や『とり天』が付く『黄飯定食』を食べられる(『かやく』も含め、料理の詳細については要確認)。
宇佐美さんは陶芸家でもあり、お店で使われている器は宇佐美さんの作品だ。中には2015年から復興を手がけている、輪花をモチーフにした『臼杵焼』の美しい白磁もある。「『臼杵焼』は途絶えていたものを調べ、なんとか復興させようとしているんです。これも臼杵の文化を継承させるためですね」。臼杵の豊かな自然を伝えることも宇佐美さんの願い。「春は桜、芝桜、夏は蓮、秋はコスモスや紅葉と一年を通じてきれいですよ」。7、8月は隣接する『古代蓮の里』に約1万本の蓮の花が咲き、蓮根や蓮の実を使った期間限定の蓮料理も提供している。
クチナシの実を煎じた液を作り、水を加えて“やまぶき色”の水にする。そこに研いだ米を浸けておく
急速炊飯で炊き上げ、炊き上がったらすぐに混ぜる。炊き方を間違えたり、すぐに混ぜないと緑色になってしまうとのこと
具材は大根、ゴボウ、ニンジン、豆腐、ネギ、カマガリの身を焼いてほぐしたもの。具材を炒め、薄口醤油、酒、ミリン、水を加えて炒め煮する
『臼杵石仏』の入口にあり、大分ならではの郷土料理を食べられる飲食店&土産店。店主・宇佐美裕之さんが「米の浸水時間や炊き方によっては、食欲のわかない緑色になってしまうんですよ(笑)」という『黄飯』は鮮やかな黄色で華やかだ。7、8月は隣接する『古代蓮の里』に約1万本の蓮の花が咲き、蓮根や蓮の実を使った蓮料理も提供している。
住所 | 臼杵市深田833-5 |
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電話 | 0972-65-3333 |
営業 | 10:00~16:30 (食堂 11:00〜15:00 / OS 14:30) ※時間外でも予約があれば営業 |
休み | なし |
席 | 100席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://sekibutukankocenter.com |