九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

鶏肉

闘鶏用として生まれた『薩摩鶏』の血筋を持つ地鶏がよく使われている。部位は、ムネ肉、モモ肉、砂ズリなどだ

作り方

鹿児島では、皮面だけを炙ってそぎ切りにしたものが多い。湯や酒にくぐらせるなど表面だけを処理した鶏肉を使うこともある

タレと薬味

タレは鹿児島で好まれる甘口の醤油が使われる事が多い。薬味はおろしニンニク、おろしショウガ、柚子こしょうなど

語り 地鶏料理みやま本舗 霧島店 樋󠄀脇智美の「地鶏の刺身」

店長・樋󠄀脇智美さん

『地鶏料理みやま本舗 霧島店』は霧島市の山中、自然に囲まれた静かな場所にある。現在は鹿児島市や国分市などにも4店を構えるが、その歴史は1990年、ここ霧島から始まった。店長・樋󠄀脇智美(ひわきともみ)さんは地元霧島の出身だ。
「この界わいでは昔は鶏をどこの家も飼っていて、誰かのお誕生日の時とか何かのお祝いの時とか、鶏肉をよく食べていましたね。刺身にしたり、焼いたり、煮込み料理にしたり…。私も小さい頃から食べていました。鶏を締めるところも見たりして、その時は『かわいそう』とは思ったのですが、美味しいからやっぱり食べていましたね(笑)。刺身のタレや焼く時のタレは、このあたりでは家ごとに違い、同じ味の家はありませんでした。中には甘口の醤油だけという家もありましたが。私の祖母が作っていた刺しダレと焼きダレも絶品だったんですよ。その味を残したい、伝えたいということで母が店を始めたのです」。秘伝のタレは、今は樋󠄀脇さんのお母様が作っている。

まず、ブランド地鶏である『さつま地鶏』の『炙りたたき』を作っていただいた。『さつま地鶏』は天然記念物でもある『薩摩鶏』の血を50%以上引き継ぐ地鶏だ。

『さつま地鶏』のモモ肉(左)とムネ肉(右)

そして、鹿児島で鶏の刺身と言えば、表面を炙って切る、一般的には“たたき”と呼ばれるものを指すことが多い。
「『さつま地鶏』のモモ肉とムネ肉の両面を軽く炙ってから切ります」。

モモ肉、ムネ肉の両面を炙り、切る

「焼くことで脂が出てジューシーさが増しますね。薬味はすりおろしたニンニクとショウガをお好みで」。

皿に盛りつけて『さつま地鶏の炙りたたき』完成

「『炙りたたき』としてお出ししていますが、鹿児島で多くの方が『鶏の刺身』と呼んでいる料理は、こちらに近いかもしれませんね。祖母も表面を軽く炙ってから切った料理を作っていました。お皿の中には、焼いた部分がついた身も、全体が生の身もあったように記憶していますよ」。

秘伝のタレにつけて食べる。甘味と酸味をあわせもつ黄金色の秘伝のタレが鶏肉の旨味を引き出す。
「『さつま地鶏』は脂肪分が少なくてヘルシーです。筋繊維が細かいのでやわらかですが適度に歯応えも楽しめ、地鶏らしい肉質ですね。ブランド地鶏『黒さつま鶏』を使った炙りたたきもありますが、こちらは、弾力がある中でもやわらかな食感が特徴ですね」。

次にみやま特選鶏の砂ズリ、モモ肉、ムネ肉を使った刺身『三色盛り』を作っていただいた。

みやま特選鶏の(左から)砂ズリ、モモ肉、ムネ肉

こちらはほぼ生の状態に近く、炙りたたきとは違った鶏肉の食感と旨味を味わえる。
「部位ごとに分かれた新鮮な鶏肉が届きます。モモ肉は面積をせまく、ムネ肉はとてもやわらかいので少し広めにと、鶏肉の旨味を出す切り方ですね。厚さは薄すぎず、厚すぎず…それぞれの食感を引き出すようにしています。砂ズリのコリコリした歯応え、ムネ肉のとろけるようなやわらかさ、モモ肉のほどよい歯応えとやわらかさを楽しんでいただきたいと思います」。

すりおろしたニンニクが添えられ皿の上に盛りつけて完成。

それぞれをほどよい厚さに切って盛りつける

砂ズリの赤色、モモ肉の濃いピンク、ムネ肉のうすいピンクとまさに『三色盛り』。こちらも秘伝のタレがよく合う。「今、刺身に使っている鶏肉はやわらかいですが歯応えもあり、昔の味わいに近いものです。ご年配の方には懐かしい味だと思います。鶏肉本来の旨味を味わっていただけるのではないでしょうか。うちで初めて刺身を食べる方もいらっしゃいますが、食感と甘味にびっくりされる方も多いですね。子どもさんは砂ズリが好きみたいですよ」。

通常の刺身以外に、状態のいいものが手に入った時は、肝の刺身を食べることもできる。特に黄色の肝は甘味が強く、“山ウニ”とも呼ばれるほど濃厚な味わいだ(要問合せ)。その他、塩味か焼きダレ味かを選ぶ『焼き盛り合せ』では、特製焼きダレに漬けてから焼く砂ズリ、皮、ハツ、モモ、軟骨、肝を食べられる。
「『三色盛り』、『焼き盛り合せ』、最後に『鶏飯』という方が多いですね」。

作るだけではなく刺身を食べるのも大好きだという樋󠄀脇さん。最後に刺身には焼酎がよく合うことを教えていただいた。
「私も焼酎を飲みながら刺身を食べています(笑)。鶏肉の甘味と焼酎の甘味はよく合いますね。小さい頃の記憶でも祖父が鶏の刺身を食べながら焼酎を飲んでいるというイメージが強いです(笑)。うちの店でも芋焼酎と一緒に楽しんでいる方が多いですよ。飲み方としては、このあたりではお湯割りの方が多いようですよ」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

鶏肉

筋繊維が細かくやわらかだが適度に歯応えも楽しめる『さつま地鶏』のムネ肉とモモ肉。『黒さつま鶏』を使ったものもある

作り方

モモ肉とムネ肉の両面を軽く炙ってから切る。鹿児島で“鶏の刺身”と言えば、炙ってから切るという料理を指すことが多い

タレと薬味

黄金色の特製タレは甘味と酸味を持ち、鶏肉の旨味を引き立てる。たたきはニンニクとショウガ、三色盛りなどの刺身には、ニンニクが薬味として添えられる

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地鶏料理みやま本舗 霧島店 秘伝の刺しダレ・焼きダレで鶏料理を

「祖母が作る刺しダレと焼きダレが絶品で、その味を残したい、伝えたいと、母が店を始めたのです。」と店長・樋󠄀脇智美さん。刺しダレは甘味と酸味をあわせ持つ黄金色。『さつま地鶏』や『黒さつま鶏』の炙りたたき、みやま特選鶏の砂ズリ・モモ肉・ムネ肉を使った『三色盛り』に添えられ、鶏肉の旨味をさらに高める。※鹿児島県内に4店舗あり(HP参照)

『さつま地鶏の炙りたたき』1,390円(税込)
みやま特選鶏の『三色盛り』二人前1,530円(税込)
手前からモモ肉、ムネ肉、砂ズリが並ぶ
特製塩がふりかけられた。『焼き盛り合せ・塩味』2,380円(税込)。左から、砂ずり、皮、ハツ、モモ、軟骨、キモ。みやま独自の秘伝の焼きダレに漬けて焼く『焼き盛り合せ・タレ味』2,380円(税込)も美味
テーブル席と家族連れでも安心な座敷席(写真)がある
お店のまわりは緑に囲まれた静かな場所だ

地鶏料理みやま本舗 霧島店

住所 鹿児島県霧島市霧島田口1611-10
電話 0995-57-0201
営業 11:30〜21:00
品切れ次第終了となるので、17:00以降に来店の場合は電話で確認を
休み 木曜
50席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://miyamahonpo.com/miyama
※記載した内容は2016年8月22日現在のものです。
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■お取り寄せ情報
『特製塩焼き盛り合わせ』、『特製とりめし』、『黒さつまの炙りたたき』などは取寄せ可能
http://miyama-netshop.com/