『久留米焼きとり』を代表する一串で、主に豚の腸のこと。下ごしらえされた後、表面はパリッ、中はジューシーになるよう塩焼きにする
『久留米焼きとり』は主に各店が吟味した塩で塩焼きされることが多い。タレ焼きのタレは醤油ベースで継ぎ足しながら使っている
ほとんどの店で、おかわり自由のキャベツがサービスで提供される。醤油と酢を合わせさっぱりした味わいのタレがかけられる
店頭には年季の入った大きな提灯がさがっている味わい深い店構え。1979年に開店した『縄文』は久留米の方に愛され続けている焼きとり店だ。「『入りにくくてなかなか入りきらんやった』とよく言われますね(笑)。でも、一度来ていただくと、それからずっと来てくださいますね。常連さんになる方も多いです」と、2代目の日吉誠治さん。元々はお客さんとして『縄文』によく訪れていたとのこと。前店主から店をたたむという話を聞き、「この味がなくなるのはもったいない」と、2006年に店を引き継いだ。「全部教わったものなので、メニューも味も40年前から変わっていないんですよ」。
ずっと変わらない味の一つ、ダルムについてお話をうかがった。「ダルムは豚の腸のことで、久留米ならではの呼び名ですね。店それぞれで味が違って、それぞれの味を出しています。ダルムはタレではなくて塩焼きが基本なので、味の違いがよくわかりますね。仕入れたダルムはきれいに洗って一度ゆでこぼししてから、野菜や香辛料と一緒に下ゆでします。独特の匂いを取るためですね。初めて食べる方や若い人には苦手な方もいますからね。けれど、その独特の匂いが好きだという人が久留米には多いんです。ですから、うちでは、適度に、いいあんばいでやってますね(笑)」。
下ごしらえされたダルムは串に刺しておき、注文が入ってから焼き始める。「途中で岩塩や塩コショウをふりかけたりしながら15分ほどかけてじっくり焼いていきます。表面がパリッとしたほうが美味しいですから」。
「焼くことよりも下準備に時間がかかります。焼きとり屋は下準備が80%でしょうね。一番手間がかかるのが鳥皮で、ダルムも手間がかかるし…なんでもめんどくさいですよ(笑)。皮とつくねに使う醤油ベースのタレも手間がかかります。醤油・ショウガ・砂糖などのほか、焼いた手羽先からとる出汁も使っているんです。それを継ぎ足しながら今に至っているというわけです」。
ダルム以外の焼きとりや、焼きとり以外のメニューも作っていただいた。「牛バラ、ささみ梅しそはおすすめの串焼きですし、巻物串も頼まれる方が多いし、“涼しいピザ”も人気。餃子も美味しいですよ。メニューはいろいろ、ありがたいことにまんべんなく売れていきます(笑)」。
表面がパリッとして中は弾力のあるダルム、ジャポネソースがかかった牛バラ、鶏のささみに梅肉をつけたささみ梅しそ、にんにくの芽巻、生野菜がたっぷりのったサラダ感覚の“涼しいピザ”…メニューは多彩だ。焼きとりの合間に食べるキャベツはいい口直しになる。「キャベツは食べ放題ですから、どんどんおかわりしてください! 久留米の焼きとり店のほとんどがキャベツはサービスで、各店で違うタレをかけていますね。口直しにもなって焼きとりをより美味しく食べていただけると思います。うちの酢ダレは通常の酢とかんきつ系の酢を使っています。かんきつ系の酢を使うと香りが立ってさっぱり感がより増しますね」。キャベツだけをつまみにしても焼酎を飲めそうだ。
多くの焼きとりメニューと様々な一品料理。日吉さんは元気な奥様とスタッフと一緒に、閉店後や午前中に下ごしらえを行なっている。「黙々とやっていますよ」。日々の仕事の喜びを尋ねてみた。「子どもが『おいしかった』と言ってくれるのが一番うれしいですね。親子3代どころか、親子4代で来てくれるご家族もいますね。家族みんなで食べるということも、久留米の焼きとりの特徴かな。子どもさんはチーズ巻とか牛バラが好きですね」。20歳の頃、初めて焼きとりを食べた店を、縁あって引き継いでいる日吉さん。最後は地元の言葉で久留米の良さを教えてくださった。「久留米は自然豊かで人間性がよかです(いいです)。初めはまったくわからんやったとに、ようしてもらいました(初めはまったくわからなかったのに、手助けしていただきました)。ここんにきはよかばい(この周辺はいいところですよ)。ざっといかんことはなか(うまくいかないことはないです)」。
野菜や香辛料と一緒に下ゆでするが、独特の香りは適度に残すようにしているとのこと。岩塩などをかけて15分ほどかけて焼く
塩は岩塩。主に皮とつくねに使うタレは、醤油・ショウガ・砂糖・焼いた手羽先からとる出汁などで作り、継ぎ足しながら使っている
キャベツはおかわり自由。通常の酢とかんきつ系の酢を合わせた酢ダレがかかる。かんきつ系の香りが立ちさっぱりした味わいだ
年季の入った大きな提灯がさがっている味わい深い店構え。1979年の開店以来、久留米の方に愛され続ける焼きとり店だ。独特のクセをほどよく残すように下ごしらえをしているという塩焼きのダルムや豚バラといった『久留米焼きとり』定番の串焼きをはじめ、ジャポネソースがかかった牛バラなど創作串もいろいろ。串焼き以外の一品料理も豊富。