九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

鶏肉

一番好まれているのは骨なしもも肉。その他、骨つきもも肉、むね肉、手羽先、手羽元、砂ずりなども使われている

タレ

ニンニク、ショウガ、塩、醤油を基本に、野菜、果物、香辛料などを合わせて、各店独特のタレに鶏肉を漬け込む

揚げ方

漬け込んだ鶏肉にデンプン(片栗粉)をまぶして揚げる。継ぎ足しながら使う油も調味料の1つとして考えられている

語り からあげ大吉 宮本圭一郎の「中津からあげ」

創業者・宮本 博幸(みやもと ひろゆき)さん(左)
二代目・宮本 圭一郎(みやもと けいいちろう)さん(右)

「会社勤めやったけど、ずっと仕事できる商売を始めようと思ったんです。出前をするラーメン屋も考えたんやけど、出前やったら器を回収に行かんといかんやないですか。玄関に器が出とらんかったらまた行かんといかんくなるし。私が住んでいた宇佐など大分県北部には当時からからあげ文化があったのでからあげ屋を考えたのです。からあげ屋なら配達してもそのまんまでいいですしね(笑)」。
そう笑顔で答えてくれるのは1989年にオープンした『からあげ大吉』の創業者・宮本博幸さん。
「開店当初は『からあげだけでごはん食べていけるの(生活していけるのか)?』とみんなから言われとりました。1号店は吉富町だったのですが、吉富町は漁師さんが多い町。漁師さんからは『味をもっと濃くしてくれ』と言われたりもしましたね。でも、子どもが好きな味にしなければと思っとったし、誰でも美味しく食べていただける味を目指していったんですよ」。
開店から30年、多くの方から愛され、現在は中津市内に本店をふくめ3店舗。『からあげ大吉』全体で29店舗を構える。『中津からあげ』も全国区となり、観光で食べ歩きしている人も多いとのこと。お店に大型バスが来ることもあるそうだ。

現在、お店の切り盛りをする中心は、二代目・宮本圭一郎さん。博幸さんが作ったからあげの味わいを引き継いでいる。
「原材料にはこだわっていますね。鶏肉は毎朝仕入れる国産の若鶏生肉です。骨なしのもも肉が中心ですが、骨付きのもも肉、むね肉、手羽先、砂ずりなども使っています。」

鶏肉を3コで100g程度の大きさに切る(写真は骨なしのもも肉)

「余分な脂を取ったり下ごしらえした後、タレをまぶします。タレは、醤油ベースで野菜、果物、香辛料などを合わせたもの。醤油だけでも数種類をブレンドしているんですよ。細かい作り方は…もちろん秘密です(笑)」。
ぶつ切りにした鶏肉に一味唐辛子と特製のタレをまぶし、4時間ほど漬け込んで肉にタレの味を染み込ませる。
「一味唐辛子は味にメリハリというかアクセントをつけるためのものですね。」

秘伝のタレと一味唐辛子を合わせ、鶏肉にまぶす
全体に染み渡るようによくもみ込む

「肉をタレに漬け込んだ後、デンプン(片栗粉)をまぶします。デンプンが糊状になって、揚げた時に鶏肉の旨味を包み込んでくれるんです」。
揚げ方も長年の研究と経験から培われたものだ。

肉をタレに漬け込んだ後、デンプン(片栗粉)をまぶす
油に投入する

「使う油は継ぎ足しながら使っています。その方がいい味が出るんですよ。骨なしもも肉なら170度で4~5分揚げます。肉が浮いてきて、泡の出方と音で状態がわかるんです。油の中で完全に火を通すわけではありません。油から出した後の余熱も使っているんです。油からすくい出して肉を少し揺らして蒸気を飛ばすこともやってますね。それがうちのやり方です」。

泡の出方と音で揚がり具合を判断し、最後に網の上で肉を揺らして水分を飛ばす

カラリと揚がり、中はプリプリのからあげは、醤油風味と唐辛子のバランスが絶妙で何個でも食べたくなる味わい。『大吉』が求め続け“誰でも美味しく食べていただける味”だ。
「でもね、中津にはいろんなからあげ屋があって、開店する店も多いので、お客さんはみんな浮気しますよ。毎月来る人が来なかったりするし、私たちにはわかるんです(笑)。でも、後で報告があって戻ってきてくれる人がほとんどですね(笑)。みなさんが美味しいと言ってくれるから私もがんばってこれたんですよ」と博幸さん。

店頭での販売と合わせて、『大吉』では近隣のエリアでからあげの配達(1000円以上)を行なっている。博幸さんが配達に行くこともあるとのことだ。
「わざわざ買いに来るのも大変やないですか。それにからあげを持ち帰るのは、まわりににおいが広がって気になると思うんです。一度ビニール袋に詰めて密閉することも試したりしたんやけど、やっぱりふにゃっとなってしまう。配達すればカラッとした揚げたてを届けられますから。配達は特に夕方が多いです。ご主人が帰ってくる時間なんでしょうね。今は共働きが多いけど、とりあえず食卓にからあげを出しておこうという方が多いようです。そして、これからの高齢化社会で、もっと配達の需要は増えてくるかもしれないですね。私も原付バイクで配達に行きますよ。『大吉の親父が来た!!』と喜んでいただけることもあるようです(笑)」。
中津のからあげに関するエピソードもお話いただいた。
「揚げたてはどこも美味しいのですが、冷めた時も美味しいのが本当に美味しいからあげ。弁当のおかずにすることも多いですからね。タレの味が鶏肉にどう染み込んでいるのかがポイントです。中津で認められているのは、冷めても美味しいからあげなのです。食べ方として、私はカボスがある時期はカボスの絞り汁にヒタヒタに浸けて食べるのが好きですね。味噌汁に入れたり、カレーに入れたりもしますよ。そして、店は盆と正月が特に忙しくなります。人が集まる時に、中津ではからあげが欠かせないんです。しかも、みんな家ではあまり揚げ物はしませんから(笑)。中津ではからあげは買うもの、揚げる家はほとんど聞きませんね」。

「笑顔が大切だといつも言っています」という博幸さん。「継続することは難しいですが、これからもからあげ一本にこだわり続けていきたいですね」という圭一郎さん。これからも中津で多くの家族に幸せな時間を届けてくれそうだ。『大吉』という店名も縁起がいい。「名前を考えた時、息子が『大吉』がいいと名付けてくれたんですよ」。
「そのこと、僕は忘れてます(笑)」

この料理人こだわりの「味のキーワード」

鶏肉

鶏肉は毎朝仕入れる国産の若鶏生肉。骨なしのもも肉の他、骨付きのもも肉、むね肉、手羽先、砂ずりなども使用している

タレ

タレは、醤油ベースで野菜、果物、香辛料などを合わせたもの。醤油だけでも数種類をブレンド。一味唐辛子と合わせて使う

揚げ方

鶏肉にタレをもみ込んだ後、デンプン(片栗粉)をまぶして継ぎ足ししながら使う油で揚げる

このページを共有・ブックマークする

からあげ大吉 本店 醤油ベースのタレと唐辛子の風味

近隣への配達も行なう1989年創業のからあげ専門店。毎朝仕入れる若鶏生肉、オリジナルのタレなど創業者の製法を守り続けている。鶏肉に一味唐辛子と、醤油ベースのタレをもみ込んでねかせた後、片栗粉をまぶして揚げる。片栗粉が鶏肉の旨味を閉じ込めるのだ。醤油風味と唐辛子のバランスが絶妙で何個でも食べたくなる味わい。

『骨なし(モモ)』100g240円(写真は400g)
『とり皮』1パック150円(写真右側は2パック分)、『モモ身』1本400円(写真左側)
油を大量に使っているが、掃除が行き届いた清潔な店内
赤い鶏マークがシンボルの外観

からあげ大吉 本店

住所 中津市沖代町2-3-3
電話 0979-24-1348
営業 11:00~OS19:30
休み 不定
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.karaagedaikichi.com
※記載した内容は2018年7月24日現在のものです。
お店情報をプリントする

お取り寄せ このお店で扱っている商品一覧