湯で煮るなどして油抜きをしてから、出汁、醤油、砂糖などで味付けする。煮込み時間と絞り方で味の染み込み方が左右される
いわゆる巻寿司の具材と同じで、卵焼き、シイタケ、桜でんぶ、キュウリやホウレンソウなどの野菜がよく使われている
南関揚げは海苔と違ってすし飯がくっつきにくいので、南関揚げの上に広げるすし飯ののせ方や、巻き方に工夫がなされている
新鮮な野菜や魚介などの食料品を中心に販売している「特産品センター なんかん いきいき村」。その一角には様々なタイプの南関揚げが山積みにされて売られている。そして、惣菜コーナーには『南関揚巻寿司』が並んでおり、併設されたバイキングレストランにも『南関揚巻寿司』が並ぶ。
奥の厨房で日々惣菜づくりに精を出す、石井早苗さんにお話をうかがった。
「南関揚げは常温でもおよそ2〜3ヶ月は保存できますし、地元の方のお宅にはたいていあるものですね。味噌汁には欠かせないんです。入れると入れないとでは全然味が変わるんですよ。南関揚げは“出し揚げ”みたいな言い方もよくします。味噌汁の最後に入れるんじゃなくて、初めから入れておくんです。すると旨味が出るんですよ。その南関揚げを使ったのが『南関揚巻寿司』で、南関には昔からある料理。普段からよく食べていますし、南関で寿司と言えば『南関揚巻寿司』のことですね」。
その作り方。南関揚げの下準備…。
「南関揚げは、しっかりと油抜きしてから、出し汁に醤油、砂糖などを入れて20〜25分ほど煮て味付けします。1度に鍋で45枚を重ねて煮ます。汁気を吸ってすごく重くなるので移動が大変です。ここは機械化できるといいんですけどね(笑)」。
具材の準備…。
「具材は、厚焼き卵、キュウリ、カンピョウ、シイタケ、桜でんぶです。シイタケは干しシイタケを1時間ほど煮て一晩ねかせたものです。シイタケもカンピョウも甘辛く炊いていますが、味付けは別々にしています。みなさんからシイタケが美味しいと評判なんですよ」。
そのシイタケはざっくり切っているし、キュウリはタテに4等分したもので、こちらも太くてダイナミック。厚焼き卵も太い。具材が大ぶりなのも味わいの素だ。
すし飯…。
「お米は古米と新米のブレンドです。新米はねばりが出てしまうので、そのまま食べる分には美味しいのですが、寿司には向かないんです。なのでお米屋さんにブレンドしてもらっています。炊いたごはんに酢や砂糖を合わせたものを混ぜて作ります」。
巻き方…。
「巻きすに軽く絞った南関揚げをのせて、はみだしたところは切ります。そこにすし飯を広げて、卵焼き、桜でんぶ、カンピョウ、シイタケのぶつ切り、キュウリの順番にのせて巻きます。揚げの端のほうには、すし飯をのせないようにしておきます。そのほうが巻きおわりが閉じやすいんです。海苔と違って南関揚げは最後が閉じにくいんですよ。だから、巻き終わりに注意しながらしっかりと巻きます。最後にぎゅっと締めるところがコツ。そこの力加減があるので、海苔巻きを巻く機械はあるんですが、『南関揚巻寿司』は手じゃないと絶対に巻けないんですよね」。
1本を8等分したものをいただいた。口に入れた瞬間からほんのり甘めな味わいで、油っぽさはまったくない。南関揚げの少しもっちりとした食感と、シイタケとカンピョウの歯応えの相性もいい。
こちらでは、通常の『南関揚巻寿司』の具材を変えた、アレンジしたものも作られている。
「『いきいき巻』は、巻きすに南関揚げをのせ、すし飯を広げ、そこに海苔巻きをのせて巻くという太巻きの南関揚巻寿司です。『レタス巻き』は、具材をレタス、マヨネーズ、錦糸卵、キュウリ、カニ風味かまぼこにしたもの。『細巻き』は、具材をワサビ、でんぶ、ごま、細めのキュウリにしたものです」。
『いきいき巻き』は、揚げと具材の風味に海苔が持つ磯の香りが加わり美味。『レタス巻き』は、レタスのシャキシャキ感の中、マヨネーズの酸味と南関揚げの甘味が絶妙なハーモニーを奏でる。『細巻き』は、揚げの甘味の中、ゴマの香り、キュウリの食感、ワサビの辛みが順に訪れる。
その他にも南関揚げは様々な料理に利用されている。
「『南関揚巻寿司』を作る時に切った小さな揚げは、煮ものなどの惣菜に入れてます。ピザの生地の代わりに使ったり、うどんに入れたり、いろんなことに使えますね。味付けした南関揚げを卵でとじてごはんにのせた『南関揚丼』も美味しいですし、カレーの具にもできますよ」。
『南関揚丼』を作っていただいたが、ジュワッと味が染み込み、旨味のある南関揚げはごはんにもよく合う。
取材におじゃました厨房にいらっしゃるのは、ほとんどが女性のみなさん。とても活気ある厨房だ。
「以前テレビで南関の長寿の方が、長生きの秘訣を尋ねられて、『南関揚げを食べることです』と言われたものだから、すごい電話が掛かってきて大変だったことがあります(笑)。私たちも毎日食べてますよ!」。
厨房のみなさんが元気な秘密は、やはり南関揚げなのかもしれない。
しっかりと油抜きしてから、出し汁に醤油、砂糖などを加えたものの中に入れ、20〜25分ほど煮て味付けをする
卵焼き、キュウリ、カンピョウ、シイタケ、桜でんぶ。シイタケもカンピョウも甘辛く炊いているが、味付けは別々にしている
揚げの全面にすし飯をのせず、少し余裕を持たせておくことがポイント。巻き終わりをぎゅっと締めるところもコツなのだそう
南関の農産物や『南関揚げ』といった特産品を中心に新鮮な食材を販売する物産センター。『南関揚巻寿司』をはじめ、それらの食材を使った惣菜も販売している。併設のレストランでは、同じく南関の食材を使った料理やデザートをバイキング形式(大人1名1500円・90分以内)でいただくことができ、こちらにも『南関揚巻寿司』が並ぶ。
住所 | 熊本県玉名郡南関町関町419-1 |
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電話 | 0968-53-0388 |
営業 | 9:00〜17:00 |
休み | 1月1日〜4日 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.ikiiki-nankan.com/ |