材料は小麦粉、そば粉、デンプンなどで作る中細麺。注文を受けてからお湯で手ごねし、製麺機で押し出しすぐにゆでる
煮干し、昆布、カツオ節でとった出汁に、塩、醤油、ミリンを加えて味付け。焼肉の後にもさらっと楽しめる和風スープだ
白菜・キュウリ・大根の3種の自家製キムチ、豚肉チャーシューに加え、錦糸卵、ゆで卵、スイカなどの果物がのる
『春香苑』(しゅんこうえん)は前身から含めると60年以上の歴史を持つ老舗焼肉店。現在の店舗は25年前にオープンした。豊後牛、鹿児島牛、宮崎牛、佐賀牛など九州各地から取り寄せた牛肉をリーズナブルに提供している。常務取締役・木村知徳(きむらとものり)さんにお話をうかがった。
「キャッチフレーズは、『いいことあったら春香苑』です(笑)。お一人様、昼は1000円、夜は3000円ほどで楽しんでいただけます。ご家族連れでも安心です(笑)。いいことがあった時に来ていただいて存分に食べていただけるとうれしいですね。そして、焼肉屋なんですが、トンカツやカレーなど食堂メニューも豊富です。チャンポンも人気ですよ。家族の中に『肉はちょっと…』という方がいてもみんなで楽しんでいただけると思います。ご家族連れ、親子3代で訪れるお客様も多いですね」。
冷麺は創業当時から変わらない人気メニューだ。
「最後の締めで食べられる方が多いですね。夏の多い時など1日に700人ほどのお客様にご来店いただき、『冷麺』が300杯ほど出ます。冬場は『冷麺』を温かくしてごま油を効かせた温麺も出ますが、圧倒的に『冷麺』が多いですね」。
それほどの人気メニューだが、当初から変わらない作り方が守られている。麺の生地をこねるのも、注文が入ってから手ごねするのだ。
「麺の材料は小麦粉、そば粉、ジャガイモのデンプンなど。注文を受けてからお湯で手ごねします。それをすぐに機械に入れて押し出し、湯の中に落とすのです。お湯でこねると、グルテンがすぐに形成されてねかせる必要がないんですよ。打ち立て・こねたては味が違いますよ。生地をこねるのは大変ではありますが、コツをつかめばそんなに力は必要ないんですよ」。
押し出される麺は中細麺。1分ほど茹でた後、水で洗い、さらに氷水で洗う。
「冷やすことでコシが強くなりますね」
麺を器に入れて絞った後、具材をのせていく。
「自家製のキュウリキムチ、大根キムチ、白菜キムチ、チャーシュー、錦糸卵、ゆで卵、スイカを使います。キムチはすべて自家製で、冷麺用のキムチは、通常のキムチとちがって熟成の具合が違います。冷麺用は酸味があったほうが美味しいので、より熟成させて酸味を強く出しているのです。チャーシューは豚肉を使っていますね。それから、うちは昔から冷麺に果物をのせています。夏はスイカが多くて、梨やリンゴなども使います」。
最後にスープを注いでできあがりだ。
「煮干し、昆布、カツオ節でとった出汁に、塩、醤油、ミリンを加えて味付けしています。さらっと食べられるようにした和風スープですね。出汁はクッパ、テールスープなどのベースにも使っています」。
魚介系のあっさりとしたスープにツルリと喉越しのいい麺がよく合う。3種のキムチの歯応えと辛みがほどよくからみあう。料理を彩るスイカはいつ食べるか少し悩むところだ。
「しっかりしたコシがありながらも、かたすぎない麺を目指しています。さっぱりした味わいにしているのは、焼肉の後に食べることを考えているからです。果物に関しては賛否両論あります(笑)。冷麺の器から取り出して後で食べる方もいますしスープにつけて食べる人もいます。スイカに塩をかけたらうまいですから、それと同じですね。お好きなように食べていただければと思います(笑)」。
麺の量は小が200g、中が250g、大が300g。一般的なラーメン一杯の麺は100g前後だから、小でも一般的なラーメンの大盛りに近いが、注文する方は一人一杯食べられる方が多いそうだ。
別府では昔からよく食べられていた『冷麺』。木村さんも小さい頃からよく食べていたとのこと。
「私の場合は家が焼肉店という特殊な環境ですが(笑)、冷麺は小さい頃からあたりまえに食べていました。私はごはんのおかずとしてもいけますよ(笑)。麺と具材を食べた後、スープにごはん入れて、冷茶漬けのようにしても旨いですよ。冷麺が別府で食べられ続けてきたのは、冷麺が別府の風土に合っているからかもしれません。別府の夏は暑いですし、温泉もあります。さっぱりと食べられる冷麺を受け入れやすい環境なのかもしれませんね。別府だけのものだった冷麺が、ここ10年くらいでメジャーになってきたという実感もあります。地元の方は変わらず食べてくださる上に、県外のお客様もたくさんいらっしゃって食べてくださいますから」。
いつもはご夫婦で来られる方が、お正月やお盆には帰省したお子さんやお孫さんと一緒に多人数で来られることも多いのだそう。そんな時、『冷麺』を囲んで「そうそう、この味」という会話で盛り上がっているに違いない。
材料は小麦粉、そば粉、デンプンなどで作る中細麺。注文を受けてからお湯で手ごねし、製麺機で押し出しすぐにゆでる
煮干し、昆布、カツオ節でとった出汁に、塩、醤油、ミリンを加えて味付け。焼肉の後にもさらっと楽しめる和風スープだ
白菜・キュウリ・大根の3種の自家製キムチ、豚肉チャーシューに加え、錦糸卵、ゆで卵、スイカなどの果物がのる
豊後牛、鹿児島牛など九州各地から取り寄せた牛肉をお手頃価格で提供するとともに、トンカツやカレーといったメニューも充実した“焼肉ファミリーレストラン”。『冷麺』は焼肉を食べた後にさらっと食べられるようにと、中太麺を使い、煮干し・昆布・カツオ節の出汁を使ったさっぱりスープ。白菜・キュウリ・大根の3種のキムチや果物がのり、見た目も華やかだ。