九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

ハモ

産地、鮮度に各店の料理人は気を配っている。小骨を多く持つハモには『骨切り』という技術が必要となり、料理人の技の見せどころ

出汁

上品な昆布出汁が基本。ハモの身の旨さを引き出すには、出汁のいい香りと旨味も欠かせないものだ

ポン酢

ほのかな甘味を持つハモの味を引き出すのがさっぱりとしたポン酢。大分では、特産のカボスを使ったポン酢がよく使われる

語り 和洋料理 壷中の天地 甲斐博文の「はもしゃぶ」

甲斐博文さん

メニューには、店主・甲斐博文さんがつくる大分の旬の魚介類を活かした料理が並ぶ。
「和食と合わせて、ソテーやムニエルなどの洋食料理もつくっています。様々な世代の方に様々な味で大分の美味しい魚を楽しんでいただきたいと思っています」。
そんな中、初夏から夏にかけての『はもしゃぶ』は、この時期の和食の王道と言える料理だ。

針金で神経を取り除きおとなしくさせる

まずはハモのさばき方を見せていただいた。
「ハモは県南で穫れたものですね。包丁でぬめりをとった後、針金をさして神経を取り除き、身が生きている状態でしめます。ハモは生命力が強い魚で暴れまくるのですが、こうすると生きているけどおとなしくなるんですよ。その後、目打ちして固定し、内蔵を出すなど下処理をします」。

おとなしくなったハモをさばく

そして、骨切りが行なわれる。
「骨切りは大根の千切りなど、包丁さばきの基礎があってできるものですね。皮に近いほうにも骨があるので、その骨を切らなければならないのです。身と骨を切って皮1枚だけを残すのですが、それは、身と皮の間にあるゼラチン質の旨味を残すためなのです。しゃぶしゃぶにした時に花のように開かせるためだけではないのです」。

数cmの間に数十回の包丁を入れる骨切りは地道な仕事だ

切ったハモを野菜などと一緒に皿に並べればはもしゃぶの準備は完了だが、甲斐さんたちは、お客さんが口にする直前にしかハモはさばかない。
「食べていただくハモは直前まで生簀で泳いでいます(笑)。とにかく鮮度が大切で、身が生きているうちにゆがかないと、出汁の中できれいに開かないのです。鮮度が落ちると、骨切りして包丁が入っていても、身と身の間がくっついてしまい、出汁がその間にうまく入らなくなってしまうためなんてす。切った後、裏返して皮のほうから見た時、包丁で切った跡が見えないと骨が残っていることになってしまいます。熟練の技ですね」。

準備が整ったところで、しゃぶしゃぶ開始。昆布出汁の入った鍋に職人技で切られたハモの身を箸で入れる。
「はもしゃぶを美味しく食べるには、皮と身のゆがき時間を少し変えたほうがいいんです。まず皮のほうだけを出汁に入れて5秒、その後、身も入れて3〜5秒ゆがいたものが食べ頃です。ポイントは身をゆがきすぎないこと。刺身でも食べられるものを使っていますから、中心は生のような感じを残したほうが美味しく食べられるんですよ」。
酢みそや梅肉醤油でいただく『ハモの湯引き』も、やはりそうやってゆがいた後、水でしめているとのことだ。

新鮮なハモだからこそ、美しい花が開く

甲斐さんに教えていただいたように鍋の中の出汁でハモをしゃぶしゃぶすると、美しいボタンの花が開いた。ネギともみじおろしも加えた特製のポン酢につけていただくと、脂ののりや上品な甘味が引き立つ。
「醤油、みりん、酒に大分のカボスを使ったポン酢です。昆布とカツオも合わせます。つくってすぐは味にとげがありますが、1週間ほどねかせるとまろやかになりますね」。

身は淡白な味なので、ハモは小鉢、吸い物、蒲焼き、天ぷらと何にでも使える魚。その味わいを十二分に楽しめるのが5月から8月一杯まで提供している『ハモ会席』だ。
「身がほのかなピンク色に染まる真ハモを使っていますが、8月末くらいまで食べることができます。その中でも私たちが使っているのは800g〜1kgくらいのもの。骨もやわらかくて脂ののりもいいですね」。
初夏から夏にかけてが一番美味しいと思われているハモだが、実は9月も美味しいのだそう。
「9月のハモは、脂がのっていて実は美味しいんですよ。ハモ会席も予約があれば9月でもご提供します。あと、9月にコース料理の一品でお出しする『ハモと松茸の土瓶蒸し』も美味しいですよ!!」。

ハモは料理人にも食べる私たちにとっても、とても魅力的な魚のようだ。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

ハモ

中津〜県南で穫れた真ハモ、さらに骨がやわらかくて脂ののりもいい、800g〜1kgくらいのハモを、料理する直前に生簀から取り出してさばく

出汁

ハモそのものの味を楽しんでもらうため、ハモの身をくぐらせるのは昆布出汁。透明な中に咲くボタンのような花が美しい

ポン酢

醤油、みりん、酒に大分のカボスを加え、昆布とカツオも合わせた後、1週間ほどねかせて味をまろやかにする。薬味はネギともみじおろし

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和洋料理 壷中の天地和洋様々な料理で大分の美味しい魚を味わう

「様々な世代の方に大分の美味しい魚を楽しんでいただきたい」という店主・甲斐博文さんの想いのもと、和食・洋食・旬の料理など150種類以上のメニューが並ぶ。夏は城下カレイやハモ料理、冬はフグ料理を楽しみたい。ハモ料理に使うハモは、800g〜1kgで脂ののりが良く骨もやわらかい真ハモだけだ。その他、ランチ1200円〜夜のコース3150円〜。

写真の『はもしゃぶ』は3人前。ハモの湯引き、ハモ寿司など全11品が付く1人前5250円の『ハモ会席』(要予約)でいただくことができる。
写真は3階の和室。完全個室のテーブル席が中心の1階、竹をふんだんに使った個室と半個室の2階と、趣向を凝らしたスペースが広がる

和洋料理 壷中の天地

住所 大分市府内町3-7-27
電話 097-532-5555
営業 11:00〜OS14:00/17:00〜OS22:00
休み 日曜
180席
カード
駐車場 なし
URL http://www.cocyu-ten.com/
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