九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

鶏肉

一番好まれているのは骨なしもも肉。その他、骨つきもも肉、むね肉、手羽先、手羽元、砂ずりなども使われている

タレ

ニンニク、ショウガ、ごま油、リンゴ、一味唐辛子、醤油などを合わせたタレ。鶏肉に塩で下味をつけてからタレをもみ込む

揚げ方

漬け込んだ鶏肉にデンプン(片栗粉)をまぶして揚げる。継ぎ足しながら使う油も調味料の1つとして考えられている

語り からあげの鳥しん 店主・角信一の「中津からあげ」

店主・角 信一(すみ しんいち)さん

カフェのような外観、アメリカのダイナーのような店内、屋上にはイートインスペース。『からあげの鳥しん』はおしゃれなからあげ専門店だ。「私が赤色が好きなので、所々に赤色を使っています。待合スペースのソファも赤色ですね」。そう語ってくれる店主・角信一さんはからあげ好きが高じて、2001年に開業した。「私はからあげが大好きなんです。自分が好きな時に好きなだけからあげを食べられるように、からあげ専門店を開店しました(笑)。学生時代はサッカーをやってましたが、その帰りに、50円分とか買って食べてましたね。当時は100g80円くらいだったと思います」。
角さんの作り上げたからあげの秘密をうかがった。鶏肉は角さんが食べ比べてたどりついた宮崎の児湯郡産の鶏だ。
「宮崎の児湯郡産の鶏は育てられる環境がよくて、脂ものっていますし、肉の旨味が違うんです。冷凍するとやはり肉の旨味は減ってしまうので、当店では一度も冷凍せずに提供しております。いろいろ試してわかったのですが、揚げて美味しい鶏肉は焼いても美味しい。しかし焼いて食べるとすごく美味しくても、揚げるのには向かない鶏肉もあるようなのです」。
タレも角さんが『自分が食べたい』味わいを目指したオリジナル。
「材料はニンニク、ショウガ、ごま油、リンゴ、一味唐辛子、醤油などですね。中津の醤油は旨味が強いんです。配合のレシピは私の頭の中だけにあります。一人で静かに作っています(笑)。タレの味わいを説明すると、がつんとくるインパクトはないけど…プレーンな感じかな。朝でもOKみたいな味です(笑)。とがった味わいは外し、シンプルに美味しいからあげを目指しましたから」。

鶏肉は部位毎に10kgずつ味を入れていきます。骨なしのもも肉は1つ35~45gくらいに切り分けられ、まず塩もみする。「下味をつけるという意味と、肉の旨味を閉じ込めるという意味があります」。

もも肉をぶつ切りにする
むね肉は皮をはいでぶつ切りにする
塩で鶏肉に下味をつける

その後、特製タレを80~120回もみ込み、真空パックにして24時間以上ねかせ、鶏肉にタレの味を染み込ませておく。

鶏肉にタレをもみ込む

注文が入るとタレの味が染み込んだ鶏肉にデンプン(片栗粉)をまぶしてすぐに揚げる。デンプンをまぶしてねかせてから揚げる“先打ち”と呼ばれる手法に対して、角さんがやっているのは“後打ち”という手法で、作り置きはしていない。
「かごに鶏肉を入れてデンプンをまぶし、その後ふるいにかけて肉のピンク色が見えるくらいの薄衣にします。衣は肉を焦がさないようにするためのもので、できるだけ薄くしたいというのが私の考えですね。きめ細かな衣を目指してたどりついたのは、北海道の馬鈴薯デンプンです。デンプンで味も食感も変わります」。

タレをもみ込みねかせておいた鶏肉にデンプンをまぶし、ふるいにかけて薄衣にする

油は継ぎ足しながら使っているそうだ。
「この油で揚げると風味がよくなります。油も調味料の1つなんです。新しい油だと、せっかく染み込んだ鶏肉の味を油が吸収してしまいます」。
油の温度は175度。骨なしのもも肉で約4分くらい揚げるが、油に入れっぱなしではない。
「3分30秒くらいで一度油から出して空気にふれさせ、水分を飛ばします。そしてもう一度油に入れます。2度揚げしているようなものです。これで表面がパリッと仕上がります。」

油に入れる
一度油から出して水分を飛ばしてから、再び油に入れる

「実は肉がかたくならないように余熱も使っているんです。家で食べる方には揚げてすぐのものをご提供しますが、車で来られていて、すぐに食べる方にはしばらくおいて中まで火が通った状態でご提供しています」。

骨なしもも肉と骨なしむね肉のからあげ
油から出した直後のむね肉を切った様子。この時点では中心部はピンク色だが、余熱で火が通るのだ

角さん自慢のからあげはサクッとした衣とやわらかな肉の食感、さっぱりとした味で、食べ進めるうちに旨さが増していくようだ。
「以前、ある芸人さんがいらっしゃって、『1コ目より4コ目が旨い!』と言ってくださったんです。私が求める味わいを感じていただけたと思いうれしかったです」。

中津のからあげは、もも肉が主体だが、角さんはむね肉のからあげも追求した。「むね肉を美味しくするには揚げる時間も大切ですが、余熱で仕上げることがより大切になってきます。うちのむね肉のからあげは、揚げたてすぐは中心がまだピンク色で半生ですが、5分ねかせて完成します。やわらかく仕上げているのでむね肉のイメージが変わりますよ!」。
口にすると、むね肉のパサパサというイメージが確かに変わる、やわらかな食感だ。
これまでに多くのイベントにも出店し、多く人に認められている角さんのからあげ。取材中も客足は途絶えない。
「中津の方はからあげが本当に好きで、普通に食べる以外にも、おやつに食べたりとか味噌汁の具にされたりもします。内食にもなるし外食にもなる料理です。お弁当に入れられることも多いです。だから、冷めても美味しいものが好まれます。冷めても美味しいからあげじゃないと中津では認められないんです。みなさん、からあげに対しては厳しいです(笑)。中津では人が集まる時には、だれかが必ず唐揚げを持ってきます。みんなで持ち寄ることもありますね。中津ではからあげを家で作ることはほとんどなくて、からあげは店で買うものなのです。骨なしもも肉はA店、骨付きぶつ切はB店、むね肉はC店など、部位ごとにひいきの店が違ったりもするんですよ」。
からあげをより美味しく食べてもらうために、角さんはオリジナル調味料『鳥七味』を開発。燻製鶏削り節、カボス粉末、唐辛子など8つの素材を使い、旨味と辛味のバランスが絶妙。からあげのために作られた調味料だ。さらに新技術も実験中とのこと。「お取り寄せしていただくこともできるのですが、お客様に揚げていただかなければなりません。うちの油で揚げないと、完全なうちの味にはならないのです。今、揚げたてを瞬間冷凍する技術に取り組んでいます。もう少しお待ちください!(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

鶏肉

いい環境で育てられ、脂がのって旨味が強い宮崎の児湯郡産の鶏を使用。冷凍すると旨味が減るので、生肉のみを取り寄せている

タレ

ニンニク、ショウガ、ごま油、リンゴ、一味唐辛子、醤油などを合わせたタレ。鶏肉に塩で下味をつけてからタレをもみ込む

揚げ方

タレをもみ込みねかせておいた鶏肉の表面にデンプンを薄くまぶし、継ぎ足している油で揚げる。余熱もうまく使っている

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からあげの鳥しん ふわりと仕上げたむね肉も自慢の店

からあげが大好きな店主・角 信一さんの店。宮崎県産の鶏肉、特製の醤油タレ、衣は揚げる直前に薄くまぶすことなど、試行錯誤の上にたどりついたからあげはさっぱりとして食べ進めるうちに旨さが増していくよう。定番のもも肉と合わせて、むね肉も自慢の一品。「余熱で火を通すことでやわらかく仕上げています。むね肉のイメージが変わりますよ!」。

右側は『もも肉(骨なし)』100g250円、色が薄い左側は『むね肉(骨なし)』100g210円。写真はそれぞれ約500g。こちらでは完成品の重さを量って販売する“揚げばかり”
アメリカンな雰囲気の店内
2階のイートインスペース
カフェのようなオシャレな外観

からあげの鳥しん

住所 中津市宮夫218-1
電話 0979-23-5232
営業 11:00~20:00(日曜10:00~19:00)
休み 月曜
カード
駐車場 あり
URL http://nakatsu-karaage.com
※記載した内容は2018年7月24日現在のものです。
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