九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

出汁

『雉子めし』をつくる時、雉子ガラから出汁をとることが欠かせない。鶏ガラとは異なる雉子ならではの濃厚な旨味を持つ

具材

雉子肉以外の具材としては、しいたけ、ニンジン、タケノコ、ゴボウなどが一般的。コンニャクや油揚げを使うこともあるようだ

作り方

雉子ガラ出汁を甘辛く味付けし、具材を煮込む。その具材を米と一緒に炊く作り方と、炊いた白ごはんと混ぜ合わせる作り方がある

語り 宇戸の庄 御堂優希の「雉子めし」

御堂優希さん

日本の児童文学史に寄与した久留島武彦氏の出身地ということから“童話の里”として知られる玖珠郡玖珠町。『宇戸の庄』は玖珠町の山間に、2003年にオープンした温泉宿。食事のみ、立ち寄り湯の利用も可能だ。静かな環境、『モール泉』と呼ばれる琥珀色のやわらかな泉質、清らかな湧水に恵まれている。当初から山女魚料理や地元産の野菜・山菜を使った料理が人気だが、現在の1番人気は『雉子料理』とのこと。スタッフの御堂優希(みどうゆうき)さんにお話をうかがった。
「このあたりの山間では昔から雉子料理が食べられていたと聞いています。今から8年ほど前に私たちみんなで雉子を食べたところ、とても美味しかったので、ぜひ多くの方に食べていただきたいと試行錯誤してメニューに加えました」。

雉子を使った単品メニューもあるが、『雉子御膳』では、刺身、もも肉炭火焼き、唐揚げ、雉子そば、『雉子めし』など雉子を余すことなく堪能できる。
「山にいる野生の雉子は筋肉質で、肉はかたくて食べにくかったようです。けれど、旨い出汁がとれるということで、主に出汁を取ることに使っていたようで、それを使った『雉子めし』が食べられていたようですね。“肉がかたい”というイメージを持たれている方も多いと思いますが、現在、私たちは養殖の雉子を使っていますから、肉はクセがなくてやわらかいですよ。雉子は鶏より小さくて、1羽から取れる1本のもも肉は片手いっぱいくらいの量ですね」。

刺身はトロリとした食感で、特製の甘めの醤油がよく合う。

『雉子の刺身』。手前から砂ずり、ササミ、胸肉
※『雉子御膳』で食べられる

自家製炭で焼くもも肉の炭火焼きは、ゆず胡椒を合わせた特製ポン酢が肉の甘味を引き立てる。

『もも肉炭火焼き』。炭は樫の木だけで作る自家製で肉に匂いがつかない。焼き過ぎるとかたくなるので軽く炙って食べる
※『雉子御膳』で食べられる

コースの最後に出される『雉子めし』は雉子出汁の旨味が詰まった一品だ。
「出汁は雉子のガラとお湯でよく洗った皮を、コトコトと半日くらい炊いて作ります」。

雉子のガラと皮からとった雉子出汁

「アク取りをしっかりしないといけませんね。その出汁を甘めの醤油で味付けして具材のしいたけ、ニンジン、雉子肉(胸肉+もも肉)を煮込みます。具材からも旨味が出た煮汁になりますね。次に具材と煮汁を分けます。そしてその煮汁に雉子出汁を加えてごはんを炊き、ごはんが炊けたら、最後に具材と和えるのです」。

味付けした具材と雉子出汁で炊いたごはんを合わせて『雉子めし』はできあがり

細かな手間がかけられた『雉子めし』はごはんの一粒ずつにも雉子出汁の濃厚な旨味が染み込んでいる。肉も雉子肉ならではの味わいだ。
「お米は玖珠・宇佐産のもの。そして、宿で使っている水はすべて湧水で、口当たりがやわらかです。美味しい出汁は水の力もあると思います」。

『雉子御膳』は一年中食べられるが、冬期には『雉子鍋』も食べられるとのこと。
「『雉子鍋』も濃厚なスープが美味しいですね。『雉子皮の甘酢あえ』もあります」。

皮からは濃厚でコクのある油が出るので出汁を取り終えた皮はお湯でよく洗い細かく刻んで甘酢和えに

「雉子の卵かけごはんもコクがあって美味しいですよ。卵はピンポン玉くらいの大きさでうずらの卵のような殻、黄身は橙色ではなく黄色ですね」。
※卵かけごはんは通常メニューにはないので要問合せ

標高450mほどに位置し、豊かな自然に囲まれた『宇戸の庄』。他ではあまり食べることができない雉子料理を求めて訪れる方も多いのだそう。
「雉子料理は、初めは『珍しい』ということで食べていただくのですが、クセがないですし、濃厚な味わいで、リピーターになる方も多いですね。肉は低カロリーで高タンパクとも言われていますし、温泉と合わせて楽しんでいただいているようです。自然に囲まれたこの場所には『何もない』があるんです。煩わしいものから逃避したい方はぜひおいでください(笑)。何もない自然の中で、のんびりした時間を過ごしてください。自然の中で自然体になっていただけると思いますよ。そうそう、周辺で野生の雉子の姿を見ることもよくあるんですよ!! 見た目はきれいですが、野生の雉子は、特に葉ものなど畑の作物をつつくので農家の方には迷惑な鳥のようです。逃げ足が早くてつかまえるのは無理ですね(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

出汁

雉子のガラと皮で出汁をとる。皮は油分が出汁に出たら取り出しお湯でよく洗い甘酢あえに。ガラは半日ほど炊く。途中のアク取りが欠かせない

具材

写真は雉子の胸肉ともも肉をブレンドしたもの。その他、特産のしいたけ、ニンジンが使われる

作り方

甘辛く味付けした雉子出汁で具材を煮込み、具材とスープを分ける。スープと雉子出汁で炊いたごはんに味付けした具材を混ぜ込む

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宇戸の庄雉子料理三昧ができる温泉宿

童話の里として知られる玖珠町の山間にある温泉宿。静かな環境、やわらかなお湯とともに自慢にしているのが雉子料理だ。雉子の胸肉やもも肉などの具材を雉子出汁ベースの煮汁で甘辛く煮込み、雉子出汁で炊いたごはんと合わせた『雉子めし』、刺身、もも肉炭火焼、唐揚げ、雉子そばなどを食べられる。
※食事のみの利用、立ち寄り湯も可能

『雉子めし』756円(税込) ※『雉子御膳』にも付く
『雉子そば』1296円(税込)。ツユは雉子出汁とカツオ出汁をブレンドしている ※写真は雉子御膳に付く半玉のもの。
『雉子御膳』3780円(税込)。季節の小鉢、刺身、もも肉炭火焼き、唐揚げ、雉子そば、雉子めし、香物、デザートが付く
『山女魚塩焼き』648円(税込)。湧水に満たされた生簀から取り出して自家製炭の炭火で焼かれる
店内には囲炉裏があり、自家製炭で焼いた山女魚のいい香りが漂うことも
湧き水は汲み放題とのこと
大自然に囲まれた『宇戸の庄』。温泉は『モール泉』と呼ばれる植物由来で黄金色に輝くやわらかなお湯だ
1泊2食8500円〜(税別)。立ち寄り湯は400円(税込)で10:00〜19:00(受付は18時まで・季節や天候によって変動あり)
※対象のメニュー1500円以上の飲食で入浴無料

宇戸の庄(うとのしょう)

住所 大分県玖珠郡玖珠町大字森字谷の河内4398-2
電話 0973-72-0429
営業 11:00~17:00(食事処)
休み 水曜※不定休もあり
40席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://www.utonosyo.com/
※記載した内容は2016年6月20日現在のものです。
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