まず、しゃくについている泥をよく洗い流してきれいにすることが必要。足を取り除いたり、小麦粉のまぶし方を工夫している店もある
しゃくをからっと揚げたり食べやすいようにするため、天ぷらの衣、油、揚げ方には様々なやり方がある
天ツユが付く店もあるが、塩をふりかけて食べるのが基本。しゃくの味をより引き出すため、塩にもアレンジが加えられている
熊本市の台所と言われている『田崎市場』に毎朝素材を仕入れに行くのは、創作和食『ささの』の総料理長・西村さんの日課。しゃくは5月くらいから市場に並ぶとのことだ。
「八代や有明でよく穫れるようです。生きているものを仕入れに行くのですが、市場に行くと、しゃくが入れられた箱にだけはなぜか笹の葉が置かれていますね。しゃくは5月から夏にかけて美味しい時期で、『しゃくの天ぷら』はその時期にぜひ食べていただきたい一品です。知らない方も多いようで、『しゃくとは何ですか?』と尋ねられることもあります。その時は“熊本の干潟にいるエビみたいなのです”とお答えしてます。素揚げ、塩ゆで、唐揚げ、甘辛く炊く煮付け、しゃくを塩と合わせてまるごとすりつぶしたしゃくみそなど、いろいろな食べ方がありますが、私は天ぷらが一番おすすめですね」。
西村さんおすすめの天ぷらを作っていただいた。
「まず、足、ヒレ、エラを外します。食べた時に口の中にひっかからないようにするためです。しゃくをさわっている時、痛くはありませんが、たまに指をハサミではさまれます(笑)。しゃくは泥の中にいるので、泥を水でよく洗い流し、小麦粉を表面にまぶして、水と小麦粉でつくる天ぷらの衣をつけて揚げます。身も殻もワタも丸ごと食べるしゃくは味が濃いですから、下味などはつけません」。
エビの仲間だけに、揚げるのはなかなか難しいのだそう。170度の油で揚げるのだが、時折、指を油の中にいれている!!
「しゃくが曲がり過ぎないようにするためです。曲がりそうになったら「ダメダメダメ」って感じで。指でしゃくをまっすぐに伸ばしているんです」。
できあがった天ぷらを熱いうちにいただく。うす口醤油を使った上品な色と味の天ツユと、アレンジされた塩が添えられている。
「天つゆもおつけしますが、塩をふりかけるのが美味しいですね。しゃくの天ぷらに使うのはしそを合わせたゆかり塩です。夏は酸味のある塩が食もすすみますからね。しゃくには、ほのかな塩味と濃い海の味があると思います。これは、とても焼酎に合う味です。一匹食べる時は、尾のほうから食べて頭の方へと向かいたいですね(笑)」。
竹をあしらった店内は、個室、奥の広間、幅をとったカウンターがあり、一人でも二人でも大人数でも楽しめる。
「ゆっくりしにいらっしゃってください。ぜひカウンターでお話しましょう(笑)」。
西村さんに熊本の食の話をしていただきながら、しゃくをはじめ、馬刺、辛子蓮根、鱧の湯引きなど、熊本の味を味わいたい。
食べた時に口の中にひっかからないようにシャコの足、ヒレ、エラなどを外す。その後、泥を水でよく洗い流す
水と小麦粉でつくる天ぷらの衣をつけて170度の油で揚げる。しゃくが曲がってしまわないように高温の油に指を入れて伸ばすことも
うす口醤油を使った上品な色と味の天ツユも付くが、塩にしそを合わせたゆかり塩は酸味もあって食がすすむ
熊本の郷土料理や、旬の食材を使った料理を食べられる創作和食屋。料理長・西村大輔さんは熊本市の田崎市場で旬の食材を吟味している。熊本の夏の名物であるしゃくの天ぷらに使うしゃくも、生きているものを仕入れて揚げる。上品な天ツユかゆかり塩でいただこう。揚げたて辛子レンコン(680円)、旬の刺身(450円~)、天草大王の手羽(350円)といったメニューも。