九州の味とともに 夏

この料理の"味のキーワード"

そうめん

各店で使われるそうめんは、ド・ロ神父が製法を伝え、今もこの地で食べられているもの。手延べ製法でやや太くコシが強いのが特徴

作り方

一般的なそうめんよりも長めにゆでる。ツユで食べる冷そうめんや、温かいツユと合わせるにゅうめんなどで食べる

味わい

冷そうめんのツユも、にゅうめんの温かいツユも、そうめんのしっかりした味わいを生かす味となるように工夫されてる

語り 波矢司 林絵里花の「ド・ロさまそうめん」

店主・林絵里花さん

『ながさきサンセットロード』とも呼ばれている国道202号線沿いにある割烹。迎えてくれたのは女将・林絵里花(はやしえりか)さんだ。
「父がお店を始めたのは1982年。父が他界した後、私が二代目となりました。小さい頃から出前についていったり、器を取りにいったりしていて、地域のみなさんからかわいがっていただきました。お店も地域の方々に支えられてきたと思っています。応援してくださる方が多くて、本当にうれしいですね」。

メニューには和洋中さまざまな料理が並ぶが、開店当初から、魚介を中心とした和食、ちゃんぽん、皿うどんは提供されていたとのこと。
「高齢者の方も多いので、出前ではちゃんぽんと皿うどんが人気ですね。観光でいらっしゃる方は『うにちゃんぽん』や新鮮な魚を使ったメニューが人気です。3月解禁でGWまでが旬のウニや、アラカブ、イセエビ、ミズイカなど季節ならではの美味しい魚介を食べられますよ。ミズイカは地域の飲食店が協力して毎年秋に1カ月ほど『ミズイカ祭り』を行なっています」。

『ミズイカ祭り』の時期は毎年変わるが、大体10月〜12月の間の1カ月なのだそう。

「メニューは初めと比べて、ずい分と増えましたね(笑)」という林さん。2015年の11月から登場したメニューが『ド・ロさまそうめん』だ。
「長崎県で麺と言えば『五島うどん』・『島原素麺』はよく知られていますが、地元の食文化を伝えていきたいという想いもあり、『ド・ロさまそうめん』をメニューに加えることにしました。地元の人たちが守ってきたものですから、たくさんの方に知っていただきたいですし、食べていただきたいですね。外海(旧町名)では教会群が世界遺産登録を目指しているので、この地区で教会を見学される方は多いと思います。その後で『ド・ロさまそうめん』を食べていただいて、外海のことをより知っていただけるとうれしいですね。『ド・ロさまそうめん』を知らないお客様には、当時は貧しかった外海で、麺づくり、農業、漁業、助産院などを作ったえらい神父さんが伝えたそうめんだと説明しています(笑)」。

『ド・ロさまそうめん』は地獄炊き(そうめんと湯が入った鍋が火にかけた状態で提供される)か冷製かを選ぶことができる。どちらも作っていただいた。
「乾麺の状態では、真っ白ではなくて少し黄みがかっていますね。材料は強力粉と塩と落花生油だけです。少し太めでコシが強く、味が濃いそうめんですね」。

中華鍋で湯をわかし、そこに麺を入れる。箸でかきまぜながらほどよくゆであがったら水で洗う。

箸でかきまぜながらそうめんをゆで、ほどよくゆであがったら水で洗う

「ゆであがりは手でさわった感じでわかります。水で洗った後、氷水に入れれば冷製」。

器に入れて水を加える(写真は冷製)

「湯に入れると地獄炊きですね。地獄炊きの場合は、少しかための状態でゆであげるようにしています」。

冷製も地獄炊きも同じツユで食べる。カツオブシとイリコの出汁をベースに、薄口醤油、濃口醤油、ミリンを合わせた特製のツユがそうめんによくからむ。さっぱりはしているが、一般的なそうめんよりもしっかりした味わいだ。
「地元の方は『ド・ロさまそうめん』を家で食べられていると思います。私もよく食べていて、吸い物に入れたり、味噌汁の具にしても美味しいですよ。そうめんとともにド・ロ神父はパスタの作り方も伝え、外海はパスタ発祥の地とも言われています。今は『長崎スパゲッチー』という名前で広めていますが、すごく太くてもちもちしている麺なんですよ。いろいろ試してみたのですが、しっかりとソースをからめた、水イカのイカスミパスタが美味しいですね」。

林さんや他の飲食店の努力もあり、『ド・ロさまそうめん』は以前よりもよく知られるようになったそうだ。
「観光の方には、ちゃんぽん、海鮮丼、そしてそうめんが人気になりましたね。各家庭でも今のほうがド・ロさまのことを知っていたり、そうめんを食べたりしていると思います。小学校で麺工場の見学に行ったりもしますから、子どもたちもより知る機会が増えたと思いますね」。

最後に外海の好きなところについて教えていただいた。「和んだり、癒やされたりするところが外海のよさかな(笑)。いろんな海がありますが、外海の海も最高なんですよ。魚介は美味しいし、夕日はきれいだし…。お店を続けていく中で、たくさんの方に外海に来ていただきたいという想いがより強くなってきましたね(笑)」。

この料理人こだわりの「味のキーワード」

そうめん

乾麺の状態では、真っ白ではなくて少し黄みがかっている。材料は強力粉と塩と落花生油のみ

作り方

状態を見ながらほどよくゆでる。ゆであがったら水で洗う。地獄炊きの場合は少しかためにゆであげる

味わい

冷製も地獄炊きも同じツユで食べる。カツオブシとイリコの出汁をベースに、薄口醤油、濃口醤油、ミリンを合わせた特製のツユだ

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波矢司 30年以上地元で愛される食事処

1982年の創業以来、地元産の新鮮な野菜や魚介を使った和食、ちゃんぽんと皿うどんが愛され続けている割烹。『ド・ロさまそうめん』は、地獄炊き(そうめんと湯が入った鍋が火にかけた状態で提供される)か冷製かを選べ、カツオとイリコの出汁をベースにしたさっぱりした特製ツユで食べる。どちらもそうめんのコシの強さを感じられる。

『ド・ロさまそうめん刺身御膳』1,500円(税込)(写真は冷製そうめん。地獄炊きも選べる)。『ド・ロさまそうめん天ぷら御膳』1,500円(税込)もある。そうめん単品は500円(税込)
外海産のうにがのった『うにチャンポン』1,000円。(税込)『外海ちゃんぽん』650円(税込)、『外海皿うどん』650円(税込)も人気の品
旬の魚介がたっぷり盛りつけられた『波矢司の海鮮丼』1,500円(税込)
座敷、テーブル席、カウンター席がある1階。2階は大広間
お店の前にとまっている赤いミニクーパーは林さんの愛車だ

波矢司(はやし)

住所 長崎県長崎市下黒崎町1165
電話 0959-25-0036
営業 11:00〜14:00/17:00〜19:00
休み 火曜(祝日は営業)
85席
カード 不可
駐車場 あり
URL http://hayashi-sotome.com/
※記載した内容は2017年6月22日現在のものです。
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