エツそのものの味が一番わかるのは刺身。料理人がもっとも気を使う一品だ。通常、オリジナルのごま醤油が添えられる
塩焼き、南蛮、唐揚げなどをする下準備として、骨切りをする。細かな仕事は変わらないが、骨切りの角度など料理人によって異なる
オーソドックスな料理の他、エツの旨さを引き出そうと、料理人は、自慢のエツ料理に工夫を凝らしている
昭和元年の創業以来、有明海の新鮮な魚介を使った料理を提供している。5月10日から7月中旬までメニューに載るエツ料理は、津田屋を代表する料理の一つだ。
料理長・藤田健一郎さんにエツのこと、エツ料理のことについてうかがった。
「うちの前を流れる川でエツ漁が始まると、夏の訪れを感じますね。エツは傷みが早いので、扱いにくい魚の一つです。鮮度のいいエツはさわってもわかりますし、包丁が気持ちよくすっと入ります。どんな料理にしても美味しいですが、刺身、焼物、天婦羅あたりがメインになるのではないでしょうか」。
エツの風味がダイレクトに伝わる刺身は、包丁さばきが繊細な一品。
「身は小骨も一緒に薄く切っています。小骨の小さな存在感はあるけど、のどにはひっかからずになめらかという感覚を持っていただくのが理想です。添えるのはゴマと醤油を合わせ2週間ほどねかせたもの。エツの刺身だけに使いますし、私たちの間では『エツ醤油』と呼んでいますね。
「葦の葉が落ちて『エツ』に変わったという伝説もありますからね(エツの概要説明ページ参照)。川沿いに生えている葦は、エツのシーズンになると緑色がより輝いてきます。これにも夏の始まりを感じますね(笑)」。
刺身に加え、骨切りをして南蛮漬けにする『エツの南蛮漬け』も刺身と並ぶ王道的な一品。
「通常の骨切りは魚に対して斜めに骨切りします。まっすぐのほうが仕事は早いですが、斜めに包丁を入れたほうがより小骨を切ることができます。通常の骨切りは、表裏で合計1匹280回でした。数えてみたことがあるんです(笑)。南蛮漬けにする場合は、通常の骨切りがされている包丁の跡と直角になるようにさらに骨切りします。表面には格子状の模様がつきますが、こうすると箸で食べた時に身離れがいいんですよ」。
エツの南蛮漬けは、エツを素揚げした後、南蛮酢に1カ月くらいつけておきます。骨もやわらかくなりますし、かぶりつく感じで食べられますよ」。
塩焼きも基本的な料理の一つだが、こちらでは一工夫。
「塩焼きにする時、塩をふり黒ゴマをふって焼いています。利休焼きですね。白い身のエツに黒ゴマが映えて彩りもよくなりますし、香ばしくもなります。焼きが強いと固くなってしまいますし、逆に弱いと生臭さが残ってしまいます。そのあたりの塩梅がむずかしいところですね。そう言えば、ヒレは焦げないように化粧塩をしますが、なぜかヒゲだけは焦げないんですよ(笑)」。
基本的な料理法に加え、こちらならではのエツ料理も用意されている。
「エツのハラガワ(お腹の部分)をすり身にして『さつま揚げ』をつくっていますが、これはもちもちした食感もあって美味しいですよ。骨に味つけをして揚げる『えつ煎餅』も肴にはもってこいですね。他にもエツを使った新しいメニューを考案中です。どんな料理法でも美味しく食べられるエツは、本当に奥の深い魚だと思います」。
エツのコース料理をいただくと、エツの味と各料理法のマッチングの強さに驚き、確かにエツの奥深さを感じずにはいられない。次はエツを使ったどんな新しいメニューが生まれるのだろうか?
小骨の小さな存在感はありつつなめらかという感覚が理想とのこと。ゴマと醤油を合わせ2週間ほどねかせた『エツ醤油』を添える
魚に対して斜めに骨切りする。南蛮漬けにする場合などは、格子状の模様がつくようにさらに骨切りを加える
エツのハラガワ(お腹の部分)をすり身にして揚げるさつま揚げは、もちもちした食感を持つ。骨を揚げた『えつ煎餅』も美味
筑後川にかかる昇開橋のすぐ近くにあり、眺めも抜群の老舗割烹。1年を通して有明海の旬の魚介を楽しめるが、5月10日から7月中旬まではエツのシーズン。店の目の前を流れる筑後川で獲れたエツを、エツのコース料理(要予約3150円〜5250円)でいただくことができる。『お昼の会席(エツコースは除く)』は1500円〜。
住所 | 佐賀市諸富町諸富津223-1 |
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電話 | 0952-47-2046 |
営業 | 11:00〜OS20:00 |
休み | 不定 |
席 | 90席 |
カード | 不可 |
駐車場 | あり |
URL | http://www.tsudaya.jp/ |